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青春に必要な物 1

「青春に必要な物。それはなんだ! クロード!」


 怒濤の一日が過ぎ去った次の日の放課後。ホームルームが終わって帰ろうと席を立ったとき、竹中がいきなりそんなことを言ってきた。


「なんだいきなり」

「いいから答えなよ」


 うーん、青春に大切な物ねえ。 


「金か?」

「違うよ! もっとあるでしょ! なんか!」

「お前にとっては違うかもしれないけど、少なくとも俺は金が大事だと思うぞ。まず、金がないと生活できないからな」

「身も蓋もないこというなあ。そうじゃなくて、ほらあるでしょ、学校関係で」

「寝てもバレない席とか?」

「青春に必要な物ショボッ! それも違うよ!」

「じゃあ、何なんだよ」

「部活動だよ。ほら、漫画やアニメやラノベの主人公とか大抵何かの部活に入って、そこから変な事に巻き込まれたりとか、女の子とかと楽しく部活したりとかしてるだろ? あれこそが青春に必要な物だとは思わないかい?」

「まあ、確かに必要な物だと言えなくもないな」

「だろう?」

「でも、部活入ったら金がいるよな」

「そりゃあ、部費って形でお金は取られるけどそんなに高い物でもないよ」

「いや、でもなあ……」

「まあまあ、そんなこと言わずに。ちょっとのお金で青春に大切な物が手に入るんだからその辺は気にしなくていいじゃないか」


 俺はなるべく青春に金はかけたくないな。サブカルチャー全般なら別だけど。


「何の話?」


 いきなり後ろからクロノスが声をかけてきた。さっきまで教室の後ろのほうで女子と話してたと思ったんだが、どうやら話は終わったらしい。


「別に部活の話だ」

「へー、部活動ねえ。そういえばこの前プレゼンテーションでやってたよね」


 そういや、この前の新入生を対象にそんなもん見せられたな。もっとも寝てて全然見てなかったけど。


「色々な部活あったよね、黒乃さん」

「そうそう、クロードは寝てて知らなかったかもしれないけど色々な部活があったんだから」


 こいつ寝てたの知ってたのかよ。まあ、こいつのすぐ後ろの並びだったから知っててもおかしくはないか。


「じゃ、話がまとまってるみたないだから早く行こっか」


 クロノスが自分の机から荷物を手に取って言う。


「どこに?」

「部活動見学」

「まとまってねえよ! ていうかいつからそんな話になった!」

「ちょうど良かった。僕もそれ言おうと思ってたんだ」

「だから青春に部活動が必要だとか言ってきたのか」

「うん、まあね。ていうか昨日クロード、部活見学行こうとか言っててどっか行っちゃっただろ。だから今日行こうよ」

「えー、今日は早く帰ってゆっくりしたいんだけど」


 正直ここのところ忙しくて、少し、いや、とても疲れた。せっかく授業が終わったんだからわざわざ放課後まで学校に残りたくはない。家で録画したアニメでも見てゆっくりしよう。


「そんなつれないこと言わないの」

「言っとくけど全部お前が原因だからな」

「え、何かしたっけ?」

「お前、よくそんなこと言えるな」


 相変わらず白々しく(とぼ)けるやつだ。


「とにかくだ。俺は帰るからな。部活動見学はまた今度だ。どうせ来週いっぱいまで見学できるんだから来週でいいだろ」

「ええー。どうせ放課後暇なんだから行こうよ。それにクロード昨日まで結構乗り気だったじゃないか」

「そうそう行こうよ。こういうのはなるべく早いほうがいいって」

「早く行ってたほうがいいって……競争じゃねえんだから。てか、お前、男子の俺たちと行かなくても他の女子誘って行ったほうがいいんじゃないか? 女子とかのほうが話合うだろうし」

「別にクラスの子と行ってもいいけど、まあ、クロードの面倒見なきゃいけないからね」

「どっちかっていうと俺の方が面倒見ているような気がするんだけど」

「まあ、そのへんはどうでもいいでしょ。さ、早く行こっ」


 はあ、まったく色々とうるさいな。

 本当は家でゆっくりしたいんだが、仕方ない。行ってやるか。面倒臭いが竹中との友達付き合いもちゃんとしなくちゃならんからな。

片手で頭をかきながら竹中の方を向き、


「わかった。行ってやるよ」

「そう言うと思ってたよ、クロード」


 それから妙にテンションの高いクロノスと少し笑みを浮かべた竹中が教室を出るのに続き、俺も仕方なく教室を出たのだった。

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