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自動販売機で出会った災厄2

 春休みというのはホントにいいものだ。

 こうやって昼間にも関わらず寝ていられるのだからとても幸せだ。

 今、俺は春休みの真っ最中である。

 俺達、今年度の卒業生にとっては高校への準備期間ていうことになる。って少し前に中学の時の担任が言っていたが、そんなもん知ったこっちゃねえ。

 入試という過酷な試験を乗りに乗り超え、戦い抜き、高校に受かった俺ら元受験生にとってはただの保養期間ってとこだ。

友達とこの休みを利用して遊んだり、違う高校へ行くヤツらとお別れ会をしたりとみんな騒いだりしている。

でも、友達の少ないヤツにとってはかなり暇なわけで、俺は今かなり暇だ。

 そんな感じでやることのない俺は今家でゴロゴロしてる最中ってわけだ。


『電話なんじゃね~の! 電話なんじゃね~の!』

 

 いきなりベットの橋の方に置いていた最近買ってもらったばかりの携帯がいきなり鳴り出した。

 手に取ってみると俺の唯一の親友であるともいえなくもない竹中からだった。


「あ~、もしもし」

『やあ、クロード。相変わらず辛気臭い声しているね』

 

 今日も朝から……いや、もう十一時だから朝じゃないな。……まあとにかく余計な事を言うヤツだ。


「茶化しの電話ならいらないぞ。切るぞ」

「あ、ちょっと待って、うそうそ。用があって電話したんだよ!」

「ったく。俺だって忙しいんだぞ」

「って言ってもどうせ家でゴロゴロしてるだけでしょ」

「ち、違う。今、高校へ入学した時に向けて勉強してる最中だ」

「図星だね」

「うっ」

 

 何で分かったんだ? こいつエスパーか。


「とにかく暇ならいつものファミレスに来てくれる?」

「仕方ないな。分かった。すぐ行く」

「じゃ、よろしく」

 

 俺はすぐに服を着替えをし、机の上に置いてあったバックを持って家を出た。

 家から出て家の前の坂を脱兎の如く下り、それから少し歩くとファミレスが見えてきた。

中学の時、竹中とよく行ったファミレスだ。

 相変わらずガラガラの店内に入ると一番奥の席に爽やかイケメン風の男、竹中康人が足を組み、本を読んでいた。

 なんとも本を読んでいるのが様になるヤツだ。だが――――


「読んでいるのがラノベだと様にならないな」

 

 しかもブックカバーしてないおかげでかわいいイラストが丸見えだ。


「何が?」

 

 竹中はまったく気にした様子もなく俺を見る。


「あ、いや、なんでもない」

「それにしても久しぶりクロード。卒業してから何年ぶりだっけ?」

「久しぶりじゃねーよ。二日前にここで会ったばかりだろ」

「あはは、冗談だよ冗談」

 

 俺はこの春休みが始まって以来、ここで二日に一回程度の割合で竹中と会っている。

 主にやることは決まって雑談やらゲームとかだ。

 注文を取りにきたウェイターに一通り注文した後、俺もバックからラノベを取り出し、読み始める。

 ラノベを読み始めて少し経った時、


「クロードは姉と妹どっちがいい?」

 

 目の前に腰掛けた竹中がそんなことを言ってきた。

 その手にはラノベではなくいつの間にか携帯ゲーム機が握られている。


「ん? なんだいきなり」

「いや、今攻略中のとある人がいてね。その過程でパターンが二つに分岐したんだ。で、どちらにしようか迷っててね。クロードの意見を参考にしたいと思って」

「攻略ねえ」

「えっと、パターンっていうのは姉か、妹の二択だから」

「そうだなあ。俺はどっちかっていうと姉だな。俺はロリコンじゃないからな」

「へえ、クロードって姉萌えなんだ。あと、ついでに言っておくと妹属性=ロリコンとは限らないからね」

「……」

「まあいいや参考にさせてもらうよ」

 

 顔だけは男の俺が見てもイケメンと思うぐらい整ってるのだから彼女でも作ればいいのに。なんとも残念なヤツだ。

「まあ、僕としては姉とか妹とかより猫耳っ子とか魔法少女の方がいいんだけどね。はぁ、僕の身の回りにそんな子こないかなあ」


 と竹中が肩をすくめながらため息をつく。

 アホ言ってるように聞こえるが実際にいるんだよな、そんなファンタジーの産物が。


「そんなこと言わずとも普通にいるだろ異世界人」

「でもそれってアメリカとかヨーロッパの話でしょ。外国では魔法少女とかが次々訪れてるっていうのに不公平だよ」

「仕方ないだろ。来日する異世界人少ないんだから。あと、魔法使い(ウィザード)が全部少女とは限らないからな。おっさんとかいるからな」

「ちょっと夢が崩れるからやめてよ」

 

 竹中の表情がみるみる険しくなってきた。気持ち悪いことでも想像したのだろうか。 


「それにしてもさクロード――――」

 

 と竹中が話し変えてきた。


「クロードって結構暇だよね。いつも電話したら寝てるか、ゲームしてるかのどっちかだし。それに誘ったらすぐ来るし」

「う、うっさい。春休みは暇な方がいいんだよ!」

「いや、春休みに限らずそうじゃん」

「……」

「仕方ないだろ。俺は友達少ないから年中暇なんだ!」とは言えず、言い訳を考えていると、

「そういえばクロードって学校どこ行くんだっけ?」

「ん? 俺か。俺は家からチャリで二十分くらいの字源高校だ」

「そういえば字源高校だったね?」

「ああ」

 

 字源高校はこの字源市にある公立高校で学費が割と安い。チャリで二十分というのはちょっと遠いような気がするが、毎日の電車代やバス代を考えると結構マシな方だろう。それに学力レベルも中の下程度だから多分俺でもついていける。ま、無難な選択ってところだ。


「竹中はどこだっけ? 確か私立の……」

「志水学園だよ」

「ああ、そうだったな」

「あそこって僕の家からも歩いて十分ちょいだし、学力レベルもそんなに高くないから好都合なんだよね」

「近くだといいよなあ」

「クロードも志水学園受ければ良かったのに。多分、クロードなら受かってたよ」

「いや、学費がな」

 

 俺も一度は志水学園を受けるか考えたが学費が高くて受けるのやめたんだよな。家から近いのに学費が高い。う~ん、なんとも惜しい。

 それから竹中と他愛も無い話したり、一緒に携帯ゲーム機で協力プレイをしたりしている内に時間はあっという間に流れ、『例の時間』がやってきた。


「竹中、俺はそろそろ……」

「あ、もう帰る? なら僕も帰ろうかな」

 

 二人で会計を済ませファミレスを出る。


「また今度な」 

「うん、じゃあねクロード。通り魔とかに気を付けてね」

「あ、ああ」

 

 そして竹中は笑いながら手を振り、「美少女でも落ちてこないかなあ」などと言って歩いて行った。

 あいつ別れ際になんてことを言っていきやがる。タチが悪い。

 さてと俺も急ぐか。『例の時間』が始まっちまう。



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