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危ない二人と災厄と3

 筋肉痛でややダルい体を動かして駅に着くとすでに竹中が近くのベンチに座ってスマートフォンを弄りながら待っていた。いいなあスマートフォン。


「あ、やっと来たね。待ちわびたよ」

「やっとってまだ待ち合わせの十分前だろ」

 

 こいつ相変わらずニコニコ顔だな。一体何が楽しいのやら。

 こっちはこの数日変なこと………いや、大いに変なことに巻き込まれてあげく怪物女を泊めることになったり、変な腕輪はめられて怪物狩りしたりやらで楽しさの欠片も無いっていうの。

 はあとため息を吐く。


「どうしたのクロード、なんか元気がないような気がするけど………」

「ちょっと非現実に付き合っていたら疲れた」

「? よくわからないけど移動しようか。ここで立ち話も何だし」

「そうだな」

 

 それからホームに移動し、電車が来るまで竹中と今期のアニメの今後の展開などについて話していたら電車が来たのでそのまま乗り込んだ。

 俺たち学生には春休みでも平日に変わりないないので電車の中は思ったより混んではいなかった。


「なあ竹中。今俺の家に異世界人がいるって言ったら信じるか?」

 

 我ながら脈絡はないとは思いつつ、竹中になんとなくそんなことを言ってみた。というか愚痴を言ってストレスを発散したかった。


「え、いきなり何」

「いや、なんかこの前お前とファミレス行った後、スーパー寄って、家に帰ってたら化け物に襲われたんだよ。で、なんか変な腕輪はめられて化け物狩りを手伝うことになったて今異世界人が家に泊まってます」

「いきなりそんなこと言われても………」

「あ、証拠ならあるぞ。ほれっ」

 

 右手にはめてある腕輪を見せる。

「何これ?」

「さっき言った腕輪。なんでも魔法具らしいぞ」

 

 そこで竹中が電車内にある掲示板を見た。

「……クロードあんまり言いたくないけどもうエイプリルフールもう過ぎたよ」

「いやいやこれマジだから! 本当だから!」

「それに字源市にあるゲート今調整中だし、海外から異世界人がわざわざゲート故障中の街に来るなんてこともそうそうあることじゃないと思うし………ありえないよ」

「それがありえたんだよ。しかもその異世界人、何もない所から大剣出せるんだぞ。すごくないか」

「何、魔法使い《ウィザード》?」

「いや、違うらしいけど、とにかくそいつめちゃ強いんだよ。女のくせに」

「はいはい。少し盛りすぎたね。アドバイスとしてはあまり盛らない方がいいかなってとこが妥当かな」

 

 駄目だ。全然相手にされない。

 何年か前なら嘘と思われたかもしれないけど異世界人の存在が知られた今ではそんなに信じられない話じゃないと思うんだけどな………

 それから十分ぐらいして電車は目的地の駅に着き、俺達は電車を降りた。




 

 電車で字源市中心部に移動して電車を降りた俺たちは今一つのビルの前にいる。正確に言うとそのビルの一角、ゲームやアニメグッズを専門に売っている店の前だ。

 なんか久しぶりに見ると懐かしいな。

 たしか最近行ったのは中三の一月頃だったか。受験勉強とかでこの頃行けなかったんだよな。


「どうしたの?」

「いや、久々に来たなと思ってな」

「近頃忙しかったからね」

「確かにな。で、今日は何買いに行くんだ?」

 

 ま、どうせギャルゲーとかの予約特典目当てだろうけど。

「それは『萌えろ鉄拳』だよ」

「え、何それ格ゲー?」

 

 まさか竹中が格ゲーを買うとは。


「違うよ。今日発売の恋愛シミュレーションゲームだよ」

「あ、そうですか……」

 

 どうやら俺の見立て通りギャルゲーだったようだ。

 なんて紛らわしい名前だ。もうちょっといいネーミングセンス考えろよゲームメーカー。


「で、クロードは何買うの? もしかしてエロゲー?」

「違うわ! 誰がんなもん買うか。俺はなんとなく来ただけだ」

 

 つーかエロゲーなんて普通の店で未成年の俺が買えるわけないだろ。

 嘆息しつつ店内に入ると、まず一階には漫画雑誌などが置いてあり、二階には同人誌や単行本、目的のゲームを買うために三階に行くとギャルゲーのヒロインだろうか、水着姿の女の子の等身大パネルがお出迎えしてくれた。奥の方を見ると棚にゲーム各種がそれぞれジャンル分けして所狭しと並べられている。ついでに四階にエロゲー、五階にはフィギュアなどが置いてある。

 ちょっと前に来た時とちょっと配列が変わってはいるが基本的にあまり変化はないな。客も平日ということもあり、俺達と同じぐらいの年の客しかいない。主に男の。


「こ、これは!」

 

 竹中がいきなり声を上げる。


「どうした?」

「よかった~。まだ限定版あったよ。予約するの忘れてたら特典だけでいいやって思ってたけど……やったついてるよ、僕」

 

 何がそんなに嬉しいんだか。俺はギャルゲーはあまりやらないから重要さがいまいち分からん。

 竹中は精算を済ませた後、まだ見るからといってゲームコーナーに残ってしまったので特に買いたいゲームのない俺は適当に単行本のコーナーへ移動する。


「これは!」

 

 本のコーナーを適当に見て回っていると俺の集めている単行本の最新刊があった。しかも限定版で。ついでに言うと特典付きで。

 何でだろうね。こう、限定版って書いてあると買いたくなっちゃうのは。通常版の方が内容も一緒で安く買えて財布に優しいのに。俺は手に取って数十秒考えたあげく買うことにした。そしてそのままレジへ。

 まあ、あれだ。限定されるてる分希少価値が高い。だから買う、みたいな。

 レジで精算を済ませて店内を再びウロウロしていると片手にレジ袋を下げた竹中がいた


「用は済んだか?」

「ああ、うん。終わったよ」

「じゃ、出るか」

 

 店を出て携帯を見ると時刻は十一時五十八分。どこかで何か食うか。

「竹中、何か食べないか。もう十二時だし」

「そうだね。何か食べようか」

 

 さて、ここから辺に何か食べるとこあったけな………

 歩きながら辺り見回していると竹中の持っているレジ袋が目に入った。


「なんだそれ?」

 

 竹中が下げているレジ袋を指差す。今気づいたが何やらポスターのような物が出ている。

「ああ、これは予約特典だよ。」

「ほら」と俺にポスターを俺に見せてくる。そこにはイケメンスマイルとは相容れないであろう水着姿の女の子達の絵が描いてあった。

「……ああ、これはすごいな」

 

 俺は反応に困った。なんせ人がわんさか歩いている大通りでバッと開いて見せてくるから一緒にいるこっちとしても恥ずかしい。一体どこにそんな根性があるんだろうか。俺にもその一端でもいいからわけてほしい。

 竹中がポスターを広げ、それに俺がジト目を向けているとそこに同い年くらいのケバい女子に不快そうな目で見ていった。なぜか俺だけ。

 ちょ、なんで俺だけそんな嫌悪する目で見るの。買ったのは竹中なのに。


「……竹中。それ早くしまえ」

「え、うん」

 

 竹中は慎重そうにポスターを丸め紙袋にしまった。

 さて、帰ったら今日は何作るか。一人の時は簡単なもので済ませられるが二人となれば話は別だ。昼はインスタントを食べてもらってはいるが朝と夜ぐらいはちゃんとしたものぐらい食べたいだろうしな。それに今日であいつともともお別れだしな。よし、今日は奮発していいモンでも食わせてやるか。っていうかあいつ晩飯までいるよな。

 そんなことを考えながら竹中と昼食を食べる店を探しているとちょうどファミレスが目に入った。

 ちょうどいい。あそこで食べるか。


「あそこのファミレスで食べないか?」

「そうだね。そうしようか」

 

 ファミレスに入り、それぞれ注文した品を食べているとふと、竹中がこんなことを言ってきた。


「クロード、何かいいことあった?」

「ん、いきなりなんだ」

「いや、なんかこの前あった時よりなんか楽しそうっていうか、明るくなったっていうか……」

「いいことなんか別にねえよ」

 

 むしろ悪いことだらけだよこっちは。


「なんだ僕の勘違いか」

「ああ、勘違いだ」

 

 クロノスが来て変なことに巻き込まれてこっちは迷惑してるんだ。気分が沈むことがあっても明るくなるなんてことは絶対ない。

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