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危ない二人と災厄と2

「う、う~ん」

 

 やけにベッドが冷たく硬い。

 見るとそこはリビングの床だった。

 そうか昨日は帰ってきて玄関で倒れてそのまま寝てしまったんだっけ。

 あれ? でもここはリビングだよな。なんでだ?

 俺がそんな疑問に胸を悩ませているとリビングのドアが開いた。

 視線を向けるとクロノスがいた。


「どお? よく眠れた?」

 

 そうかクロノスが移動させたのか。どうせなら部屋まで連れて行ってくれれば良かったのに。

 俺はまだ少し痛む体を起こしつつ、


「ああ、おかげさまでよく眠れたよ。だけどもうちょっと寝かせる場所考えた方が良いんじゃないか」

「別に寝られればでしょ」

「よくねえよ」

 

 このアホ女め。

 時計を見ると朝の七時だった。

俺は朝食作るために台所に向かった。

 そして今二人で朝食を食っている。


「ていうかどうしたの? そのコート。なんかボロボロなんだけど」

 

 クロノスが突然そんなことを言ってきた。

 ……そうだった! 昨日俺の着ていたコートは燃えて酷い有様になったんだった。

 そういえば昨日襲われんだった。


「そのコートまあまあ値が張るんだよ。どうしてくれんの」

「お前人の家に泊まってるくせに態度でかいな。あとこうなったのは俺のせいじゃない」

「えっ」

「なんか昨日火の玉やら銃弾がいきなり襲ってきたんだよ」

「火の玉や銃弾………もしかして…………」

 

 クロノスは黙って立ち上がりリビングの隅に置いてあるトランクから何やらあさり始めた。

 程なくして戻ってきたクロノスの手には何かが握られていた。


「はいこれ」

 

 クロノスが手を差し出してくる。何か握っているようだ。

「?」

 

 開かれた手には黒いぼろ布があった。

 これで何をしろと?


「これ貸してあげるから一応持ってて」

「一応って……てか何これ? この前もらったコートの方が全然綺麗で良かったんだけど」

「いいから、いいから『顕現せよ』って言ってみて」

 

 そう言われたので「顕現せよ」と言ったらぼろ布が驚くことに黒のコートになった。

 当初の俺なら驚いているだろうが驚くことが多すぎてもう慣れた。


「で、これをどうしろって」

「このコートは普通のコートじゃなくて防御力を向上させる効果があるの。これを羽織れば少しの攻撃なら緩和できるから使って」

「いきなりなんだ」

「世の中にはもしものことがあるからね。あと、もうグール狩りしなくていいよ。で、私が空間作ったらその場でじっとしてること。分かった?」

「あ、ああ」

 

 どうしたんだ。いきなり。

 ……ていうか今、とっても嬉しいこと聞いたような。


「――ってマジか! マジでグール狩り手伝わなくていいのか!」

「さっきも言ったでしょ。手伝わなくていいって」

「ひゃっほー! ならこれ返す」

 

 俺はポケットに入っていたグール探知機と日本刀のキーホルダーを差し出した。


「それも一応持ってて。もしもの時のために」

「もしもってなんだよ」

「確証がないからもしもって言うんだよ。ま、クロードは知らなくていいことだから」

「………」

 

 別に知らなくてもいいことらしいので特に言及もせず、俺食べる作業に戻った。

 でも、知らなくていいと言われても昨日のは 少し、いやかなり気になる。

 いや、どうでもいいか。どうせ俺がどんなに考えても無駄なんだから。それにもしもの時はクロノスがどうにかしてくれるだろう…………と思う。

 俺は残りのお茶を飲み干して台所で食器の片付け、洗濯物干しや風呂掃除など家事全般を時間までこなし、家を出るため玄関に向かった。


「あれ、クロードどっか行くの?」

「ああ、ちょっと友達とな」

「へー、友達いたんだー」

「おい、ちょっとまて。『いたんだって』ってなんだ」

「だってクロード根暗だし、友達いないのかと思ってたから」

「失礼なこと言うな!」

 

 と家を出る前にそこでクロノスに言っておかなくてはいけないことを思い出した。


「お前、絶対に家の物壊したり食ったりするなよ。あと、家出るときはちゃんと鍵締めろよ」

「私はガキかぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 後ろで叫ぶクロノスを無視して俺は駅へ向かった。

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