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住み着いた災厄6

「はあ~」

 

 風呂から上がった俺は自分の部屋で深くため息をついた。

 今日はロクなことがなかった。いきなり変な空間に入れられて化け物と戦ったり、化け物並みに強い美少女と暮らすとになったり(期間限定)、蹴られたりで散々だ。

 俺はごく普通のどこにでもいそうな学生でいいわけで化け物と戦うなんて望んですらいない。怪我でもしたらどうなるんだよ。俺ん家だってあんまり余裕ないんだぞ。

 それに加えてなんだあの化け物女は。ただの美少女ならまだしも『見た目は美少女、中

身は怪物』みたいな謳い文句が似合いそうな美少女はお断りだ。それよりどこかの少年探偵の方がかなりマシってもんだ。

今俺に出来ることはクロノスがいる間、家が壊されませんようにと願うだけだ。

 ……クロノスまだ怒ってかな。

 ふと、そんなことが頭を過ぎった。

 さっき悪気はなかったとはいえ、裸を見てしまったからなあ。きっとまだ怒っているだろう。逆上されて家でも壊されたらシャレにならん。それにあいつも性別的には女に違いないからきっと男の俺に見られてかなり恥ずかしかったはずだ。

 やっぱりちゃんと詫び入れといたほうがいいよな。

 多分、クロノスはまだリビングで漫画読んでいるだろうから寝ていないはずだ。 

 俺はすっかり痛みの引いた体をベッドから起こし、リビングに向かう。 

 リビングに入ると俺の予想どおりやっぱりまだ漫画読んでいた。よく飽きないなこいつ。


「まだ読んでんのかよ」

「……なんか続きが気になってね」

 

 少しだけいつものクロノスより声のトーンが低いような気がする。やっぱりまだ怒っているようだ。


「あ、あのなさっきは悪かった。なんども言うがあれはわざとじゃないんだ。そこだけは信じてくれ」

 

 俺は深々と頭を下げた。


「別にもういいよ。気にしてないし。それに裸見られて恥ずかしがってちゃこの世界生きていけないからね」

 

 どうやら許してくれたようだ。声のトーンもいつも通りに戻ったしこれで一安心。


「じゃあ、あんま夜更かしすんな。あと、寝るときはちゃんと電気消せよ」 

 

 そう言い残して自分の部屋に戻ろうとしたら、


「ねえ、クロード」

 

 ふと、クロノスが声を掛けてきた。


「ん、何だ?」

「クロードの親ってまだ帰ってこないの? 一応泊めてもらっているからなんか理由考えようと思ってるんだけどどんな理由がいい?」

「その必要はない」

「えっ?」

「俺の親はもういないから」

 

 そう、二年前からいないんだ。


「な、なんかごめん………」

 

 クロノスと出会って二日。その二日間の間に色々迷惑を掛けられ、その度にクロノスは「ごめんごめん」と謝っていたが、クロノスの今の表情は今までのヘラヘラしたものとは違い、心底謝っているような表情だった。見ているとこちらも困るような顔だ。


「別にいいって、もう二年も前のことだ。気にするな」

「……でも」

「それに親はいないけど兄さんがいるしな」

「……へぇ。じゃあ、お兄さんが帰って来た時のために言い訳考えないと」

「心配すんな。兄さんいるって言っても兄さんは仕事が忙しくてあんまり帰ってこないから実質俺は一人暮らしだ。だから別に言い訳なんて考えなくていい」

「あ、うん……」

「じゃあ、なるべく早く寝ろよ」

 

 と言って自分の部屋に戻った。

 戻った後、電気を消し、ベットに横になった。

 ったく、クロノスやつ余計なこと聞いて来やがって。余計で思い出しちまったじゃねえか。

 父さんと母さんかあ。

 ………もうもういないんだよな。

 あの二人は。




「起きてクロード」

 

 なんか誰か呼んでいるような気がする。

 ふと目を開けるとクロノスがいた。


「……なんでいんの?」

「お仕事だよ。クロード」

「はあ? なんだよ仕事って」

「グールが出た」

「またかよ!」

 

 時計を見ると午前一時。

 もういい加減にしてほしい。グールというのは時間も選んでくれないのか。

 でもクロノスが特殊な空間を作ってくれれば時間は止まるとのことだし俺の睡眠時間にはなんら影響はないはずだ。

 筋肉痛も完全に治ったしようだし問題ない。


「はいはい。分かりましたよーっと」

 

 俺は電気を点けて着替えに取り掛かる。


「あ、着替えるならなるべく黒い服がいいよ」

 

 部屋から出がけにクロノスがそんなことを言った。

 黒い服? 

 別に誰もいない空間で戦うんだし別に服の色なんて関係ないだろに。

 寝巻きからなるべく黒を貴重とした服装に着替えた俺は部屋の外にいるクロノスを呼んだ。


「もういいぞ」

「あ、そう?」

 

 ガチャリと部屋のドアを開けてクロノスが入ってくる。


「じゃ、行くか」

「ちょっと待った」

「何だ?」

「これ」

 

 クロノスが差し出したのは今日(いや、日付変わったから昨日か)使って筋肉痛になった日本刀のキーホルダーと不気味な仮面のキーホルダー、そして小さな黒い布だった。

 日本刀のキーホルダーは使ったから知ってるけど、仮面のキーホルダーと小さな布は始めて見る。


「……こ、これは。もしかして……」

 

 多分俺の予想が当たっているとすれば、


「顕現せよ」と隣から呟く声が聞こえる。

 

 目の前に黒いコートと黒を基調とした目の大きさが左右異なる不気味な仮面が現れる。 どうやら魔法具とやらのようだ。


「で、何だ。これ?」

「コートと仮面」

「そういうんじゃなくてこの仮面とコートは何だ」

「認識を阻害する効果を持った仮面とコートだよ」

「なんで認識を阻害するんだ? クロノスが特殊な空間作るから問題ないだろ?」

「私、夜はあの空間を作らないんだよね~」

「はあ、なんで?」

「あれ結構エナジー使うんだよね。だからあんまり日に何度も使えないんだよ。だから人通りの少ない夜はあえて使わないようにしてるの」

「そうなのか。でも人に見られないんだろな?」

「そのためのコートと仮面だよ」

「なら安心だな」

 

 人に見られなきゃ特に問題はない。こんなもん持って徘徊したら銃刀法違反で捕まるかな。

でも、とクロノスが続ける。


「でも、昼間と違って空間を作ってないからグールが人に接触する可能性が高くなるの。だから探知機が反応したらすぐに向かってね」

 

 急いで狩れってか……何とも面倒なっこた。


「分かった。急いで向か―――じゃなくて俺の睡眠時間はどうなるんだよ!」

 

 俺だって生物だ。睡眠を取らなくては生きてはいけない。


「そんなの知らないよ」

 

 と軽くあしらわれた。何かイラっとくるね。うん。ほんとに。


「ああ、もういいや。行けばいいんだろ。行けば!」

「素直でよろしい」

 

 クロノスは俺に笑顔を向けて俺の部屋から出ていった。

 ……なんと理不尽な人でしょうね。

 俺は何時頃家に帰ってこれるか考えながら玄関に向かった。


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