狂会懺悔室
少々ぬるいとは思いますが、犯罪行為および性行為を匂わせる描写が含まれますのでR15とさせていただきました。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
「歌、歌おうか。」
莉音がそう言ったのは多分、今日がクリスマスという記念日だからか。
莉音はカトリックの家に生まれながら色々教えに背いている。
具体的には俺と付き合ってる事とか…これは常識的に禁忌か。言ってしまえば礼拝もなにもへったくれもない様な奴で、聖書なんて読んだこともないと言う。(それ以外の本ならよく読む。選り好みする活字中毒者ってなんだよ。)現に今も聖母マリア像の頭を掴んで持っている。そんな奴。
そんなやつが、賛美歌なんかどう?なんて訊ねてくるもんだからツッコミを入れてしまった。
「…聖歌なんて歌えんのかよ。」
「僕んちカトリックなんだけど?」
「礼拝なんてしたことないんだろ?異教徒だから。」
「お誉めに預かり光栄です?」
くすくす笑う莉音は妖艶で、当分はこれがおかずになるかもしれない。
流石俺を惚れさせた男だけあって誰が見ても綺麗に見える。俺は面食いなのだ。
「紗薙。聴いててよ。僕の歌。」
「下手なら帰るからな。」
「ティッシュ用意しときなよ?」
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俺と莉音が出会ったのは学校。
俺は忘れ物を取りに教室に戻ってきていた。
で、その夜、8時13分13秒
教室に入ると、濡れ場に出くわした。
カップリング表記で言うと莉音×女
いや女の方はかなり吃驚してたな。うん。ラストスパートだったし。
女は逃げるように去って行ったけど、莉音は乱れた服を直しもせずに一息ついていた。
『…いいのか?』
『うん。だってあの子彼氏いるし?』
いやはやまさか学校の天使の江角莉音君がね、堂々の浮気発言ですよ奥さん。
『好きなのか?』
『まさか!ただのお遊びだよ。有野先輩。』
業とらしく先輩をつけてくる莉音。俺は留年しているから莉音より年上なのだ。しかも2年も。
『中身結構えげつないのなお前。』
『そう?別にいいじゃない。有野だってそんなに気にしてないんでしょ?』
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「ね、沙薙。」
「ん?」
「好き。」
莉音が、歌を謡い終わったのか、俺の目の前に居た。そして俺を抱きしめる。
俺は、改めて莉音の小ささを実感した。
「好きだよ大好き。僕、沙薙が好きだよ。沙薙の為なら死んでもいい。沙薙がいればなにもいらない。沙薙さえいればあとは皆消えればいい。沙薙に近づく女も男も全員死ねばいい。みぃんな、ね。」
それは、純粋な愛の告白。
今まで俺が聞いた中でも、特に純粋で、愛に溢れた言葉。
「だから、寝盗ったのか。」
莉音は、俺を愛しているから。
だから、俺の女を次々と寝盗っていった。
「そうだよ。沙薙ったら全然気がつかないんだもん。ううん。あんな子達、遊びだったんでしょ?」
「まぁ、本気ではなかったかな。」
そう。俺の本気なんて、一人だけ。
俺の目の前にいるイかれた男だけ。
生まれたときから、こいつだけ。
「そうだよね、そうじゃなきゃ父さん達を殺した説明がつかないもんね。」
莉音の肩越しにリビングを見る。
全身が拉げた人間だったものが三体ほど転がってた。
莉音は持っていたマリア像を捨てる。
ガシャン、簡素な音が響いて、マリア様は死んでしまった。
「ねぇ沙薙。これからどうする?」
「そうだな…。犯罪者はセオリー通り国外逃亡だろう?」
その前に、二人分の着替えが無いとな。
国外逃亡分の金なら今日引き出してきたし、今すぐにでも出来る。
「あぁこんな僕らに神のご加護があらんことを、アーメン!」
こんな懺悔を聞いて、神様が俺らを守ってくれるわけないと思うんだけども。
莉音は人生最初で最後の懺悔を終了させた。