イケメン耐性はついておりません
久しぶりの更新
ぎゃあ!と叫んだ私に目の前のかっこいい人は目をまん丸にした。予想していなかった反応だったのか目が零れんばかりに見開かれている。
でも私にはそんなことも考えられないほど余裕がなかった。
だって、生まれてから今まで異性にこれほどまで接近したことがない。しかも美形。てゆうか、王子様。
なんでこんなかっこいい人が私に膝枕をして、さらにおでこにちゅーをしたかまったく分からない。逆に私にそんなことをしてもなんのメリットもないはず、むしろデメリットしかないじゃん!
も、もしかして私が寝ぼけている間に無理やり要求したとか―――!?
あり得るかもしれない、昔から私の寝相と寝言は質が悪いと言われてきた。もしかしてこのかっこいい人に何か言ってしまった?
自分の体の中の熱が一気に冷めていくのが分かった。まるで瞬間冷凍。できればこのまま凍ってしまいたい。
もう嫌だ。美形怖い。王子様怖い。
とりあえずさっさと謝るんだ!
「ああああ、あのごめんなさいすみませんでした申し訳ありません許して下さい――!あの、私昔から寝言とか寝相とか最悪で、もしかしてあなたに膝枕せがんだとかそういうことですよね?!てゆーかそれしか心当たりが、
「ぶはっ」
台詞の途中で美形さんが吹き出した。
お腹を抱えながら悶え、もう大爆笑。
笑われているこちらは、だんだん顔が赤くなるっていくのが分かった。は、恥ずかしい。かっこいい人に笑われるなんて屈辱。早くここから逃げたい。
「ここ、あなたがいつも使っているんですよね?」
「なんでそう思うの?」
ごめんなさい、私いますぐ違うところにいきますから、という言葉は続かなかった。美形さんの質問に遮られたせいでもあり、一瞬緊張したような空気が走ったせいでもある。
まずいことでも言ったのだろうか。どきどきする胸を押さえながら、ベンチから美形さんと同じにおいがする、ということを告げる。
美形さんは瞬きを数回繰り返した後、笑いを耐えるように口を押さえた。小刻みに震えながら、おいで、と微笑まれる。
また、私笑われてる!羞恥心に後ずさろうとするが、美形さんに腕をつかまれ、隣に座らされた。意外と強引な人だ。
「名前、教えてくれる?」
「・・・芽依」
「芽依は何年生?一年生?」
「は、はい」
「俺のこと知ってる?」
「し、知りません」
口に出してから、しまったと思った。別に、いきなり呼び捨てかよ、もてる人は違うなー、とか考えてたから口からぽろっと出てしまった訳では・・・ない。
この人、有名人だったらどうしよう。知っていなきゃまずい人だったらどうしよう。気分を害したりしていたらどうしよう。美形さんの目を見ながら話なんてできるはずもなく、私の顔はうつむいたままだったので、表情は確認できない。どんな表情をしているんだろう。
怒っていることを予想して、おそるおそる顔をあげる。予想とは逆に、目の前にあった顔は喜びに満ちていた。な、なんでそんなに物欲しそうな目をしてるの。逆に戸惑う。私の戸惑う表情はすぐに見て取れるものだったのか、安心させるかのように空気が和らいだ。
ふと、優しく微笑まれる。
「潤っていうんだ」
その笑顔があまりにも甘ったるく、すさまじい色気でぞくりとした。やばい、腰抜かしたかもしれない。立てない。
「友達になってくれる?」
まるでずっと欲しくてたまらなかったものを手に入れたような、うっとりとした表情にどうしていいか分からなくなる。
「はい、」
この人から逃げられない。
そう思った。