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7.剣精という存在


俺の疑問を聞き終えた彼女は焦ることなく、

「当然の疑問ですね」

「ですが私は正真正銘、精霊ですよ」

と冷静に答えた。


「だけど……」

反論しかけた俺の口元に、彼女は指を添えて言葉を遮る。

「順に説明しましょうか」


拒まれたというより、

急ぐな、と諭されたような感覚だった。


「まず、アルの認識である“精霊とは魔力と意思の集合体”は正しいです」

「故に、精霊が自然に由来するものが多いのは当然と言えます」


俺の知識を否定されなかったことに、わずかに肩の力が抜ける。

だが同時に、これから“ズレ”を示される予感もあった。


「そして私は、“魔物と戦う人間の意思”によって生まれた精霊です」

「生まれは他の精霊と同じですが、根幹にある“意思”が違うのです」


―――なるほど。

理屈としては、理解できる。


だが胸の奥に残った違和感は、まだ消えなかった。


「生まれが違うのはわかったが、それが金属を扱えるのとどう関係する?」

結局、俺が引っかかっているのはそこだ。


「そこもまた、認識のズレです」

「―――ズレだと?」


「そもそも、すべての魔力には性質の差……属性があります」

「人間の魔力属性は無属性が大半か、火や水といった要素を薄く持つものがほとんどです」


その言葉を聞いた瞬間、

昔から何度も言われてきた言葉が脳裏をよぎった。


―――魔力の波長が合わない。


精霊契約の根幹にある条件だ。


「精霊契約の“波長”ってのが、属性の話になるのか」

「―――飲み込みが早いですね、流石です」


褒められても、素直に喜べなかった。

それはつまり、俺が拒まれ続けてきた理由が、理屈として説明できてしまったからだ。


「基本的に魔力は、無・火・水・地・木・雷に分かれています」

「人間・精霊・魔物も、この法則に則っています」

「そして、魔力属性の濃さは個体によって変わります」


彼女の説明は、淡々としている。

まるで昔から決まっていた真実を、今さら読み上げているかのように。


「そして上位精霊との契約には、魔力属性が同質かつ単一でなくてはいけません」

「―――ここまでは、よろしいですね」


「ああ、問題ない」


理解はできていた。

だが理解すればするほど、俺と彼女が“普通ではない”ことだけが浮き彫りになる。


「しかし時に、既存の属性に当てはまらない魔力を持つものがいます」

「それが金属属性です」

「私とアルの魔力属性は、これに該当します」


「金属……か……」


思わず呟く。

納得と同時に、諦めにも似た感情が胸を満たしていく。


(そりゃ、普通の精霊と契約できるわけがない)


「私が金属を扱えるのは、精霊でありながら異端な“金属属性の精霊”だった、というだけです」

「あなたと契約できたのは、同じ金属属性で、なおかつ純度が高かったからです」


彼女は最後に、穏やかな笑みを向けてきた。

「―――これで、疑問は解消できましたか?」

「ああ、問題なく….な」


彼女が精霊であることは、充分すぎるほど理解できた。

―――そしてその中でもどれほど異質な存在かということも。


だが、俺はそれでも彼女を拒もうとは思わなかった。

初めて会ったあの日の言葉―――


『私と、同じですね』


(全くもってその通りだ)

結局のところ、本当に運命だったのだろう。


であれば、彼女の言葉通り後は委ねるだけだ。

「―――ありがとう、エナ」

「改めてこれからよろしく頼む」

俺は手を差し出した。


「―――こちらこそ、よろしくお願いします」

その返事と同時に、彼女の指が俺の手を包む。

そこにあったのは、今までになく美しい笑顔だった。


なんとか来ました。

まだまだ頑張ります。

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