表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/24

23.蟻王クレイヴァス

遅くなって申し訳ないです。

何度もリライトしてるうちにこうなってしまいました。



剣を消費するヴァルキューレは、通常より規模が小さいようだ。

本来であれば坑道を丸ごと消し飛ばせるはずが、小さな群れを削る程度に威力が抑えられている。


次々と剣を使い捨てにしながら、群れを削りつつ奥へ奥へと進んでいく。

俺はその後ろをついて行くことしかできなかった。

だが、敵地で何もしないわけにもいかない。


(――それでも、やれることをやろう)

瀕死の個体にトドメを刺し、背後を警戒する。

微々たる助力ではあるが、それでも必死に動き続けた。


すると突然、エナが歩みを止めた。

アリたちの気配が一斉に消えたのだ。


「……なんだ?」


次の瞬間――


――ゴゴゴゴゴゴッ


とてつもない揺れが襲ってきた。

「うおっ!」


あまりの振動に思わず膝をつく。


「アル、今すぐこちらへ!」

エナが慌てた声で俺を呼ぶ。

すかさず声のする方へ手を伸ばす。


「―――抜刀!!!」


俺の体が光に包まれ、一瞬で剣に変わった。

剣に変わる時、今までとは違う感覚がした。

エナとの繋がりを以前よりも感じる。


「なっ……」

その理由を知り、思わず絶句した。

暗闇だった洞窟が、昼間のように明るくなる。

エナには闇の概念がないと言っていたが、恐らくはこういうことだろう。


(まさか、五感が繋がり始めたのか)

視界以外に変化はないが、他にどんなことが起きるかわからない。


しかし、そんな心配はすぐに吹き飛ぶことになった。


――ズドォォォン



何かが壁を破壊して飛び出してきたのだ。

エナもすかさず後方へ跳ぶ。


「うわっ!」

土煙でよく見えないが、とてつもない大きさだ。

すると、何か細長い影が煙の向こうから飛んでくる。


「はっ!!」

飛来物を斬り落とそうとするが、カァン!という甲高い音を立てて弾かれるだけだった。


(なんて硬さだよ!)


今までエルナビスに斬れないものは、見たことがなかった。

彼女も手を抜いてるわけではない。

つまり――


(それほどの相手……か)


やがて土煙が晴れ、襲撃者の全貌が明らかになった。

それはとてつなく大きく不気味な形の昆虫だった。


濃い青紫色の甲殻に、牛を両断できるほど大きな顎、

頭にある触覚は、まるでカマキリの鎌のような形をしている。


「蟻王……クレイヴァス」

「思ったより早いお出ましでしたね」

エナは赤く光る複眼を、まっすぐに見つめてそういった。


(――こいつが?!)

今まで戦ってきた魔物とは、まるで比べ物にならない威圧感だった。

「これが……魔王か」

「はい、やっと役目を果たせます」

ビビっている俺とは対照的に、エナはとてもワクワクしているようだった。


(役目……か)

鉱山に入るより前、都市に着いた時からずっと繰り返している。

それだけ大切なことなのだろう。

であるならば、俺がやることは一つだけだ。


「じゃあ――」

「いつもみたいにさっさと終わらせようぜ!」

相棒としてはその後押しをするだけだ。


「アル……」

少しだけ驚いたような表情をするが、すぐに彼女は目を輝かせる。


「ありがとうございます」

「では、行きますよ!!」

最初に仕掛けたのはやはりエナの方だった。


「――燃焼、開始!」

詠唱と共にエナから大量の魔力が流れ込んでくる。

次の瞬間――

大地を割る踏み込みで、一気に距離を詰める。

だが、相手は魔王。

それを許すような相手ではないのはわかってる。


――キシャァァァ


突如、空気を震わせるほどの咆哮があたりに響き渡る。

さらにやつは距離を詰めさせまいと、頭を振る。

エナもそれに気づきすかさず横に飛ぶ。


ヒュンヒュンと空気が裂け、地面に二本の筋が刻まれる。

俺を弾いた硬度からは考えられないほどしなやかで、まるで鞭のようだ。

おまけに――


「……アル、気づいてますか?」

エナが蟻王を見つめたまま聞いてくる。


「……ああ、完全に囲まれてるな」

彼女の質問は周囲の気配のことだろう。

咆哮の後から、周囲の壁や地面に散らばっているのを感じていた。


「兵隊があちこちに潜んでいるな……」

「そのようですね」


「――では、あなたはそのまま周囲の警戒をお願いします」


警戒というが、時間をかけるほどこちらが不利なのは明白だ。


「なあ、強制接続すれば……」

俺から言うのはためらわれるが、ここは提案するしかない。


「いえ、ダメです」

俺の案は、想定より強く否定された。

だが、理由を聞けばそれも納得だった。


「まだ相手の手の内がわからないままです」

「――それに、使い残しもあと十本あります」

使い残し……それは収納している剣のことだろう。


「じゃあ、どうする?」

「少しだけ様子見をして、その後一気に畳み込みましょう」


相手は未知、周りを囲まれ危険しかない。

「あまり時間はかけられないぞ……」



「もとよりそのつもりです!」

そう言って、再び蟻王へと距離を詰める。


先程と同様に、二本の鞭が襲い来る。

エナはその間を縫うようにして一気に頭の下に滑り込む。


「燃焼、装填!」

すかさず詠唱、再び魔力がみなぎってくる。

そして――


「ヴァルキューレ!!!」

魔王の顔面にめがけて至近距離で大技を叩き込む。


――ドォォォォォォォォン


俺の視界が白まり、周囲に轟音が響き渡る。

とはいえ、さすがに全力ではない。

剣を消費した魔力のみで抑えている。

土煙であたりが見えず、やつの様子がわからない。


エナはまだ警戒をしているのか、念の為後方に跳ぶ。


「やったか……」

「いえ、これは……」

少しして視界が晴れた時、そこには驚きの光景があった。


「おいおい……」

蟻王は傷一つない姿で、変わらずそこに立っていた。

足元には、アリたち残骸が魔力の塵になっているのが見える。


「なるほど……」

(兵隊どもを盾にしたのか)


魔王は人間並の知能があるとは聞いていたが――


「マジかよ……」

「これは……想定以上ですね」


エナの表情にも焦りが見える。

どうやら、様子見すら許されないようだ。


「残りは九本――」

「どちらが先に尽きるか、勝負といきましょう!」

そう咆えた彼女は、再び魔王へ斬りかかる。


だがそんな彼女を見ていると、不安が拭えない。

このままでは勝てない、という確信がなぜかあるのだ。


(いや、心配のしすぎだ……)


今はそう自分に言い聞かせるしかなかった。

戦いは――まだ始まったばかりだ。


できるだけ頻度は維持するよう頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ