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21.花精と剣精

花の精霊のモデルはFGOのオベロンです。


――花の上位精霊、マーリン

奴は確かにそう名乗った。

(そして、エナを忌み者とも)


「やっと姿を現しましたか」

エナはずっと気づいていたらしい。


「なんで上位精霊がここに?」

思わず疑問が口から出た。


「色々あってね……」

「代々この家の者と契約してる」


「変わり者ですね」

エナが小さく呟くが、それも仕方ない。


上位精霊は基本的に王都で保護されている。

なのに、こんな僻地でずっと過ごしているというのだ。

本当なら相当な変わり者としか思われないだろう。


(まあ……、エナ自身もその例外なんだが……)

――今はそのことは置いていいだろう。


「で、その由緒ある精霊様が俺達になんの用だよ」

無礼は承知だが向こうもかなり敵対的な態度だ。

こちらが気を使うことはないだろう。

(今はまず、こいつの真意を探らないと)


「……噂の剣精とその契約者が見たくなってね」

薄ら笑いを浮かべながら、当然と言いたげに答える。


「――その感想は?」

どうしても聞きたくなって聞いてしまう。


「そうだな……」

少し考え込むような仕草をして、


「――噂以上におぞましいな」

「………………」

その一言と共に、花精の表情が一気に消え失せた。


「なんでそんなことを」

怖いと思いつつも、聞かなければとも思った。


「お前の隣にいるそれは、人と精霊の関係を壊す存在だ」

「それはお前たち人と共に生きられない」

「できるのは、ただ使うことと戦うことだけだ」

俺はただ絶句するしかなかった。


「――お前も本当は気づいてるんだろ?」

やつはニヤリと不気味に口角を上げた。

しかし――


「それだけですか」

マーリンのあからさまな態度にも、エナは表情一つ変えなかった。

正直言って、二人の考えがまるで読めない。


(…………いったいなんなんだよ!)

否定しか言わないマーリンと、何も否定しないエナ。

得体のしれない恐怖を、生まれて初めて感じた。


「――まさか」

しばしの沈黙の後、急にまた明るい笑顔に戻った。


(……不気味すぎだろ)

もうなにがなんだかわからない。

エナ以外に上位精霊なんて会ったことないが、他のやつもこんなではとすら考えてしまう。


「魔王を倒してくれる勇者に、心ばかりの餞別をとも思ってね」

そういって両手を合わせると、手の中が光だした。

そして――


「これ、受け取ってよ」

そのまま何かをこちらへ投げつける。


「おっと」

俺はそれをそのまま受け止めた。


「これは――」

投げ渡されたのは、一輪の赤いガーベラだった。

不思議なことに、花からは暖かさを感じる。


「火属性の下位精霊を集めて、花にしたものだ」

「だいたい……20体分ぐらいにはなるかな」


「なっ!!!」

本当ならとてつもないことだ。

普通なら特定の精霊を意図的に集めるだけでも難しい。

それだけでなく、まとめて保持するなどまずできない。


(口先だけじゃなく、ちゃんと上位精霊ってわけか)

人間離れした芸当に無理やり納得させられた。


「なんでこんなもんを渡す?」

先程の態度からは考えられない行動を怪しむ。


「だから、餞別だって!」

「これでも一応、領主の契約精霊だからね」

形式的なものと強調するが、貼り付けた薄ら笑いのせいで本気かまるでわからない。


「……たしかに領主様の契約精霊みたいだな」

まさに瓜二つだ。


「その花は、どんな暗闇でも君を明るく照らしてくれる」

「……それが文字通りであることを願うよ」

なんだか意味ありげなことを言われた。


「それってどういう……」

意味を聞く前に、やつは消えていた。


「…………あれ?」

「もう行きましたよ」

現れた時と同じで、霞のように消えた。


「なんだったんだよ……」

最後まで謎しか残らなかった気がする。

それはあの薄っぺらい態度だけが原因じゃない。


「あいつ、途中からあからさまにエナのことを無視してたぞ」

目線を合わせないどころか、顔すら見ていなかった。


(精霊にとってエナっていったい)

もらった花を眺めながら、やつの言葉を思い出す。

闇を照らすと言ったが、まるで意味がわからない。


「最後の言葉、どういう意味かな?」

「まあいいではないですか」

ヒョイと花を取り上げられる。


「――使えるものを、もらえたのですから」

花を掲げ、まじまじと眺めながらそう呟いた。

言葉とは裏腹に、なんだか表情は暗く見えた。



翌朝――


目が覚めると、すっかり体も動くようになった。

というより、動けなくなる前よりも調子がいい気もする。

(これなら戦えそうだな)

そんなことを考えて、自分でも驚く。

(気づかないうちに染まってきてる気がする)


「思ったより元気そうですね」

「そっちこそ」

いつも通りの明るい笑顔で少し安心する。


そこからは、前回と違ってきちんと準備をする。

「作戦はあるのか?」

「前回の襲撃に失敗したので、恐らくは兵の補充に専念してるはずです」

冷静な分析を述べる。


「奥に集まっていると思うので、短時間で済ませます」

「……できるのか?」


「無茶をすれば…………ですね」

「じゃあ今更だな」

「……………………」

エナが呆れた顔をしてるが、一度やったんだ。

二度目があっても気にならない。


その後はさっさと準備を終えて、城門を出た。


「また、お早い出立ですか」

門を出たあたりで聞き覚えのある声に呼び止められた。


「兵団長か……」

「私たちにはまた何も言わずに行かれるのですね」

団長は呆れた顔をしてそこに立っていた。


「それは――」

「役割の差です」

何かを言わないとと思ったが、間にエナが割って入る。


「私の役割は魔物退治、あなた方は都市の防衛です」

「互いにやるべきことをしましょう」


「…………わかりました」

他にも言いたいことがあるようだが、押し殺してるのがわかる。

「では、よろしくお願いします」

俺にはそれしか言えなかった。


「お二人共、ご武運を」

団長の激励を胸に、俺達は再び鉱山へ向かった。


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