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20.不吉な香り

展開と構成で悩んで時間がかかってます。

決してネットフリックスが原因ではありません。


エナに抱えられたまま、今まで見たことがない豪華で長い廊下を進む。

突然、前を歩いていた執事が立止まる。


「少々お待ち下さい」

そう言って一際荘厳な扉をノックする。


「ご領主様、お客様をお連れしました」

「構いません、お通ししなさい」

どうやらここが領主の部屋らしい。

声から察するに若い男のようだ。


「失礼します」

執事が扉を開くと、そこには――


「やあ、よく来てくださいました」

「ところで、お二人はいつもそうなのですか?」

俺たちの姿を見て、薄ら笑いを浮かべた男がいた。


「そうですが、なにか問題でも?」

領主の軽口に、エナがピシャリと言い放つ。

早速部屋の空気に緊張が走るのを感じる。


「………………まずはお掛けください」


「……失礼します」

エナは俺を座らせると、そのまま隣に座る。


「翡翠の瞳に赤い瞳孔、団長が言ってた上位精霊があなたですね」

エナの姿をまじまじと見た後、感心するようにそう言った。


「私の名はメルクト、メルクト・アルバレス」

「この都市の領主をしてます」


(この男が、ここの領主)

クセルの領主と比べるとずいぶんと若いが、それでも雰囲気で領主だと分かる。


「それで……一体どういったご要件です?」

俺はいきなりの呼び出しの理由を尋ねた。

少し苛立ちが声に混じってしまったが、そこは仕方がないというものだろう。


「まずは先日の防衛戦のお礼をと思いまして――」

「この都市を救っていただき、ありがとうございました」


「は、はぁ……」

正直言って、この程度のことで呼び出されたことに余計に苛立ちが募っていく。


「本来であれば、都市の衛兵の役目でしたが」

「あなた方がいなければ、今ごろはこの都市もなかったことでしょう」


(意外だ……)

その姿勢を見て、なぜだか感心してしまう。


(なんだかんだで、領主ってわけか……)

だが、その印象も次の一言で崩れた。


「しかしながら――」

「まさか留守の間に森が消えているとは思いませんでしたよ」

ハッハッハッと楽しそうに笑う。

まるで世間話をしているかのようだ。

だがすぐに違和感に気づく。


「これなら魔王討伐も期待できそうですね」


目が全く笑っていない。


(これじゃまるで品定めされてるみたいだ)

そう思えた途端、嫌悪感が胸に広がった。


「要件がそれだけなら、もう失礼させていただきたいのですが」

今は一刻も早く、この男をエナから引き離したかった。


「どうやら気を悪くしてしまったようですね」

「いえ、そんなことは――」

そう言われ少しだけ心臓が跳ね上がった。


「……私の契約者はまだ療養がいります」

「魔王討伐のためにも、今は休んでもらわなければ」

俺の様子を察したエナが助け舟を出してくれた。

実際もう少し休みたかったのも事実だ。


「まあ、お疲れのようですし――」

「今回はここまでにしましょうか」

部屋に帰れることになったが、すべて見透かされている気がした。


(コイツはいったい)

そんな疑問もすぐにかき消されることになった。


「アル、行きましょう」

そう言って彼女は俺をヒョイと抱える。

一切の躊躇がないあたり、もう人目など関係ないということだろう。


「もう少し恥じらいとかないのかよ……」

「今更ですね」


そんなやり取りを見て彼はただ笑っていた。


「ああ、そうそう」

去り際に領主に呼び止められる。


「もし変わった子どもを見かけたら、できれば優しくしてくださいね」

冗談なのか、本気なのか分からない奇妙なお願いだった。

最後まで軽薄な笑みを浮かべていただけで、呼び出された真意はよくわからなかった。


「……では、失礼します」

こうして領主との対談が終わった。


「お部屋までご案内します」

帰りは行きと同様に執事の青年が案内をしてくれた。


「では、ごゆっくりどうぞ」

部屋に入ると、彼は扉を閉め去っていった。

案内役の執事の足音が遠ざかったころだ。


「それで、あなたはなぜここへ?」

突然、エナが扉に向かって声をかける。


「な、なんだ?」

(誰もいないはずだろ)

廊下で誰かにつけられたわけでもない。

執事も先程どこかへ行った。


「………………」

だが、エナは扉を見つめて黙ったままだ。


「……なあ、誰に聞いてるんだ?」

俺がそう聞いた時だった。

ふと花の香りが鼻を突く。


「なに、ただの気まぐれだよ」


「誰だ!」

聞き覚えのない声がして、慌ててそちらを見ると――

さっきまで誰もいなかった場所に、輝くような金髪と花の冠を被った少年が立っていた。


(いつからそこに? いや、それよりも……)

奇妙な状況だが、俺は別のことが気になって仕方なかった。


(……なぜだろう、エナに似ている?)

うまく言えないが漂う雰囲気でそうとしか思えなかった。

その理由は、彼の目を見てすぐにわかった。


翡翠の瞳に赤い瞳孔――

それが指し示す事実は唯一つだけだ。


「はじめましてだな、忌み者」


途端に空気が張り詰める。


「僕の名前はマーリン」

「それと同じ上位精霊、花精マーリンだ」


その時、理由もなく本能が警鐘を鳴らした。


(コイツは……俺たちの敵かもしれない)


一話一話に意味を持たせたいので、ペースが落ちるのは御愛嬌でお願いします。


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