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18.アルバス防衛戦

開戦の火蓋を切ったのは彼女だった。


「せいっ!!!」


踏み込みからの振り下ろしが、迫り来る土埃と轟音を引き裂く。


だが――


(斬られた……数が……少ない)


全身が軋む中でも、はっきりと見えた。

後列のアリたちが、エナの斬撃に合わせるように左右へ散開している。


分かれた群れが、包囲するように動き出した。


エナもそれを理解しているのだろう。

縦横無尽に飛び回りながら剣を振るい、城壁側へ近づけさせないよう立ち回っている。


強靭な顎。

巨体からの突進。

腹部から噴き出す酸。

四方からの包囲。


そして――俺を焼き続ける幻痛。


何もかもが限界だった。


耳鳴りが酷い。

空と地面が何度も入れ替わる。

痛みで意識が何度も弾けそうだ。


そんな中、彼女の声が響いた。

「もう少しです!!!」


(もう……少し……?)

言葉は理解できる。

だが意味が追いつかない。


「"溜め"も同時に行っています――」

「あと少し耐えて!!!」


溜め。


その一言で理解した。


(――あれだ)


初戦で見せた、森ごと魔物を消し飛ばした一撃。

あれを撃つつもりなのだ。


俺の状態を理解しているのか、声に焦りが滲んでいる。

それでもエナは動きを止めない。


魔力で伸びた刀身で、まとめて数匹を薙ぎ払う。

仲間を囮にした酸の噴射は、剣を振るい風圧で散らす。

斬撃の隙を狙う突進は、蹴りと拳で弾き飛ばす。


だが――

(全く……数が減ってる気がしない……)

統率された群れに押し込まれ、徐々に追い詰められていく。


五十ほど斬り伏せた頃だった。

剣が一際強く輝いた。


「装填、完了……」


そう呟いた瞬間だった。


エナは攻撃を止め、背を向けて城壁へ走り出した。


「おい……なにを――」

理解が追いつかない俺に、彼女はただ一言。


「大丈夫です!」

と言い切った。


無論アリたちは逃がすまいと、一斉に追いすがる。


やがて森を抜け、城門が視界に入る。


彼女は足を止めて振り向き、大きく剣を振りかぶる。

そしてあの技の名を叫ぶ。


「ヴァルキューレ!!!!」


――ドォォォォォォォォン


閃光、爆音、そして衝撃。

視界が白に塗り潰された。


次に見えたのは――


先ほどまで群れていたアリたちも、城門前の森も消え去って――

ただ、平坦な大地が広がっていた。


「はぁ……はぁ……」

彼女の息遣い以外に音がない。


(……本当に……やりきったのか)

そう思った瞬間だった。


彼女の手から力が抜ける。

離れた途端に、俺は剣から人へ戻る。


あまりにも唐突で、受け身も取れずに尻もちをついた。

「…………いってぇ」

現実の痛覚で朦朧とした意識が逆にはっきりする。

「…………」

しかし、エナは前を向いたまま何も言わない。


「お、おい……どうした?」

彼女に問いかけた瞬間だった。


彼女の体がふらりと揺れ、そのまま後ろに倒れ込む。


「エルナビス!!」


地面との間に滑り込み、彼女を受け止める。


「うげぇっ……」

幻痛に比べれば遥かに軽いが、衝撃は確かにあった。

「おい、本当にどうした?」

そう聞きながら彼女の顔を覗き込む。


だがエナは目を閉じたまま、微動だにしない。


「おい、エナ! エナ!」

「目を覚ませ、エルナビス!!!」


肩を揺さぶり必死に呼びかける。


――その時だった。


ボゴォ


平地の奥の地面が盛り上がり、数匹のアリが現れる。


(最後尾だけ生き残ってやがった!)


「くそっ!」

(……今の俺じゃ戦えない)

今は逃げるしかない。

彼女を背負い、立ち上がろうとする。


だが――


「あれ……」


膝に力が入らない。


(いや……それだけじゃない)


体から力が抜けていく。

支えることすらできず、俺はうつ伏せに倒れた。

おまけに意識も朦朧とし始めてる。


生き残りがまっすぐこちらへ向かってくるのが見える。


(俺が……助けなきゃいけないのに……!)


そう思っても指先すら動かせない。


その時だった――


ゴゴゴッ


重い音が響く。

城門が開く音だ。


続いて、老いた男の怒号が響く。


「速やかにお二人を回収しろ!」

「他は目の前の害虫の駆除だ!!!」


号令と同時に――


「「うぉぉぉぉぉ!!!」」


視界が土埃と鎧の足で埋め尽くされる。


その中で誰かが近づいてくるのを感じた。

「大丈夫ですか?!」

「う……ぁ……」


返事をしようにもうまく声にならない。

意識がどんどん遠のいていく。


「しっかりしてください!」


聞き覚えのある老兵の声を最後に――


俺の意識は完全に途切れた。


大規模戦闘は生まれて初めて書きました。

これから慣れていけるよう頑張ります。

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