17.予想外の危機
構成を調整しながらです。
更新が少し遅れてます。
―――翌朝。
兵士たちの制止を振り切り、俺たちは森へと踏み入った。
目的地はアルバレス鉱山。
街道を半日も進めば辿り着く距離だ。
「…………」
「…………」
背後には遠ざかる城門。
視界の端にまだ見えているというのに、俺とエナの間に言葉はない。
昨日から妙な気まずさが漂っている。
「なあ……本当に大丈夫か?」
沈黙に耐えきれず問いかけた。
「……正直に言えば、厳しいです」
珍しく弱気な声音。
「最悪、鉱山そのものを消し飛ばす必要がある……かも……」
「……どうかしたか?」
言葉が途切れ、同時に歩みも止まった。
「なあ、大丈――」
「すみませんが――緊急事態です」
「アル! 戦闘準備を!」
返事をする間もなく、視界が白く染まる。
「わ、わかった!」
身体が光に包まれる。
「―――抜刀!!!」
剣へと変わった瞬間、感覚が鋭く研ぎ澄まされた。
そして理解する。
―――ドドドドドドドド……
まだ遠い。
だが確実に近づいてくる無数の脚音。
「おい……まさか……」
「はい。侵攻が始まったようですね」
冷静な声。
だが、張り詰めた緊張は隠せていない。
「気配から察するに……巣の半分ほど」
「それでも二百は超えるぞ!」
森の奥で木々が揺れ、黒い影が波のようにうごめく。
エナは一瞬、目を閉じた。
「……ここで食い止めます」
「どうやってだ?!」
わずかな間を置いて――
「少々手荒になりますが」
「魔力路を強制的に接続し、魔力効率を最大化します」
「いや、繋いでるだろ?」
「完全ではありません」
静かに、しかしはっきりと告げる。
「魂を強制的に連結します」
「その代償として――あなたには、耐え難い幻痛が襲います」
思わず息を呑んだ。
今まで強引だった彼女が警告する。
それだけでどれだけ危険か理解できた。
(痛み……エナが言うなら、相当だ)
――怖い。
正直に言えば、逃げ出したくなる。
今日まで彼女は、俺に無理をさせまいとしていた。
だが今回は違う。
迫る足音、揺れる大地。
はっきり言って、逃げ出すところだ。
それでも――
「いいよ。やろう」
答えは迷わなかった。
(エナはずっと俺を守ってくれた)
「今度は、俺が守る番だろ」
「痛みくらい、耐えてやるさ」
しばしの沈黙。
「…………ありがとう、ございます」
これまでで、一番重い声だった。
「ふぅぅぅぅぅ……」
深く、そして長い呼吸。
それは、覚悟を固めるための儀式のようだった。
先ほどまで遠かった蟻の群れは、
今や木々のざわめきがはっきり届く距離まで迫っている。
「では――いきます」
一瞬の静寂。
「――強制接続、開始」
詠唱と同時に、俺の内側へ熱が流れ込んだ。
焼けつく奔流。
同時に、エナの全身へ見慣れぬ紋様が浮かび上がる。
脈動する光の線――あれが魔力路なのだろう。
正直、とても綺麗で見惚れた。
(……思ったより――)
その甘い認識は、次の瞬間砕け散る。
「――――ッが!」
剣に痛覚はない、それでも。
杭を何百本も打ち込まれ続けるような衝撃が、
存在そのものを貫いた。
(これが……幻痛……!)
意識が白く弾ける。
「すみません……すぐに終わらせます」
柄を握る力が、常軌を逸している。
魔力が嵐のように渦巻く。
そして――
エナは地を蹴った。
爆ぜる大地、裂ける風――
迫りくる蟻の軍勢へ、真正面から突撃した。
自分でもここまで長続きしてるのに驚きです。




