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14.契約と剣精

投稿ペース落とさないよう頑張ります。


エナに旅の話を聞かせていた俺は、いつの間にか眠っていたらしい。

彼女の言う通り、気づかないうちに俺も消耗していたのだろう。


目を開けると、景色は眠る前とほとんど変わっていなかった。

エナも木にもたれかかったまま、微動だにせず遠くを見つめている。


「おはようございます」


夜通し起きて見張ってくれていたらしい。

声をかけられて、ようやく朝だと実感した。


「……睡眠がいらないって言われても、やっぱり慣れないな」


そう零すと、彼女は少しだけ首を傾げた。


荷物をまとめた俺に、エナが言う。


「さて、行きましょう」


そう言って、当然のように荷物へ手を伸ばす。


「お、おい」


咄嗟に声が出た。

これ以上、役立たずになるのは嫌だった。


「あなたを抱えて運ぶのに、荷物が邪魔です」

「これは私が背負いますから」


「え、いや――」


反論は最後まで言えなかった。

荷物を取られた直後、視界がふっと浮く。


次の瞬間、世界が横に流れ始めた。

彼女は、そのまま昼過ぎまで走り続けた。

夜を迎える前に森の手前にある小川で、野営することになった。


俺が焚き火の準備をしている間、

エナは「暇なので」と言ってどこかへ行った。


火が安定し始めた頃、背後に気配を感じる。


「焚き火の準備はどうですか?」

「ああ、もうすぐだ」


そう返しながら振り向いて――

俺は言葉を失った。


「……それ、なんだ?」

なぜか彼女は、右手にイノシシを持っていた。


「イノシシですよ。初めて見ましたか?」

ドスン、と音を立てて地面に置かれたそれは、立派な成獣だった。


「アルはお肉が好きなようでしたので、調達しました」


彼女の手に武器はない。

獲物にも、目立った傷は見当たらない。


つまり――

(…………素手か)


日を追うごとに、彼女の規格外さを実感していく。

(――エナとは、絶対に喧嘩しない)

心の中で、静かに誓った。


イノシシを焼き、食べながら話を戻す。


「で、契約についてだけど――」

「俺は何を勘違いしてるんだ?」


「契約で得る力の理屈が、少し違っています」


エナは焚き火を見つめたまま言った。


「精霊契約は本来、人間が魔力を扱うために、精霊の“魔力路”を借りるものです」

「正確には、複製して使います」


「複製……?」


聞いたことのない言葉に、思わず眉をひそめる。


「精霊には魔術を使うための魔力路がありますが、人間にはありません」

「契約魔術で、それを人間に再現するのです」


「……危なそうだな」

「魔術効果で調整されていますから、問題はありません」


少し間を置いて、彼女は続けた。


「ただし、複製ですから馴染むまでに時間がかかります」

「精霊もまた、自分の特性に沿わないものへ魔力を流すのは苦手です」


「風の精霊なら、風そのものが得意……って感じか?」


「はい。その認識で問題ありません」


そして、エナは俺を見た。


「知っての通り、私は精霊の中でも異質です」

「金属に魔力を流せるものは、ほとんどいません」


焚き火の光が、彼女の横顔を照らす。


「あなたに複製された魔力路は、すでに安定しています」


「……なんだか、釈然としないな」


エナ以外と契約できない理由は理解した。

それでも、過去は簡単に切り離せない。


「――それは、今までの経験からですか?」


図星だった。


「金属属性は、他属性で複製された魔力路を破壊します」

「逆に、同じ属性ならとても馴染む」


厄介者と呼ばれてきた理由。

それが彼女と噛み合う理由だと言われても、すぐには受け入れきれない。


「俺の欠点が、今は魅力だと言われてもな……」


焚き火の向こうで、エナは静かに言った。


「それでも、それが事実です」

「あなたは、私にとって最高の相棒です」


その言葉を聞いて、なぜか胸が軽くなる気がした。


「明日は鉱山付近の街に向かおう」

「そのままアリ退治に向かうのでは?」


「………………」

あまりの破天荒さにも、そろそろ慣れてきた。


「旅人なら、組合に行くのが先だ」

「いいな」


少し強めに言う。


「……はい」


どこか拗ねたような返事だったが、

今回はそれ以上触れず、俺は横になった。


字数が増えてますが、許してください。

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