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10. 剣精エルナビスと共に

今回の話で一区切りとなります。

次の章からバトルシーンが増えるかもなのです、少し杞憂です。

部屋に戻った俺は、しばらくその場に立ち尽くしていた。


(……俺、とんでもないこと言ってなかったか)

会合の光景が、遅れて頭に追いついてくる。

今さらながら自分がどれほど無茶な宣言をしたのかを理解し、胃の奥がきりりと痛んだ。


「アル、どうかしましたか?」

背後から、いつもと変わらぬ穏やかな声がかかる。


彼女のやりたいことを守りたかった。

それは嘘じゃない。

だが――


「二人だけで魔王を討伐するって」

「アルも、思い切ったことを言いますね」

微笑み混じりのその一言で、膝から力が抜けた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

思わず床に崩れ落ちる。

彼女がどこか嬉しそうなのが、余計に心に刺さった。


「訓練を受けた騎士が大群でやっと一体討伐するような相手だぞ……」

「それを二人で、しかもあと三体とか……」

「どう考えても無理だろ……」


頭を抱える俺とは対照的に、彼女は少しも不安そうな素振りを見せない。


「これも運命です」

「諦めて、委ねましょう!」


(なんでこいつは……)


そう思いかけて、途中で考えるのをやめた。

彼女は会合で”魔王討伐は使命だ”と言っていた。


俺がいなくてもきっと行く。

止めれば、最悪この建物が吹き飛んでたことだろう。


「……そこまで言うなら、何か根拠はあるんだろうな」

せめてそれくらいは聞かせてほしかった。

だが、その問いを口にしたことを、すぐに後悔する。


「はい!アルがいますから!」

即答だった。

迷いの欠片もない声。


「はぁぁぁぁ」

思わず、短く息を吐く。


(……まったく)

呆れに近い感情が、先に胸を満たした。


無茶だと分かっていても止まらない。

危険だと知っていても、引き返す気がない。

そういう存在だと、もう十分思い知らされたはずなのに。


それでも――

その笑顔を見ていると、胸の奥がじんと熱くなる。


(守ってやるつもりだったのにな……)

たまには俺が彼女を支える側だと思っていたのに、

結局、いつも引っ張ってもらうのは俺の方になってる。


だが同時に、拭えない疑問が湧き上がる。


――初めて契約したあの時のことだ。


”剣に変えられた兵士を元に戻すことはできず”


会合で聞いた話が、否応なく脳裏をよぎった。

理屈では理解している。

俺は正式な契約者で、魔力の相性も完全に一致している。

戻れる確信があったからこそ、彼女は俺を剣にした。


それでも。


(それでも、だ)


「……なあ、エナ」

「はい?」


「はじめて俺を剣に変えたとき――」

「おまえは……何を考えてたんだ?」


彼女は驚いたように少しだけ目を瞬かせてから、静かに口を開いた。


「――少しだけ、怖いと思いました」


「私は自分の力を悪だとは思っていません」

「ですが、人間はそうではないと知っていましたから」


淡々としかし、どこか寂しそうな声。

しかし少し微笑んでから彼女は続けた。


「それでも、大丈夫だと直感でわかりました」

「あなたは……信じてくれたでしょう?」


そう問われると少し困った。

あの時はただ、必死で行動しただけだった。


「信じたかと言われると、自信はないけどな……」

と言ったところで言葉を止める。

契約のときの彼女のことを思い出したからだ。

(私なら……いえ、私たちならできます)

そう言ってくれたから、動けたのだ。


「信じたのは俺じゃない」

「先に信じてくれたのはエナの方だ」

俺はただ正直に気持ちを伝えた。

それを聞いた彼女は――


「うふふ」


なぜか楽しそうに笑った。


「なんだ? そんなに変なことは言ってないぞ」


「違います」

「ただ――やっぱり、似たもの同士ですね」


「そう……かもしれないな」

それを聞いた俺は少しだけ安堵した。



その日の夜、俺は驚くほど早く眠りに落ちた。

部屋に彼女が一緒にいることも、もう気にならなかった。


――翌朝


「忘れ物はありませんか?」

「仮にあっても、困るものはないな」

「そういうところが困ると言っているのですが……」


軽いやり取りを交わしながら、俺たちはクセルの街を後にした。


朝の空気は澄んでいて、街道は静かだった。

ここから先は、本当に二人きりだ。


「で、まずはどれから倒すんだ?」

そう尋ねると、彼女は少しだけ首を振る。


「それは後にしましょう」

「……え?」

次の瞬間、視界がふっと浮いた。


「お、おい?」

気づいたときには、俺は彼女の腕の中にいた。


「あの……エルナビスさん?」

「はい」

「なぜ抱えられているんでしょうか」

俺の疑問に彼女は、

「普通に歩いていたら時間がかかりすぎますから」

と、当然のように言いだした。


「しっかり捕まっていてくださいね」


そう告げた直後――

彼女は俺を抱えたまま、信じられない速度で駆け出した。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


風が唸り、景色が一瞬で流れていく。

悲鳴を上げながらも、不思議と恐怖はなかった。


――こうして、俺たちの旅は始まった。


たった二人で魔王を討伐する。

無謀だという自覚はちゃんとある。


それでも――

彼女の目を見れば、不思議と不安は薄れていった。


どれだけ困難が待っていようと、

少なくとも――孤独ではない。


そう思えたことだけで、この旅に出る理由としては十分だった。


超かぐや姫が見たい。

今は高クオリティーな一次創作を浴びたいですね。

最近は憧れの先生の「ジェノサイド・オンライン」を読んでますが本当に面白いです。

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