表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/24

9.刃の価値

ブルーアーカイブ始めました。

キャラクターがかわいくて楽しいです。



「――エナ、この人が言ったことは……本当なのか?」


震える声で彼女に問いかけた。

嘘なら否定してほしかった。

一言でもいいから、違うと言ってほしかった。

しかし――


「はい。間違いありません」

声色一つ変えず、彼女はきっぱりとそう答えた。


目の前がすっと暗くなる。


(じゃあ……彼女は、わかっていて黙っていたのか?)

(なぜだ?いや、それよりも――)

(俺は次も……戻れるのか?)


「ですが……」

「正確な内容ではありませんね」

静かな声が沈黙を切り裂く。


「……嘘だと言いたいのか?」

支部長が低く、ドスの利いた声で凄んだ。


「二年前の蟹王(かいおう)討伐戦のことはよく知ってる」

「剣になった兵士の中には、俺の親友がいたからな……」

「報告書は読ませてもらっている」

そういって支部長は、懐から数枚の紙を取り出した。

「ここにはこう書かれている――」

「“討伐戦にて能力を使用。兵士三十名を剣に変え、単独で魔王を討伐。しかし、剣に変えられた兵士を元に戻すことはできず”」


「――これは先程、自身で認めただろう」

言葉の端々から、抑えきれない怒りが滲み出ている。


「……報告には、続きがあります」


今度は領主が、淡々と口を開いた。


「“また、当時の上位精霊には契約者が存在しなかったため、能力の発動は契約の有無に依らないことが判明”」

「“協議の結果、当該精霊はクセル領主――メイデン=クセルディアの管理下に置くものとする”」


「――以上です」


静かに告げられたその内容が、

俺の胸の奥に、重く沈んでいった。

「能力と結果に関しては、報告の通りで間違いありません」


エナは淡々と続けた。


「ですが、元に戻せなかった理由については、補足が必要です」

「剣に変えた者たちは、いずれも“正式な契約者”ではありませんでした」


「……どういうことだ?」

彼女の指摘に、思わず声が漏れる。


「さらに言えば」

「変えた方々は全員、瀕死――もしくは死亡直後の状態でした」


(……つまり生きている人間に使った……わけじゃないのか?)

俺がそんなことを考えてる間にも彼女は続ける。


「意思が弱く、魔力の相性も悪い人間を剣に変えたのです」

「元に戻らないのは、当然の結果と言えます」


冷静な分析。

感情を挟まぬ、事実の列挙。


「ですが私も、そしてあの兵士たちも」

「魔王を討つという意思だけは、最後まで同じでした」

彼女は、少しだけ視線を伏せる。


「だからこそ――彼らの力を借りたのです」

その瞳には真っ直ぐな意思が見てとれた。

全員がその意思を感じたのか、誰からも反論は浮かばなかった。


「アル」


名を呼ばれ、思わず彼女を見る。


「あなたは正式な契約者です」

「魔力の相性も、完全に一致しています」


今度はこちらを真っ直ぐ見て


「だから……あなたは大丈夫です」


「……そう、なのか」

(精霊には嘘をつく機能がない)

胸の奥に絡みついていた不安が、わずかにほどける。


少なくとも――

今すぐ、自分が戻れなくなるわけではないことはたしかなようだ。


「ふぅぅぅぅぅぅぅ」

そう理解できただけで、俺は深く息を吐いていた。


「だが以上を踏まえた上でもだ」

「エルナビス。あなたは危険すぎる」

支部長は腕を組み、低く息を吐いた。


「だが同時に、放置できる存在でもない」


視線が、俺ではなく彼女に向けられる。


「よって――」

「今後はクセルに留まり、契約者と共に領主の管理下で保護する」

「これが、こちらの結論だ」


静かな断定だった。


反論の余地を与えない、決定事項としての言葉。

だが――


「お断りします」


エナは、間髪入れずにそう言った。

室内の空気が、目に見えて張り詰める。


「理由を聞かせていただいても?」

領主が、穏やかな声で促す。


「私には、まだ役割が残っています」

「討たれるべき魔王がまだ三匹も残っています」


淡々とした口調。

だが、その言葉には強い使命感を感じる。


「その役目を放棄することはできません」


「それで、今度は何人剣に変えるのです?」

支部長が即座に言い放つ。

「残る3体も騎士団が討伐する。あなた方には大人しくしていてもらおう!」


「それは――!!」

支部長の決定にも折れない彼女の姿勢を見た俺は、


「……だったら二人で行けばいい」

そう気づけば口から出ていた。

自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。

視線が一気に俺に集中する。


「俺とエナだけで魔王を討伐します」

「組合でも懸賞金がかかってる魔物に、旅人の俺が勝手に挑むんだ」

「それなら――」

喉の奥が乾くのを感じながら、続けた。


「失敗しても責任は俺にある」

「誰にも迷惑はかからない、違いますか?」

無茶な提案だと、自分でもわかっている。

ただ、彼女の助けになりたい一心だった。


「……アル」

エナが何かを言いかけて言葉を飲み込み、こちらを見ていた。

「俺はエナの契約者です」

「彼女の意思を尊重します」


しばらくの間、誰も言葉を発さなかった。


支部長は俺を睨みつけ、領主は静かに目を細めている。


やがて――


「……言っても聞かんみたいだな」


支部長の声には、苛立ちと諦めが混じっていた。


「勝手にしろ、とは言えないですが」

「その提案を止める理由もありませんね」

領主のその一言で、この会合の結論は事実上決まった。


許可でも、命令でもない。

今はただの黙認だ。


(今はそれでいい……)


会合が終わり部屋を出るとき、

俺はふと、隣を歩く彼女に目を向けた。


彼女はこちらを見て――

昨日見せてくれた柔らかい笑みを浮かべていた。


もしここまでずっと呼んでる方がいれば感謝しかありません。

投稿ペースは落とさないように頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ