第三話 生への恐怖
主人公:暁 切歌。10歳。親から虐待を受けており、意識を失って病院に搬送された。
現世の声:医師・八乙女 蒼。
なんか、夢を見ているのかな。
真っ白な部屋。
誰もいない。
怖いよ…。
誰か…。
『ようこそ、Fatalルームへ。ここであなたは生か死かを選ばなくてはいけません。この先にいるのが先人たち、後ろには現世。どちらの声に耳を傾けるかはあなた次第です。道を選ぶのもあなたです。ここにいる間、現世でも同じように時間が流れています。限られた時間ではありますが、その猶予の中であなたが後悔しない選択をできますように。では。』
え。
そんなこと言われても困るよ。
早くここから抜け出さないと。
でも…。
あれ?
おじいちゃんとおばあちゃんがいる。
おじいちゃんたちが心配そうな面持ちで言う。
『こんなところに来てはダメでしょ。戻らないと。』
でも…今戻ったら、またお母さんたちに殴られるの。
棒を叩きつけられて、怒られるの。
私、戻りたくないよ。
『ううん、もう大丈夫。あなたに暴力をふるうような大人はもういないから。』
え…?
これは…私?
私は病室で眠っていた。
そのそばにいるのは…お医者さん?
「戻っておいで…。もう大丈夫だから…。」
本当に?
『ええ、ほんとよ。大人の人たちがあなたを守ってくれる。だから、戻って大丈夫よ。』
私…もう怖い思いしなくていいの?
私…やっと解放されるの?
うん…。私、戻るね。
ありがとう、おじいちゃん。おばあちゃん。
手を振る2人。
少し怯えながらも、私は扉を開いた。
「…きこえる?切歌ちゃん。」
あ…。先生…。
「私…。」
「もう大丈夫だよ。もう君に暴力をふるうような大人はいない。俺が守るから。大丈夫。大丈夫。」
私は泣いた。
思いっきり泣いた。
その後、施設に送られた私。
施設での生活は楽しい。
おじいちゃん、おばあちゃん。私、生きててよかった。