第二話 望まぬ生
主人公:水無瀬 祈織。心臓移植を受けている最中にFatalルームへ。
ここはどこだろう。
まわりを見ても一面真っ白。変な空間。
ふと、頭の中に声が流れてくる。
『ようこそ、Fatalルームへ。ここであなたは生か死かを選ばなくてはいけません。この先にいるのが先人たち、後ろには現世。どちらの声に耳を傾けるかはあなた次第です。道を選ぶのもあなたです。ここにいる間、現世でも同じように時間が流れています。限られた時間ではありますが、その猶予の中であなたが後悔しない選択をできますように。では。』
Fatalルーム…?
えっと…Fatalの意味は「命に関わる」…だったっけ。
目の前を見る。
その光景に目を凝視する。
遥都…?
私の目の前にいたのは、亡くなった祖父母と父母、そして…彼氏の篝 遥都がいた。
なんで…?
なんで遥都がいるの…?
遥都!
『ごめんな』
え…なんで謝るの?
『よく思い出してみて』
よく思い出す…?
考えてみる。
私、確か心臓移植の手術を受ける予定だったよね。
手術室まで運ばれて…麻酔を入れられるところまでしか覚えていない。
…まさか。
遥都?
『ああ、俺が祈織のドナーなんだよ。』
時が止まる。
そんな、だって喜んでくれていたじゃん。
やっとドナーが見つかって、真っ先に遥都に伝えた時のことを思い返す。
あんなに喜んでくれたのに。
そんな、私、そんなの望んでないよ。
遥都のいない現世なんて、戻りたくないよ。
よく見ると、遥都の胸元はぽっかり穴が開いている。
嫌、嫌だよ。
遥都と一緒に生きたかった。
私、これから独りぼっちなの?
嫌だよ。そんなの。
胸の中に温もりが溢れてくる。
これ…。
『俺の心臓だ。頼むから、生きてくれよ。』
そんな、嫌だ。
いや、だ…。
はっ。
目を覚ますと、病室にいた。
「はると!」
彼はいない。
胸の中の心臓がどくどくいう。
そんな…。そんな…。そんな…。
私が遥都、あなたの心臓を奪ったの?
私のせいだ…。
『いつまでもくよくよすんな!』
はっ。
『言ったろ?生きろって。お前のせいなんかじゃない。』
私は泣き崩れた。
そこに看護師さんがかけつけ、私はただひたすら大泣きしていた。
それから10年後_________。
遥都。私、28歳になったよ。
遥都の心臓と一緒に生きているよ。
それにしても、なんだったのかな。あの空間は。
不思議な部屋だった。
遥都の心臓がなかったら、私は今頃死んでいた。
ありがとう、遥都。私、もう大丈夫だよ。
『ああ、それでいい。』
え?
後ろを振り向く。
風が凪いでる。
私は、次の一歩を踏み出した。