第一話 望んだ生
主人公は小坂 舞。心臓病を患っている。
ここ、どこ?
私は真っ白な部屋にいた。
頭の中に声が流れてくる。
『ようこそ、Fatalルームへ。ここであなたは生か死かを選ばなくてはいけません。この先にいるのが先人たち、後ろには現世。どちらの声に耳を傾けるかはあなた次第です。道を選ぶのもあなたです。ここにいる間、現世でも同じように時間が流れています。限られた時間ではありますが、その猶予の中であなたが後悔しない選択をできますように。では。』
え…?どういうこと…?私はなんでこんな場所に…。
あれ…?
目の前にいるのは祖父母と母。
三人とも幸せそうに微笑んでいる。
『おいで』
母が声をかけてくる。
あぁ…どれほどまでにこの声を聞きたかったか…。
涙がこぼれる。
私は導かれるように『そちら側』に行こうとする。
だが、1つの声がした。
「行ってはダメだよ」
その声にハッとする。
後ろを振り返ると兄・小坂類がいた。
お兄ちゃん…。
あ、そうか。
私、また発作を起こして…。
『こっちにおいで。楽しいよ。』
お母さんたち…。
「そっちに行ってはダメだ!」
兄が訴えかけるように言う。
分かったよ。お兄ちゃん。
私、まだ生きていたい。
お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん。ごめんね。
寂しそうにするお母さんたち。
でも、選んだから。
現世への扉を開く。
後ろは振り向かない。
私はただまっすぐ道を進んだ。
「…て。起きろ!舞!」
ハッ。
「舞…目を覚ましたんだな…。」
お兄ちゃん…。
「私…また…」
「あぁ、心臓発作を起こして救急車で運ばれてきたんだ。一時大変だったんだぞ。」
「そっか…。」
「ねぇ、お兄ちゃん。」
「ん?」
「私ね、夢でお母さんたちに会ったの。そっちに行こうとしてね、でも、お兄ちゃんが怖い顔して『そっちに行っちゃだめだ』って言ってくれたから戻れてきたの。」
「…。そうか。母さんたち、もう苦しんでなかったか。」
「うん。幸せそうにしていた。」
「そうか…。でも、良かった。こうして戻ってきてくれて。」
「うん。心配かけさせてごめんね。」
「いいよ。」