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 そして食事を進めながら私がここに住むことについて話をされた。大体は昨日リオが言っていたとおりだ。開発に必要な材料や道具も用意してくれるし、食事の面倒も見てくれるそうだ。開発した商品も盗まれることもない。それにノーラとケビンとも一緒にいられる。

 でもこれでは得をするのは私だけだが果たしてそれでいいのだろうか。私はそのことをベルトラン様に尋ねてみた。



「とてもありがたいのですが、この条件だとグレイル公爵家には何の利益もありません。…ここまでよくしてくださる理由が母の娘だからということであれば遠慮したいと思っています」


「きっとヴァイオレットはそう言うだろうと思っていたよ。だけど大丈夫だ。我が家にもちゃんと利益がある話だからね」


「そうなんですか?」


「ああ。まぁ一言で言えばグレイル公爵家はベル商会のパトロンになりたいと思っているんだ」


「えっ!」


「リオからは詳しい話は教えてもらえなかったけど、これから本格的に新しい商品を開発していくんだろう?それも貴族向けの」


「え、ええ。その予定です」


「すでにベル商会で売り出している『ハンドクリーム』は平民の女性の間で大人気だと聞いている。それを開発したのもヴァイオレットなんだろう?そして次は貴族向けの商品の開発をしようとしている。それにきっと平民向けの商品も併せて開発するんじゃないかい?」



 さすがグレイル公爵家の当主様だ。貴族向けの商品を開発するという情報だけでそこまで考えが及ぶとは。



「…詳しくはお話しできませんがそのような考えもしております」


「ああ、情報を聞き出そうとしているわけではないからあまり警戒はしないでくれよ。それで私はヴァイオレットの可能性に投資したいと思ったんだよ。おそらく新商品も売れると私は予想している。そうなればお互いに利益が出ると思うんだが、どうだい?」



 たしかにベルトラン様の言うとおりで、おそらくというか絶対に新商品は売れる。私が貴族向けに考えている新商品はズバリ化粧水だ。この世界にはまだ存在していないものである。それを私は前世の記憶を活かして作るつもりだ。前世の私は化粧品会社で開発をしていた社会人だった。なので材料さえ揃えばすぐに完成するだろう。しかしその材料集めが大変だなと思っていたところにこの話だ。私としてはすごく魅力的だし開発環境もいい。それにラフィーネ様やクリス姉様に宣伝してもらえればかなりの売上が期待できる。

 そしてグレイル公爵家としては人気商会のパトロンになることができる。というのも貴族にとってパトロンというのは一種のステータスになるのだ。さらにその商会の商品を優先的に手に入れることもできるので、それを利用して会話を有利に進めることもできるだろう。

 そこまで考えた私はこの話に乗れば稼げると確信し、話を受けることにした。



「分かりました。そのお話、お受けしたいと思います」


「よかった。じゃああとで契約書を交わそうか」


「はい。ありがとうございます」


「ねぇヴァイオレットちゃん。新商品は一体どんなものを作るの?」



 ベルトラン様との話が一段落ついたところでラフィーネ様が目をキラキラさせながら新商品について聞いてきた。



(うーん、支援してもらうことになったし少しくらいならいいかな)



「えーっとですね、一言で言えば肌に潤いを与えるものを作る予定です」


「肌に潤い?」


「はい。顔を洗った後や湯浴みから出た後に肌に潤いを与えることで、肌がもちもちぷるぷるになるんです」


「なんですって!?」

「まぁ!それは本当?」



 ラフィーネ様とクリス姉様の食い付きがすごい。やはりどこの世界でも女性は美容に興味があるようで、これは当たるなと私は改めて確信した。



「はい。完成した際には発売前にお二人に使っていただきたいと思っているのですが…」


「まかせてちょうだい!」

「もちろんよ!」


「ありがとうございます。頑張って作りますね!ふふふふ…」



(公爵夫人と次期公爵夫人が使う化粧水…。これは売れる、売れるわ!)



「ヴィー、顔…」


「はっ!えへへ…」



 私は新商品によって手に入るであろうお金を想像して、顔がにやけるのを抑えるのに苦労するのであった。


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