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私は今元ラシェル侯爵邸にいる。先日無事に購入することができた土地と建物の確認に来ているのだ。
今回はリオとノーラと一緒に来ている。ケビンには商会の仕事を任せてきた。それとベルトラン様が念のためと護衛の騎士を付けてくれた。王都からラシェル侯爵邸は距離が近いので最初は断ったのだが、どうしてもと言われ仕方なくお願いすることにした。リオとノーラは最初から騎士の同行に賛成だったようだが。
道中は何の問題もなく王都を出て数時間後、無事に目的地である元ラシェル侯爵邸に着いた。侯爵邸の門の前には国から派遣されている騎士たちが警備のために立っている。私はその騎士たちに声をかけ、中へと入れてもらった。
「ここが元ラシェル侯爵邸か。ヴィーが三年間
過ごした場所…。ヴィーは平気か?」
「え?私は全然平気よ。まぁまたこうしてここに来るとは思っていなかったけどね」
リオはいまだに心配しているようだが私は本当に平気だ。特にこの場所に思い入れはない。むしろ今はここが金のなる木に見えているくらいだ。
「きっとお嬢様のことですから、この場所がお金に見えているのではありませんか?」
「さすがノーラ。正解よ。どうして分かったの?」
「うふふ。だってお嬢様の表情がお金を眺めている時と同じですもの」
「あらそうなの?さすがにそれは気をつけなくちゃね」
「俺が心配しすぎだったな」
「そうよ、リオは心配しすぎ。私はそんなに弱い女じゃないのよ?でも気持ちは嬉しいわ。どうもありがとう」
「…やっぱりヴィーには敵わないな」
「何か言った?」
「いや、なんでもない。それよりどうするんだ?工房は新たに建てるとして、屋敷はこのまま使うのか?それとも取り壊して別の建物を建てるのか?」
「そうね…。取り壊すのはお金が余計にかかるだけだから、私としては中だけ改装して従業員の寮にしたいと思っているの。どうかしら?」
取り壊して一から建て直すより、今ある屋敷のまま改装した方が安く済むはずだ。それにそちらの方が工房を早く稼働することができるだろう。
「俺もそれでいいと思うぞ」
「じゃあ決まりね。後はこの後業者を交えて相談しないと…って、あら?なんだか門の辺りが騒がしいわね」
「ん?ああ本当だな。何かあったのか確認してくるからヴィーはここで待っててくれ」
「分かったわ」
しかし確認に行ってからすでに十分経つがリオは戻ってこない。
(ただ確認するだけなのにどうしたのかしら?)
もしかしたら何か問題が起きたのかもしれない。それなら私が出て対処した方が早いかもしれないと思い門へと向かった。