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12 モーリス視点

 

 しかしそれからさらに二週間が経つ頃には確実に屋敷の状態が悪くなっていた。エリザに付けていた使用人もいつの間にかいなくなっており、エリザに文句を言われてしまったのだ。さすがにこのままにしておくわけにはいかないので、執務室にいるはずの家令の元へと向かった。

 そしてそこで執務室の状況を知り、使用人たちを罰しようと屋敷中を探すも全く見つからない。



(どうして誰も見つからないんだ?それに屋敷の中はこんなに静かだったか?)



 ふと屋敷が静かなことに気がついた俺は嫌な汗が背中を伝うのを感じた。なんだかこれは嫌な予感がする。



(いつからだ?一体いつから…)




 ――ガサッ



「っ!だ、誰だ!」


「あれ?侯爵様?こんなところでどうしたのですか?」



 物音がした場所から現れたのは子どもだった。どうして子どもがと思ってよく見てみると使用人の服を着ている。



「…お前は使用人なのか?」


「はい、そうです。ここは使用人たちの部屋しかありませんが誰かお探しですか?もうここには僕のお母さんと庭師のダン爺さんしかいませんよ?」


「なっ!そ、それは一体どういうことだ!使用人が三人しかいないだと…!?」


「お給金がもらえなくなるから次の仕事が見つかった人から辞めていきましたよ?僕とお母さんも明日には辞めます。ダン爺さんは息子さん夫婦が三日後に街に戻ってくるのでそれまではここにいるそうですよ」


「…給金が払えない?」


「あれ?侯爵様はご存じなかったんですか?侯爵様が爵位を継いですぐにお給金がもらえなくてみんな辞めるところだったんですよ。それを奥さ、元奥様が侯爵様の代わりにお給金を払ってくれたんです。僕にはよく分かりませんけどみんなが言ってました。『奥様が代理で仕事をしている』『奥様がいるからお給金がもらえるんだ』って」


「なん、だと…?」


「でも元奥様は出ていかれたので、みんなお給金がもらえなくなるからと辞めていきました」


「そんなはず……はっ!りょ、領主の仕事は家令がしていたはずだ!」


「家令ってマークさんのことですか?マークさんなら元奥様が出ていかれた次の日には辞めましたよ?」


「なっ!」


「というか一番初めに辞めていきましたね。辞める前に使用人たちを集めて言っていました。『私はただの使用人に過ぎないのに領主の仕事なんてできるわけない。先代の時はただ補佐をしていただけ。侯爵様は何も分かっていない。奥様がいたからラシェル侯爵家が何とか持ちこたえていたというのに…。みんなも辞めるなら早いうちに辞めた方が身のためだ』って」


「っ!なん、だと…」



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