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第8話 生存計画②

久しぶりの更新です。遅れてしまいました(*_ _)

流行りの夏風邪に罹ってしまって体調を崩していました。やっぱり病気にならないことが1番です。皆様も体調に気を付けてお過ごし下さい。

12人の男女が大公城の廊下を歩いていた。大公が待つ部屋まで案内されている。


「場所は知ってるから案内しなくても大丈夫なのだが···閣下は心配症なのか?そうは思はないか、グラハム」

「大公閣下は形式を重んじておいでなのです」


グラハムと言われた12の男女を案内している年季の入った男に女はそう問いかけた。


「我々は急用として呼ばれたが、何の用か知っているか?姉様が気に病むことじゃなかったら良いが」

「女たらしなのに、姉様には優しいのだな。これだから初恋を拗らせた男は」

「何だと!オリガ」

「まあまあ2人とも落ち着いて〜。確かに呼ばれた理由気になるわ〜。グラハム、私の為に教えてくれないかしら〜?」

「これはこれはロニア様。大変そそられるお誘いなのですが、申し訳ながら大公閣下が直接話すと仰られておりますゆえ」

「あらあら。釣られてくれないのね〜」

「振られたな。あの天下のロニア様も形無しか」

「ふん!私今本気出していないもの〜。本気を出したらねぇ貴方も知っているでしょ〜?カルロ」


ロニアと呼ばれた女は大胆にスリットの入ったドレスを着こなし、妖艶な表情を浮かべ体をゆっくり手でなぞった。カルロと呼ばれた男は嫌そうな表情をした。オリガと呼ばれた女は隣で腹を抱え笑っている。


「オリガちゃんの言う通り、ミーも気になるかな?急用で呼びだすなんて久しぶりだもん」

「そうですね。何か知りませんか?イザーク」

「何で俺に聞く。コルネリア」

「帝国の頭脳と言われる貴方なら、何か知っていると思いましたのに···知らなかったようですわね」

「はっ。帝国の頭脳か。皮肉を言う女は嫌われるぞ」

「ええ知っています。わざとですので」

「ねぇ本当に知らないの?ミーも気になっているのに。コルネリアちゃん、イザークちゃんに意地悪言わないでよ。帝国の頭脳って呼ばれるのイザークちゃん嫌っているのに」

「ごめんなさいね、フラン。イザークも許して欲しいわ。···それで教えて貰えないかしら?」

「まあ良い。許してやる。······何日か前にグレンが此処を訪れたらしい」


イザークは片目だけの丸眼鏡を目から外し拭きながら、何事もなかったかのようにそう告げた。グラハムを抜いた全員が驚愕の表情を浮かべた。


「グレンちゃんがここに来てたの?!」

「久しぶりに我が息子に会えるのか!」


一言目を切ったフランディーネに続いて、オリガは喜びの声をあげた。


「どういうことじゃ?わざわざ母親に会いに来るような、殊勝な男ではないしのぉ。何だって母親であるお主から逃げる為に、セシリア様について行ったような男じゃぞ」

「失礼だなハロルト。逃げたのではない。旅をさせているのだ。可愛い子には旅をさそよと言うであろう?」


長い三つ編みに束ねられた顎髭を触りながら、ハロルトと言われた男はオリガに言った。


「グレンがここに来るとは、何かあったのでしょうか?イザーク貴方は知っていますか?」

「ああ。気になって調べた」

「何じゃ?」

「ひと月ほど前に皇女が階段から落ちる事故があったらしい」

「らしいとはお前らしくないではないか。イザーク」

「情報が1つも入って来ないお前達には言われたくないがな。オリガ」

「確かに。貴方が断定出来ないなんて」

「気になる」

「珍しいね。ヴェルナーちゃんが話すなんて。ヴェルナーちゃんもミーと同じで気になるよね!」

「僕も気になるかな〜。グレンがここに来るぐらいだからさ、ただの事故じゃないってことだね」

「ああその通りだルキーニ。これは簡単な事故ではないと思っている。それも閣下が何か仰られるだろう」

「でも久しぶりにグレンに会えるだなんてね。さらに男前に磨きがかかっているだろうね」

「おい、何だその目は。(あたし)の息子なのだがな!セレスティノ、お前は男となれば誰にでも手を出しよって。見境というものを覚えろ」

「誰でもじゃないよ。そこを間違われては困るよ。美しい男が好きなだけだよ」


男とは思えないような見目麗しい容姿をした男は、興奮を目に宿していた。


「ガッハッハッ。お前らのような女系一族の中で、あれほど力を持った男とは興味を持たれても仕方あるまいでは無いか。この筋肉が戦いたがっているわい。ガッハッハッ」

「ガスベルちゃんはすぐに戦いたがるね。ミーも同じこと気になってたの。ねぇオリガちゃん。こういう場合は一族で独占するんじゃなくて、皆で共有するのはどうかな?」

「······賛成」

(わたくし)も賛成ですよ」

「私も賛成だよ」

「ほら!ヴェルナーちゃんもコルネリアちゃんもセレスティノちゃんもそう言ってるしさー」

(それがし)もグレンを解剖してみたいのだが駄目か?」

「解剖?!駄目に決まっているだろう。ベネディクトめ、大人しく研究室に閉じこもっていろ」

「ねぇオリガ〜。私もぉグレンが欲しいわ〜。ダメかしら?」

「これだからグレンはさっさと家を出たんだな」

「何だと?!カルロ。後で表にでろ」

「ケンカはお止め下さい。もう時期到着致しますゆえ」

「グラハムもそう言っています。喧嘩は止めなさい」

「相変わらず騒がしい」

「ガスベルちゃん!参加しようとしちゃダメだよ!」


カルロとオリガの喧嘩を止めたグラハムに同調するように、コルネリアとイザークとフランディーネが間に入り喧嘩を止めさせた。関係の無いガスベルも参加しようとしていた。そうこう騒いでいる内に部屋の前まで着いた。


「少々中が立て込んでいるようです。待機室の方でお待ち頂いても」

「いや。俺はここで待つ」

(わたくし)もカルロに賛成です。私達(わたくしたち)が待たされるとは、先程まで噂していた方が中に居るようですね」

(あたし)は息子に会いたいから、ここで待とうではないか」

「ミーもグレンちゃんに会いたいしね。ここで待つよ」

「俺もここで待とう」

「いやしかし」

「ガッハッハッ。グラハムよ、男なのだから小さいことを気にするな」

「···待つ」

「僕も皆が待つなら待とうかな」

「儂も待とうかのぉ」

「私もグレンに会いたいから、ここで待とうかな」

「私も待つわ〜」

「某も待つ」



* * *


12人の大公爵が大公邸に訪れる少し前に、グレンは数日ぶりに大公に会うために部屋を訪れていた。


「数日ぶりです。暗部を貸してくださりありがとうございます。お陰で有益な情報が手に入りました。さらにはレティーシャ様に土産を持ち帰ることができそうです」

「それは貸したかいがあった。ここ数日まともに寝ていないように見える。休憩して行かないか?」

「夫の言う通りです。もうすぐ夕方になります。一日だけでも泊まっていきませんか?もうすぐオリガも到着するようですよ」

「···申し訳ながら私が早くレティーシャ様の元に帰りたいのです。帰りは馬車を用意していますので、そこで睡眠を取ろうかと。あと個人的に母が来る前に退散したいのです」

「相変わらず苦手なのですね。分かりました。無理を押し付ける訳にはいけませんもの」

「グレンよ、そろそろレティーシャから何を調べよと言われていたのか教えてくれないか」

「はい。それはですね──────」




グレンはレティーシャから頼まれていた内容を、1から説明した。頼まれていた内容の裏取りが取れたことも伝えた。大公妃はあまりの驚きで、口を手で覆いながら目を見開いた。大公は呆れたように俯いた。



「以上が私が調べて分かったことです」

「まさかそんな事があっただなんて···」

「こちらでも引き続き調べておこう。レティーシャをどうか守ってやってくれ」

「レティーシャ様を守るのは当然の務めです」

「貴方が近くに居てくれて良かったわ。これからもレティーシャを支えてあげてちょうだい。宜しく頼むわね」

「はい、お任せ下さい。ではそろそろ失礼致します。見送りの方は結構ですので」

「気を付けてくれ。レティーシャにこの手紙を渡しておいてくれ」

「グレン宜しくお願いしますね。お気を付けて」


グレンは立ち上がり頭を二人に下げた。大公はグレンの肩をポンポンと触れると、懐から手紙を取り出しグレンに手渡した。グレンは受け取ると、上着の内ポケットに手紙をなおした。





* * *


12人は扉の前で、無駄話をしながら扉が開くのを待った。


「ねぇねぇイザークちゃん。気になったことがあるんだけど」

「また質問か?何だ言ってみろフランディーネ」

「グレンちゃんについて行った、芋虫みたいな女がいたでしょ?名前なんだったけな?忘れちゃったんだけど。あの芋虫はレティーシャ様のことを、ちゃんと見てなかったのかな?」

「あの腹に一物抱えてそうな女かのぉ」

「あの〜忌々しい女ね〜。セシリア様がついて来て欲しいって言った時は妹の看病があるので〜って断ったくせに〜、グレンがセシリア様について行くって言ったら〜私も行きますって言った女〜」

(あたし)のグレンに唾を付けようとした穢らわしい女のことだな。確か名前は···。特徴がないから忘れてしまったわ」

「貴方達は揃いも揃って記憶力がないですね。確かマリア、マリアベル·アイズという名前だったと(わたくし)は記憶していますよ」

「···合ってる」

「私も嫌いだったかな。これだから強い者に色目を使う、卑しい血を持つ人種が好きになれない」

「僕もあの女のこと嫌いだったな。セシリア様を笠にして偉そうに。まぁセシリア様は気付いていないようだったけどね。これだから下等種のことが嫌いなんだよ僕は」

「ルキーニそれはお前に限らず、某も嫌いだ。大公領·大公爵領(ここ)にいる人間は皆嫌っていると思うがな」

「我も弱さに縋る女は嫌いだ!」

「俺も気になっていたところだ。頼む。イザーク教えてくれ」

「カルロ、お前に頼まれなくても教えてやろうと思っていた。その芋虫女はいつもタイミング悪いようでな、グレンが遠征に行っている時に必ずと言っていいほど、妹が重篤になるようだ」

「!!待ってイザークちゃん。それってまさか」



全員が顔を見合わせた。イザークが発した言葉で全員が瞬時に理解したのだ。



「大公女である前に、俺の姪孫でもある。それをあの穢らわしい女風情が!」


カルロは忌々しそうに声を発し、壁に腕を叩き付けた。


「イザークの言う通り、これはただの事故ではないようだね」

「でもグレンちゃん、芋虫に引っ付かれても嫌がる素振りをしてるところ、ミー見たことないけどなー」

「もしかして〜グレンはあ〜ゆ〜女が好きなのかしら〜?だから〜セシリア様について行ったのかしら〜」

「僕はただオリガが嫌いなだけだと思うけどね」

「だがのぉ最近の子奴らは、昔と違ってのぉ禁欲的になってきたからのぉ」

(わたくし)もここ数百年で、急速に進んでいる気がしていました」



話をしていると扉が開いた。扉から出てきたのは、仮説していた通りの男だった。その男はこちらに頭を下げた。



「大公爵の皆様、お久しぶりで御座います。ご健勝のようで何よりです。では急いでいますので、これにて失礼致します」

「待て!母との感動の久しぶりの再会だぞ。すぐに立ち去るのは如何なものだと思うがな」

「···はい。ではお元気で。失礼致します」

「グレンちゃんに無視されてた方がマシだったね。オリガちゃんも諦めなよ」

「ガッハッハッ。グレンよ久しいな。久しぶりに一線を交えたいものよ」

「ええ。また時間があれば」


グレンは再度頭を下げ、足早にその場を去った。


「行ってしまいましたね。脳筋が話さなかったら皇女の事故について話を聞けたのに残念です」

「脳筋とは我のことか?」

「君以外に居るかい?それはそうとグレン愛想が良くなったね。帝都で世辞を学んだのかな?」

「ルキーニちゃんもそう思った?!敬語使えてたし、掛け合いもちゃんと出来てたよね!数年であそこまで人は変われるもんなんだね」

「ああ(あたし)グレン(むすこ)だからな」

「ますますモテそうね〜。格好良くて強いでも性格が難点だったのに〜、今は大人の男性になってるって皆が知ったら〜さらに人気が出そうね〜」

「誰にもやらんからな。あれは一族(あたしたち)の者だからな」

「だがのぉそうは言っても、本人の意思があるからのぉ」

「···そうだな」

「あの皆様、大公様がお待ちです。そろそろお入りください」


止めなければまだまだ喋り続けそうな気がしたので、グラハムは間を割って入室を促した。「はいはい」と言いながら、さっきとは違い12人は大人しく部屋に入っていった。グラハムは入室を見届けると、扉を閉めてため息をついた。グラハムはお茶の用意の指示を出しにその場から離れた。




* * *


12人の男女はグラハムに促され大人しく部屋に入った。


「急な呼び出しによく来てくれた。座ってくれ」


12人は挨拶は程々にして、大公に言われた通りにいつもの指定席に腰を下ろした。


「珍しく大公妃様もこの場にいらっしゃるようで。やはりイザークの予想通りで、例のレティーシャ様の件だと(わたくし)は推測しているのですが」

「姉上、お泣きになられたのですか?最近さらに体調が悪くなったと治癒士から聞きました。無理はならさず、部屋でお休み下さい」

「カルロ、いつも気にしてくれてありがとう。でもこの場に居ないと気が滅入るのです」

「大公妃様もそう言ってるからさ、カルロちゃん諦めなよ。それよりも呼び出しの件の方がミーは気になるかな」

「話の腰を折るな。邪魔するなら部屋を出て行け」

「なんだと!イザークもう一度言ってみろ!」


カルロは怒りのまま目の前の机を殴った。それでもイザークの態度は変わることはなく、「これだからアホは嫌いなんだ」と聞こえる大きさで愚痴った。さらにカルロは怒りに体を震わせた。手が出そうになった時、それまで沈黙を貫いていた大公が口を開いた。



「そろそろ良いか。これ以上騒ぐなら出て行ってもらう」


大きい声量ではなかった。なんなら呟くような小さな声量だった。だが一瞬にして部屋が静まり返った。皆の顔に緊張感が漂っている。張り詰めた空気の中、一言目を発したのは幼女の容姿をしたフランディーネだ。


「カルロちゃんもイザークちゃんも喧嘩したらダメだよ。イザークちゃんは煽らない。カルロちゃんも熱くならない。喧嘩よりミーは話を聞きたいかな」

「···聞きたい」

「若いもんは熱くなりすぎる。儂も昔は熱く滾るもんがあったわ」

「ガッハッハッ。我も話が終わったら、付き合ってやっても良いぞ」

「確かに喧嘩も見ていて面白いけど、私は呼び出された内容を早く聞きたいかな」

「僕が後で2人の喧嘩を見届けてあげるよ」

「大公さま〜。お話を〜聞かせて下さい〜」


1人目が話し出すと、次々に話をしだした。空気の重さをふっ飛ばしたかったのだろう。大公は「はぁ」とため息をつくと言葉を紡いだ。


「もうお前達の耳にも入っているだろうが、孫娘がレティーシャが階段から落ちるという事故があった」

「我が息子がここまでわざわざ来たのだから、ただの事故ではないんだろう?」

「ああ。オリガの言う通りだ。これは事故ではなく殺人未遂事件だ」

「···イザークちゃんの言ってた通りだね。でもさ嫌なこと言うけど、皇女様の勘違いとかない?だってよくウワサで、すぐ人に暴力を振るうとか聞くでしょう?だからこそ主観的な意見だけじゃなくて、客観的に見て判断しないと」

「ええ、(わたくし)もそう思います。1度詳しく調べてからでも、決断することは遅くないでしょう」

(それがし)もそう思う」

「お前達は他人だからそう言えるのだ。殺されかけたと言っているのに、ただ傍観しているだけとは。また事故が起きてもいいと思っているのか!」

「カルロ、そのすぐ熱くなる性格直しなよ。いい歳したおっさんのくせに、いつまでも若者のように···はぁ。あと僕達は傍観をするんじゃなくて、しっかり状況の把握をしようと言ってるんだ。勘違いしないでくれる?」

「何だと!?」

「私もしっかり調査をしてから対策を取った方が、後々問題が減ると思うよ」

「そうよね〜。普通の貴族なら良かったけど〜、レティーシャ様皇女様だからね〜」


出て来た意見は傍観的な意見ばかりだ。やはりレティーシャの皇女という地位が問題になっているようだった。何故なら皇室と大公大公爵の間には、不可侵条約というものが存在しているからだ。しかもよりによって少し前の皇帝の実母であるルティアの件でさらに厳しくなっていた為、今の均等を崩すのではないかと問題視していた。


「お前達は黙れ。閣下が我々に話している時点で、それ相応の証拠が存在していると俺は確信している。しかも閣下以外の直系はレティーシャ様しかいない。今は不可侵条約よりも、そっちの方を問題視するべきだ。お前達よく考えてみろ。大公家唯一の跡取りが、敵陣に居るのだぞ。いつでも体のいい人質になれる。レティーシャ様があそこにいる限り、我々は奴隷に等しい」

「その通りじゃのぉ。まだ人質ならええわい。殺されてしまったら取り返しがつかん。今は傍観している場合(とき)ではないと儂は思うがのぉ」

我が息子(グレン)が来た時点で、問題が小さくないことを表しているのではないか。だが私達(あたしたち)も証拠がなければ動けん。閣下そろそろ教えてくれないか」

「···聞く」

「我も今は動いた方が良い時だと、(この筋肉達が)が我に告げている」


イザークを筆頭に賛成派の意見が続く。反対派の者達も分かっていたのだ。レティーシャに何かあってからでは手遅れだと。だが確証がなければ、動いたとしてもさらに状況を悪化させるかもしれない。それだけではなく、無理難題を押し付けられるかもしれない。大義名分が必要なのだ。


「安心してもいい。証拠ならグレンが集めて来た。それと暗部の方にも調べさせている」

「もぉ、閣下ったらお人が悪いですわ〜。私達が悪役になる所でしたわ〜」

「その証拠とは大義名分になり得る証拠なのですか?もしかしたら私達(わたくしたち)の立場が悪くなってしまうことがあるでしょう。一応これでも一族の代表を務めているのです。もしもがあった場合は···」

「その心配の必要はない。まずレティーシャから届いた手紙を読む」



大公は懐から手紙を取り出し読み始めた。大公爵達は何も言わずに、手紙を読み終わるまで静かに聞いていた。手紙を読み終えると、皆が悩んだ素振りを見せていた。



「ごめんね、閣下。でもそれは皇女様の主観的な意見しか書かれていない手紙なんでしょう?ちゃんとーー」

「フランディーネ、お前は馬鹿なのか。証拠があるからこそ手紙を読んだのだ。お前達の話ばかりで話が先に進まないだろう。聞くことも覚えろ」

「イザークちゃん、分かったから。話し聞くからさ、そこまでプンプンしないでよ〜ねっ!」


それぞれ三者三様だ。少人数なのに賛成派と中立派と反対派が存在している。膠着状態だ。それなのに肝心の大公に話をさせていなかった。だが大公は無表情のまま、じっと前に座る12人を見据えていた。


「そろそろ話を進めようか。今回はそなたらの意見を聞くために呼んだのではない。そなたらの一族から1人ずつ、レティーシャの護衛として帝都に行ってもらうことにした。勘違いはするな。これは願いではなく命令だ」


数人が反論しようとすると、大公が封じるように重ねて言った。この会議は意見交換のためではなく、結果報告のために呼んだのだと12人は理解した。


「お前達の心配していることは分かっている。私も一緒に選ばれた護衛の者と帝都に向かう。そしてレティーシャにも会ってこようと思う」

「そうか、分かった。命令だと言うなら拝命した。ところで一族(あたしたち)から1人輩出したら、グレン(我が息子)は帰ってくるのか?」

「オリガよ、残念だがグレンは残ると言っていた。グレンが側で仕えているから、そなたの一族からは無理にとは言わん」

「どうしてだ、何でグレンが帰って来やん」

「そんなの答えは決まっています。貴方の所に帰ってきたくないからでしょう。そろそろ理解しても良いと思いますが」

「オリガ煩いよ。僕煩いの苦手なんだよね。命令だったら致し方ないね。1人選んでくるよ。選び方は挙手制で良い?僕も鬼じゃないからね。無理やり行かすのも気が引けるからね」

「ああ。それで構わん」

「閣下。年齢の方はどうすれば良いかな」

「確かにセレスティノちゃんの言う通りだね。一応同年代の子も居た方が良いのかな?ほら護衛って学園では別室で待機でしょう?表向きは平等を謳ってるからね」

「2人ぐらいで良いと思うがのぉ」

「···うん」

「俺の所から1人出そう。ちょうど同い年の子が居る」

「我らからも出したいが、同い年の子が居らん」

「あいにく僕の所でも居ないんだよね」

(わたくし)もです」

「ミーの所も1歳上なら居るんだけど、同い年の子いないな〜」

「私もよ〜」

「私の所には居ないかな」

「···居るよ」

「ではアポロンとウェヌスから、同い年の子を出して貰うことにしよう。宜しく頼む」

「ガッハッハッ。我らは大公に付き従うまでよ」

「決めちゃってるんだから、仕方ないじゃん?ミーの好きな料理用意しといてよね」

「では3日後、ここに連れてくるということにしましょう」



解散を告げると、12人は大公に挨拶をし、部屋から出て行った。行きとは異なり、12人は話をせずに城を後にした。





誤字脱字等ありましたら、報告の程宜しくお願い致します。また急に内容が変わることもありますがご了承ください。

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