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第2話 事件の真相

誤字脱字等発見されましたら、報告お願いします。

まだ書き方迷走中なのでご了承ください。

目を覚ますとショッキングピンクの天蓋が目に入った。昨日はとても疲れていたのだろうか。ぐっすり眠ってしまっま。昨日よりも疲れがマシになっている。だがショッキングピンクのせいで、体は休めることが出来たのに、目が疲れてきてしまった。

 

  (それにしても酷いわね。ベッドも毛布もシーツもピンク、壁紙もピンク、棚もピンク。部屋中見渡しても全てがピンクピンクピンク。逆にピンク以外の色がないわ。今着ているものまでピンクじゃない。こんなにピンクだらけだったら、ピンクが嫌いになりそうだわ)


はぁ〜と深いため息をついた。


さっき見渡した時もそうだったが、部屋に人が居なくて私一人だ。寝顔を見られるよりかはマシだが、この無駄にだだっ広い部屋では少し寂しく感じてしまう。

前世と言うべきなのか、私三条恋詠(さんじょうこよみ)の家の部屋も広かったがやはりその比ではない。


  (やっぱり皇女っていうだけあってお金持ちなのね。学校の教室何個分かしら?こんなピンクだらけの部屋じゃ、結局は場所の無駄よね)


部屋だけでなくベッドまで大きい。ベッドから降りるのでも一苦労だ。カーテンで直接見えないが、隙間から入る木漏れ日で夜ではないことを告げていた。


時間を掛けながらベッドから降りるとカーテンをめくった。


目に飛び込んできた光景に驚いた。見渡す限り壮大な庭園だった。木々がしっかりと剪定(せんてい)されており、花が植えられている。各ブロックで咲いている花の種類が違うようだ。

道の両端には側溝があり水が流れている。その先に見えるのは巨大な噴水だ。噴水の真ん中には大きなガセボある。フランスの某城の庭園よりも豪華だと思った。


  (あそこでお茶を飲んでお菓子を食べてゆっくり出来たら最高ね。いつかしてみたいな)


お菓子のことを考えたからなのか、それともここ最近ご飯を食べていなかったせいなのか盛大な音を立ててグゥーと腹の虫がなった。外の景色を見るのをやめ、侍女の人を探しに行くことにした。




この部屋には外の廊下に繋がっているであろう扉だけでなく何個も扉があった。ちょっと気になり扉を開けてみることにした。

開けてみるとそこはドレスルームだった。私が寝室にしている?部屋よりも広くドレスがひしめき合っている。最悪なのはそのドレス全てがピンクだったことだ。驚きで声が出なかった。聞こえたのは私の喉の空気を飲む音だけだった。


  (······ここまで来るともう病気じゃん。この世界には精神科という物はあるのかな?う〜ん。それとも皇女様は自分を見てもらいたかったのかしら?)



そんなことを考えていると急に目の奥がツーンとした。

心がザワザワしてきて目から涙が溢れていた。私の考えとは裏腹に体が言うことを効かない。本来の持ち主である皇女の気持ちが関係しているのかもしれない。

侍女や侍従達は置いといて、皇帝は皇女を愛しているように見えた。しかし実際には皇帝にも階段下で倒れていることを気付いて貰えなかった。


  (可哀想に。家族から愛されていなかったのね。でも大丈夫よ。私が私をこれから愛してあげるわ)



心がふっと軽くなった気がした。予想していた通り本来の皇女の気持ちが関係しているようだった。やっぱり勘違いじゃなかった。


  (じゃあ起きた後、抱きしめられた時に感じた気持ちもあなただったのね)



さっきから思っていたことがある。扉が異様に開けにくと。扉が高い。それとも自分が縮んでいるのか。寝室に姿見らしき物が置かれていたので見に行った。

 

「······えっ?私可愛すぎない?!」


あまりの可愛さに思わず声が出た。腰まである白銀の髪。髪色と同じ長いまつ毛。目は大きくてぱっちり二重で瞳は金色だ。肌は雪のように白く、シミひとつない。

そう、まるで妖精だ。案の定想像していた通り背は小さかった。子供だからだろう。それなのに可愛くて美しい。そこには圧倒的な美が映し出されていた。


「多分子供だと思うけど、子供でこれとは将来有望じゃない?あのイケメン皇帝から生まれた子だから可愛いと思ったけど、これは絶世と美少女ね。綺麗すぎる」


  顔のパーツも配置場所も完璧で文句の付けようがない。お腹が空いていることを忘れ、姿見に映る自分を見つめ続けた。


「髪は皇帝の髪色じゃないからお母さんかな?目の色は皇帝にそっくりね。見れば見るほど美しいわ。自分に惚れてしまいそうだわ」


(この容姿だし甘えたらイチコロだと思うけど。階段下で倒れている所を無視されるぐらい嫌われているなんて、一体何をしたのかしら?)



泣く泣く姿見から離れ廊下に繋がっている扉に行った。ドレスルームの扉よりも大きい。模様も精密で所々に宝石が埋め込まれていた。宝石の色は想像通りピンクだ。


さっきのよりも重く開けるのに時間が掛かった。外に人が居るのか確認するために、こっそり隙間から覗いた。


(あれ?誰もいないけど。私は皇女なのに騎士すら立っていないだなんておかしい。まあ取り敢えず人から探そうかな)



部屋から外に出て人探しの旅に出た。人が居ないと食料にありつけない。庭園も然ることながらこの皇女宮と呼ばれている所も広い。廊下も豪華な造りだ。

まあ廊下は部屋とは違い落ち着いていて、私は部屋に居るより廊下の方が落ち着いた。


(わたしはやっぱり部屋ぐらいは落ち着いている方がいいかも。ついでに部屋のリフォームも皇帝にお願いしましょ)



数分歩くことまだ人を見つけることが出来ない。

体が小さいのもあるが、宮があまりにも広すぎるのだ。病み上がりという事もあり体が疲れてきた。それでもお腹が空くので一生懸命歩いた。


歩き続けていると開けた場所が見えてきた。到着した場所はエントランスのようだ。この宮は三階建てで、三階から一階まで階段が吹き抜けで繋がっている。お城にある様な大きな階段は圧巻だ。私の感想とは裏腹に体がドンっと重くなった。


(このエントランスが(くだん)の事故現場の場所ね。ここで倒れてたのに発見されなかっただなんて······。何か証拠とか残ってないかな?)



  重くなった体に鞭をうち、探しながら一段ずつ階段を降りて行った。結果何も落ちていなかった。少し残念に思いながらも、階段下で寝そべってみることにした。何か違った見え方があるかもしれない。寝そべって階段を見てみた。



急に頭に映像が流れ込んできて痛い。

たぶんこれは事件の日なのだろうか?意識が次第に遠のいて行った。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


***事件の日***


皇女が寝室から出てきて廊下を歩いていた。

さっき私が通った廊下だ。私は幽体離脱をした様な感じで、皇女には私の姿が見えていない。

今日と同じようにここには誰も居なかった。よく見ると皇女の顔が曇っていた。


  「ご飯探しに行こ。マリアが居なかったらご飯食べれない。マリア助けて、1人寂しいよ」


皇女は目に涙を浮かべて目を擦りながら、1人でトボトボと歩いていた。


(皇女にも何かしらの原因があるかもしれないけど、ここまで来たら虐待の域に達しているわ。マリアってあの毛布を掛けてくれた優しそうな人ね。マリアが居なくなって、ご飯を食べることが出来なかったのね)


私は前世でこんな体験をしたことが無い。私は家族に恵まれていたのだと改めて実感した。仲の良い家族達。今頃父母兄は何をしているのだろうか。


物思いに耽っていると例のエントランスに出た。一階に降り右に進んで行くと扉が並んでいた。その中の一つを開けて皇女は中に入った。

中は調理室のようだ。皇女はリンゴを1つ取り外に出た。リンゴを齧り付いて食べている。よっぽどお腹を空いていたようだ。



皇女は食べ終えるとエントランスに戻った。エントランスにある庭園に続いている豪華で大きい扉を開けた。

開けたら暖かな風が入ってきた。外に出ると先程窓から見た光景が広がっていた。もはや庭園の規模ではない。一種の公園だ。橋が掛かっていたり、薔薇のアーチもある。あっちにはガラスの温室らしい建物もある。凄すぎるの一言に尽きる。だからこそ1人で外に出て歩いている皇女を見るとあまりにもちっぽけで可哀想だった。




  歩いていると、初めて人を見つけた。庭園を掃除している3人の侍女のようだ。皇女は物陰に隠れると話を盗み聞いた。


「私の陛下がお仕事で他国に行かれているなんて寂しいわ」

「あんたの陛下じゃないでしょ。現実を見たらどうなの?」

「夢を持つぐらい良いじゃない?私もこんな宮殿に住んでみたいわ。こんな出来損ないの皇女よりも陛下付きの侍女になりたいわ〜」

「あと2日ぐらいしたら帰って来られるでしょ。ーーーまあそれは置いといてあの噂聞いた?」

「私聞いたわ!」

「何の話?」

「私も今朝聞いたばかり何だけど、閉鎖された出入り禁止の後宮があるでしょ?そこにもう1人の皇女が居るらしいの。陛下もその皇女を気にかけていて、他国に行かれる前に会いに行ったそうなの。皇帝直属の侍女の1人に聞いたから本当よ!」

「って事はそっちの皇女配属になったら、陛下がよく訪れるってことよね。チャンスかも!」

「しかも皇族の目を持っていたらしいわ。現在後宮から学園に通われているそうよ。何人か侍女がついていて、護衛もついているようだし、こっちの皇女よりも陛下の寵愛が強いって言ってたわ」

「じゃあ本物で間違いないじゃない?!じゃあこっちの皇女はどうなるの?」

「どっちみち私達には関係ないことでしょう。私達が皇帝陛下の目に留まることなんか来る日は来ないわ。さっさと仕事に戻りましょう。ほら早く。こんなんじゃ何時まで経っても終わらないわ。ちゃんとほうき持って」

「もう、ミーシャは真面目なんだから。掃除しなくてもバレないじゃない」

「そうよ。そうよ。こんな所誰も来ないんだから」

「侍女長達がちゃんと出来ているか、抜き打ちで調査しているみたいよ。ちゃんと出来ていなかったり手を抜いたりしてたら、点数を引かれて昇給出来ないようだし、ボーナスも減らされるみたい。だからちゃんとやりましょう」

「げっ!そうなの!今からちゃんとやるわ!じゃあ行ってくるから」

「私もしてくるから。また後でね」

「はぁ。あの子達も馬鹿ね。物の本質が分からないだなんて」


ミーシャと呼ばれていた侍女がその場から離れた。次の持ち場に行くようだ。


侍女達が離れた隙に皇女はまた歩き始めた。可哀想な後ろ姿を見て、皇女から見えることはないけど、せめて自分だけは一緒に居ようと思い隣を歩いた。


  (皇女が2人居るのね。この反応はこの子は全くもって知らなかったようね。あの大きなお城を目指しているのかしら?)


皇女は歩みを進め、やっと大きなお城に到着した。

裏から城内に入り裏口の階段を上がっていく。登り続けある階に到着した。その階を進んで行くと1つの部屋の前に辿り着いた。皇女はその扉をゆっくり開けた。


中は広く父親の仕事部屋みたいだ。真ん中に大きな机が置いてあり、そこで会議とかしそうな雰囲気だ。部屋の3面には3階建て分ぐらいの本棚があり、本が大量に置かれている。木が所々で使われている部屋は、私がここで見たどの部屋よりも落ち着きがあった。


皇女は窓際付近の机に近付いた。


  (もしかしてここは皇帝の書斎かしら?まあまあ私と趣味が合うわね。でももっと木が使われている方が落ち着くけど)


皇女は机で何かを探しているようだ。机に無造作に置かれていた1つの重厚そうなバインダーを見つけた。


そのバインダーの中身を見て、激しく動揺しているようだった。

私は何の紙か気になり見に行った。その紙にはこう書かれていた。



 --調査報告書--

 ソフィーア・セイ・セルド(ソフィーア・セイ・レイヒム)

 現在8歳。セルド子爵の養女。

 母親はクリオネ・セイ・レイヒム元準男爵令嬢(享年17)

 皇帝が皇太子時代に交際していた女性。12歳で妊娠し学園を自主退学。皇太子の子だと実家の者に言ったが、認められることなく家から破門。以後娼館で働いていた。そこで娘を出産。死亡原因梅毒。

 娘は薄い黄金眼(きんがん)を持ち、魔力を持っている。現在は髪と目の色を変えて生活している。4歳の時にクリオネがセルド子爵家に預けた―――――――――――――――


(顔の絵まであるのね。この世界には写真がないと······)


何枚にも渡る調査報告書を見ていた皇女は泣いていた。あんなに泣くことが我慢していた子が涙を流している。


(もしかしてさっき話されていたもう1人の皇女ってこの子なの?一体何歳で子供を産ませているのよ。という事は皇帝は子供に手を出して妊娠させたロリコンってこと?うわ、やばいわこれ)


恋詠(こよみ)の中で皇帝の評価が数段下がった。イケメンだが、ロリコンと新たに情報を乗せた。


  「お父様はお母様のこと好きじゃなかったのかな?私っていらない子なの??お母様会いたいよ、迎えに来てよ······」


そういえば、この世界に来てから1度も母親らしき人物を見ていない。皇女の母親は亡くなっているのかもしれしれない。


(なおさら父親がロリコンだなんて最悪ね。初めて知った腹違いの姉妹が居るってだけでジェラシーなのに······)



皇女はバインダーを元に戻し、早足で部屋を出て行った。

さっき来た道を戻り外に出た。さらに奥に進んで行った。私は急いで後を追った。結構な時間を歩いた。とにかく広すぎるだ。誰からの立ち入りを許さないような重厚な塀が見えてきた。


皇女は塀沿いに歩いて行った。小さな子供1人がギリギリ通れるような穴が空いており、そこから塀の中に入った。




本来なら誰もいるはずのない場所から、遠いが話し声が聞こえてきた。



「皇女様、陛下からの贈り物の紅茶飲まれますか?」

「ええ、頂きたいわ。そうだわ、ティナ一緒にティータイムしましょう」

「私如きが皇女様とご一緒するだなんて不敬です」

「ティナは私のお友達よ?1人でケーキを食べるのは寂しいわ。いつもはお父様と一緒に食べるのだけれど······」

「ではお言葉に甘えさせて頂きます。ですがここ以外の場所で、陛下をお父様とは言ってはいけませんよ。まだ正式に紹介されておりませんので」

「はいはい、分かってるわ。今はお茶を楽しみましょう」



皇女は木の影から見ていた。あれが例の皇女のソフィーアで間違いないだろう。顔は凄く可愛いと思う。私の世界に居たら、モデルやアイドルになれるような顔だ。

だが私は私を知ってしまっている。


(やっぱり皇女の方が可愛いわね。これ負ける気しないわ)


皇女が綺麗なのは勿論だが、皇帝の顔を神官の顔を見たあとでは少しいやだいぶ物足りなく感じた。

皇女は話の内容を聞き、余計に顔を曇らせた。


「私お父様とお茶なんかしたことないのに······」


ボソッと呟かれた声が耳に届いた。

ああ本当に最悪な父親だ。私が居たら抱きしめてあげられるのにお茶もしてあげられるのに。とても悲しい気持ちになった。



  皇女はそっとその場を後にした。来た時とは違いその背中が小さく見えた。

その時だった。


"パキッ"


皇女とが木の枝を踏んでしまったのだ。

やはり元々人が住んでいなかった場所なのと隠されているせいで、そこまで手入れが行き届いていなかったようだ。

皇女は急ぎその場から走って逃げた。


「何か音がしたわね。ティナ見に行ってきてくれる?」

「はい!不審者かもしれませんので、この場から動かないでください。そこの侍女と護衛、皇女様をお守りせよ」



皇女はただひたすら走っていた。

いつのまにか私が気付いた頃には、皇女宮に辿り着いていた。皇女はエントランスの階段をかけ登った。そして最上段を登り終えた。衝撃と動揺と走ったせいで呼吸が乱れていた。

皇女は部屋に戻ろうとした。


  "ドン"


「あっ、」


皇女の頭に衝撃が走った。それを意識する間もなく皇女の体は階段を転がり落ちて行った。

下まで落ちた皇女の頭から血を流れていた。仰向けで横たわっており、体のあちこちに傷が出来ていた。すでに意識が朦朧としている。


すると階段から侍女が降りてきた。例の皇女に仕えていたティナという侍女だ。手には血が付着した物体が握られていた。


「まだ生きているんですか?母親と同じで悪運だけはあるんですね。ソフィーア皇女様から居場所を奪った挙句、こんな良い場所に住んでるだなんてずるいと思いませんか?」


皇女は声を発することが出来ない。体からどんどん血が外に流れていっている。


「出来損ないのくせに、母親と同じく卑しいわ。さっさといなくなれ」


そう女は言い残しこの場から去った。



「ねえ!大丈夫?!どうすればいいの?目を覚まして!目を瞑ったらダメよ!!」


私は周りの人には見えない。つまり皇女も私の姿が見えない。そんな私は助けを呼ぶことが出来ないのだ。でも何もせずにはいられなかった。

焦っていると、急に強い力で手を握られた。


「えっ?!あなた見えるの?!」

「おねぇ、ちゃ、んっおねがぃがある、の······さいっ、ごの、おねがいっ」


皇女は息も絶え絶えになっている。握られている手が冷たくなってきている。打ち所が悪かったのであろう。もうこの子は助からないと、分かりたくもないのに分かってしまった。


「最後とか言わないで!頑張って頑張ってよ!」

「もう、だめ、だよっ、、、たすっ、からっない、よ」

「でもでも何か方法があるかも!待ってて!」

「行かっないで!おねっ、がい!」


最後の力を振り絞って出た声のようだ。必死に私をここに引き留めようとした。


「分かった!どこにも行かないわ。あなたのそばにいるから大丈夫よ······」

「ありっ、が、と」


さっきよりも呼吸が乱れている。血色が体から消えていき白くなってきた。


「わたっ、しじゃ、っかて、ないっ。あなっ、た、がかっわり、にっわた、し、を、たっ、すけ、て、、やくっそ、く」

「あなたを助ければいいのね!約束するわ」

「か、っわり、に、わたっ、しを、あっげ、るねっ」


皇女は笑った。とても晴れやかな笑顔だった。ただ私は手を握り続けることしか出来なかった。それでも皇女は嬉しそうだった。


「よ、っろ、しくっ、、ね······」

「うん任せて!あなたを必ず助けるから!だから安心してお母さんに会っておいで!」


最後は声になっていなかった。でもありがとうと聞こえた。手から力が抜けていき、目からも光が消えていった。私はそれでも手を握り続けた。


「私があなたの代わりに生きさせて貰うね。ゆっくり休んでね。おやすみなさい」


 

とうとう手から完全に力が抜け落ちた。苦しかったと思うし、痛かったと思うのに最後は笑っていた。作られた笑顔でもなく自然な笑顔だ。私は動かなくなったレティーシャを見て誓った。必ず復讐してやると。


私の体が光の粒子のようになり皇女の体に入った。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「皇女様、皇女様大丈夫ですか?!」


声が聞こえたのを皮切りに意識が覚醒した。


(今の夢?夢にしてはリアルだったけど)


1つだけ変わったことがある。もうエントランスを見ても何にも思わないのだ。

あの子は本当の意味で死んでしまったのだと確信した。


「マリアどうしたの?」

「どうしたもこうしたもないですよ!またお怪我をされたのかと思い、心臓が止まりそうだったんですよ!」

「ごめんね······。もしかしたら何か分かるかなと思って」

「そうですか······。あまり無理はなさらないで下さいね。もう日が沈みます。お風邪を召されないように一緒にお部屋に行きましょう」

「うん!」

 

マリアが私を起こした後、ギュッと抱きしめてくれた。本当に心配してくれていたようだ。少し申し訳ない。


「ねぇマリア手繋いでいい?」

「はい!手を繋いで参りましょう」


マリアの手は温かかった。

皇女はマリアのことを信頼していたようだが、これからは生きて行くために見極めていかなければならない。傍に居る人も疑わなくては。


「皇女様、記憶を取り戻されたのですか?私の名前がお分かりになったようなので」

「皆がマリアって言ってたからそうかなって。本名はマリアベルでしょ!私の喉を治してくれた人はノエルでしょ!でも他の人は分からないけどね」


子供っぽくイタズラ顔で笑い、キラキラした瞳でマリアを見た。


「覚えて下さって嬉しいです!ノエル様も喜ばれると思いますよ。他の方はそこまで覚えていなくて大丈夫ですよ。陛下が皇女宮の侍従を総入れ替えなされたので、忘れていても何も問題は無いので大丈夫ですよ。明日から新しい者達が皇女宮に仕えるので、明日からまた騒がしくなると思いますが、今までの様なことは無いとお約束いたします」

「総入れ替えって?」

「はい。陛下はとても皇女様を愛していらっしゃいまして、今回の事件の責任として、ここで仕えていた者は皆紹介状なしで辞めさせたそうですよ」

「そうなの。紹介状がないとダメなの?」

「なくても大丈夫ですが、次の仕事が決まりにくいですね。紹介状が貰えない(イコール)辞めさせられたとなってしまうので、もう侍女や侍従としては働けないと思います。ですが皇女様がされたことを考えたら軽い罰です。本来なら不敬罪が適用されるので今頃全員死刑でした」

「そう」

 

侍女にとって言わば生命線を絶たれたような物だから、結構厳しめの罰を与えたと思った。しかし本来の刑からは、どう考えても軽すぎる。目覚めたあと私の様子を見に来た皇帝からは確かに愛を感じた。だからこそおかしい。


(詳しく調べてみる必要があるわね。まずは私と周辺のことから着々と······そしてあのソフィーアという女の事も)


「ねぇマリアお願いがあるの。私の事教えて欲しいの。忘れてたら何かと不便だから」

「はい!私が知ってることなら何でもお教えしますよ。ですが、お教えするのは明日からです。無理は禁物です。まだご体調が回復されておられないので、まずお風呂に入ってください。その間に夕食をお作り致します」

「うん。分かったわ。いつも気付かってくれてありがとう」

「当然です!皇女様の今は亡きお母様に任されましたので」

「お母様?やっぱり亡くなっていらしたのね······お母様の事も教えてね」

「はい!」


沢山マリアと話をした。

行きはあんなに長く感じた廊下も、話をしているとあっという間に感じた。今日は色々なことがあり、実際に体が疲れていた。収穫があったから良しとしよう。




お風呂の用意をしてもらい脱衣室に向かった。

予想通り物凄く豪華だった。どこかの厳かな神殿の様な作りのような風呂だ。だが今日は驚き疲れてしまっている。この城でこのぐらいは普通なのだ。慣れるしかない。

しかも体を洗ってもらわないといけない。日本人として今まで生きてきたからか、カルチャーショックが否めない。そうこれも慣れるしかない。慣れるしかないのだ。


(洗われるのも嫌だけど、もっと残念なのはこんなに豪華なのに浴槽がないことね。湯船に浸かれないから体の疲れがとれないわ。ここは日本よりもヨーロッパに近そうな感じね)



マリアに寝巻きを着せてもらい脱衣室から出た。

正直に言うと物凄く恥ずかしかった。顔に出さなかったことを褒めてもらいたい。用意されていたお粥的なものを食した。味が薄い。お世辞でも美味しいと言えなかった。


食べ終えベッドに寝転んだ。


「皇女様食器をお下げ致しますね。もう寝られるようでしたらライトを消しますが如何致しますか?」

「うん、お願い。今日はありがとう」

「いえいえ。何かございましたら、ベッド脇のサイドテーブルのボタンを押して下さい」

「分かった。お休みなさい」

「お休み下さい。では失礼致します」


マリアがサイドテーブルのナイトランプをつけて、ライトを消して部屋を出て行った。


(子供の体だから疲れるのかな?明日から詳しくこの世界について調べましょう)


目を瞑ると次第に睡魔が襲ってきた。私は大人しく睡魔に身を委ねることにした。

 


 





前と設定が変わりました。難しかったので年齢の設定をなくしました。

成長が早い遅いはありますが、日本と変わりません。

(例)

5歳→5歳の体の大きさ

10歳→10歳の体の大きさ

13歳→13歳の体の大きさ


的な感じです。この世界の設定は身長が高い人が多い設定なので、そのまま日本と同じということになりませんが、これで行こうと思います。ご迷惑をおかけしますが、宜しくお願いします。

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