第10話 皇帝との謁見
マリア達を追い出してから数日が経過していた。心のどこかで見殺しにしてしまった罪悪感が心に積もっていた。だがマリア達が居なくなったことで、安全になったのも事実だ。
マリアを追い出した後さらに調べたら、マリアがレティーシャの行動を報告していたことが分かった。この世界に来て初めて優しくしてくれた人だったから、ショックが2倍に膨れ上がった。そんな人を嫌いになりたくはないが、調べ尽くさないと殺されるのは自分の方だ。
完全に割り切る事は出来ないが、マリアが生きていることをただただ願うばかりだ。
「レティーシャ様、今日目的の物が到着するようですよ。閣下から昼頃に到着すると連絡がありました」
「予想していたのより早く用意してくれたのね」
私は執務室の窓から、広大な庭園を覗いていた。そこには仕事もせず、遊び呆けている侍従達が居た。だが真面目にしている者も居る。
皇帝が用意してくれた侍従達だが所詮は寄せ集めなのか、はっきり言うと仕事がまともに出来ない者がほとんどだった。大量解雇したため、大量雇用したようだ。仕事が出来ない者が多いのは、雇用試験を手抜きでしたからだろう。
この前と違う所はほぼ全員貴族だという所だ。前の時は大半は平民だったが、今回は下級貴族が多い。ちらほら伯爵位以上の令嬢も存在している。
下級貴族ならまだ分かるが、どうして高位貴族に位置してくる人が皇宮に働きに来るのか。それは至って簡単明瞭だ。家のコネ作り、将来のコネ作りのためである。ネームバリューが良いらしい。皇宮に出仕した人だけが参加出来るパーティやお茶会もあるようだ。
実際幼い時から婚約していても、学園を卒業してすぐに結婚する訳では無い。空白の数年が存在している。その間に皇宮で出仕することで、自分の名を上げているのだ。同じ伯爵令嬢でも嫁にする場合、皇宮に出仕していた方が格が数段上がる。そのために婚約者が出仕を進める場合もあるのだとか。今までお嬢様をしてきたのに、急に働けといわれても出来ないのが当たり前だ。下手に貴族としてのプライドがあるため平民よりタチが悪い。
まあ名を上げるためだけに、働きに来ているような人達ばかりではない。彼女達の中には皇帝にお手付きになって、側室や今空いている皇后の席に座りたいと思っている者も多くいる。皇帝のお手付きになると、婚約者が居ても名誉なことになるので正当な理由で婚約を破棄できる。
婚約者側は嫌では無いのかと疑問に思うかもしれない。だが婚約者が側室になれば、何かと優遇してもらえる。それで昔大金を手にした貴族が居たようだ。
彼女達は仕事をサボっているのに、身だしなみは整えていたりお化粧もしっかりしている。まるで遊びに来ているみたいだ。
「注意しますか?」
「気にしなくていいよ。楽しめるのも今のうちだけなんだもん。それよりもマリアが抜けて空いた侍女長の席を早くうめてしまおっか。まだマリアがやめたこと噂になってないよね?」
グレンには正体がバレたので、レティーシャ風に取り繕う必要が無いから楽だ。逆にバレて良かったのかもしれない。気を抜くことが出来ないと、いつかパンクしていたかもしれないから早々にバレて良かった。グレンにも気軽に接して欲しいとお願いしたから、グレンも普段口調に近付けたようだ。まあまだお堅いが。
「はい。裏から追い出しましたので。あと漏らしたら命はないと口止めしております。――――侍女長ですか。であれば皇宮に精通している者が侍女長になるべきですね。後釜を誰にするか、もう決めてるんですか?」
「うん、相応しい人が1人居るの」
「閣下が連れて来られた人の中でですか?」
「人の顔色を伺わないといけない立場に、私を守りに来てくれる人を置くわけがないわ」
「確かに。頭を下げたりとか無理そうですね。俺も戸惑いましたし」
グレンは苦笑いをした。大公爵家で生まれ育った人物に、下の階級の人間に頭を下げろって言うのは酷だ。グレンも経験したことなのだろう。
大公思ったより仕事早いんだな。前に手紙で頼んだ、期限まで守ってくれる人をもう連れてきてくれるなんて有難い。今はなりを潜めているかもしれないが、そろそろ動き出し始めるだろう。その前に味方が増えることは良い事だ。
周りを味方で固めたいが正直新入り達には無理だろう。大公家に配属している騎士団の1人か、出来れば数人来てくれるものだと勝手に思っていたが、グレン曰く大公爵家の人が来てくれるらしい。
元々セシリアの時でもそうだったように、誕生時に満15歳を超えている大公爵家の人間を1人ずつ護衛として大公爵家から出すことが決まりになっているらしい。ちなみに私は初耳だった。
セシリアにはグレンだけだと勝手に思っていたが、結婚するために皇宮に上がる前まではグレンを含め12人が護衛に就いていたようだ。
どうして私には大公爵家の人達が就いていなかったのか。それは父である皇帝が大公からの提案を拒否し、レティーシャに関わることを認めなかったからだ。
大公は皇帝に「大公家の嫡流を受け継ぐ者には、大公爵家から輩出された護衛を就けるという決まりがある」と訴えたそうだが、皇帝は話すら聞こうともせず「皇女は大公家の人間ではない。皇族である。皇族なのに大公家の決まりに従う必要は無い」ときっぱり跳ね除けたとグレンから聞いた。
おい皇帝何しとんじゃ〜い。頭のなかで皇帝の憎らしいほどイケメンの顔を殴った。
(提案を跳ね除けた割にちゃんと守れてないんですけど。いやもはや貴方の実の娘亡くなってるんですけど)
まあそれは置いといて。つまり私には合法的に守ってくれる人を置けるということだ。お願いしなくても元々用意されていた。しかし手紙で聞かないと分からなかったことだ。実家にパイプあるってラッキー。机に肘を置き、顎に手を置いていた時ふと疑問に思った。
「でもさグレン。皇帝が大公の提案を跳ね除けたんでしょ?じゃあ今でも跳ね除けられるんじゃ?そうなったら私の計画パァじゃない?」
「今回は問題ないと思いますよ」
「何で?」
「大義名分があるじゃないですか。閣下の提案を断ったのだって、「皇女は皇族である。皇族を守るのは近衛騎士団の役目だ」って自分達で護れると言ったからですよ?でも事件性があるにしろないにしろ、レティーシャ様を護れなかったのは事実でしょう。だから問題ないと思いますよ。そのために俺に帰ってくる時に噂を流させたんでしょう?」
グレンは悪意のある皇帝のモノマネをしながら何ともない風に言い切った。皇宮で皇女が怪我をしたことについて箝口令がひかれていたのか、皇女がコップを投げ捨てたとか情報はすぐ回るのに巷で噂1つたたなかった。だからグレンに噂を流すように頼んでいたのだ。
よし、大公様頑張ってくれ!グレンと大公を信じることにした。
「これであの仕事が出来ない子達とおさらばできるね。今まで長かったわー」
「おっさんみたいなため息をつかないでくださいよ。ここでも演じておかないといつかボロを出しますよ」
「はいはーい」
この短期間でグレンと相当打ち解ちとけることが出来た。無駄口にも付き合ってくれるようになったし。友だちみたいで何か嬉しい。
「グレン喉渇いた〜。お茶入れて〜」
「はいはい。用意してきますから、お利口にしてここに居てくださいね。1人でどこかに行かないように」
「はいは〜い」
グレンがお茶の用意をしに部屋の外に出た。また私は窓の外を見た。前は大半平民だったが、今回雇用されたのは貴族。あの男のやりそうなことだ。貴族の中に手下の者を潜ませ、逐一報告させているのだろう。
でもあの男も焦っているようだ。平民とは違いやはり貴族は腐っても貴族だ。貴族がこぞって殺されたり死んだら流石に目に付く。今まで通りに感染症疑惑で押し通したとしても、働き先が皇宮であるため非難が避けられない。そんな事態にはなりたくないはず。
平民の方がよくあることにしやすく、扱いにくいがその分殺しやすい。貴族は扱いやすいが殺しにくい。
「皆感謝してね。命を助けてあげるんだから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは皇帝に謁見するための部屋である玉座の間の簡易版だ。本殿は皇族の冠婚葬祭や式典、誕生祭や戴冠式等を行う部屋である。帝国の権力や権威を表すために、分かりやすく豪華絢爛に造られている。ふんだんに黄金や宝石で纏ったこの間は、初代皇帝が時間をかけ凝って造らせたと後世に残っている。
当時この広さの間を作ることに反対意見の方が多かったと記述が残っている。理由はここまで広くなくてもいいやら、金の無駄遣いやらetc。だが初代皇帝は良くも悪くもワンマンだったようで、反対意見を無視して自分の考えを押し通し続けた。
必要ない広さと言われたその間は、貴族達が増えた現在では非常に重宝されている存在になった。結果的にこれぐらいの広さは必要だったと、初代皇帝には先見の明があったと今では言われている。
初代皇帝が押し進めたことは、決して悪い面ばかりではなかった。その分雇用が生まれたり、住むためだけの機能のある家というだけでなく、オシャレで目でも楽しむといった様式文化や庭園文化といったものが多数創られた、そのおかげで帝国の文明が進んだと本に書いてあった。
しかし様式文化が書かれた本など国宝級の本が置かれていた大図書館が火災で焼失し、衰退の一歩をたどっているのが現状だ。
玉座の間は正直普段使いしにくい。そのため周りに小規模な簡易版の玉座の間兼宴会会場を後の皇帝が造った。まあそれでも数万人規模で広いことにはかわりはないが。
その間に今は数人しか居なかった。1人は玉座に座りふてぶてしそうに、もう1人は冷ややかな目で玉座を睨みつけている。
「大公閣下。わざわざ皇宮にまで御足労してまで、何か御用ですか?」
皇帝の側近で補佐官のローガンは、大公にそう問いかけた。しかしローガンの言葉を大公は無視した。ローガンは自分の言葉を無視されたことで、羞恥で顔を赤らめ手に爪をたてた。それを傍観していた皇帝がやっと動いた。
「何用か?余も暇ではない。さっさと用があるなら言え。時間が無駄にある老人に、いつまでも付き合えないものでな」「ここは話し合いをする場ではないと記憶していますが。用を早く終わらせたいのであれば、話し合いをするための部屋を改めて用意して貰いたい」
両者は1歩も譲らなかった。皇帝の方が大公の言葉を承認するように右手を挙げた。
さっきとは打って変わって、皇帝の執務室に繋がる部屋に案内された。20人も入らないような部屋だが、先程よりかは格段にに話しやすくなった。皇帝と大公は向かい合うように座った。侍女長がお茶を持って来るまでの間、一言も言葉を交わすことはなかった。
「あの大公閣下はどういった御用でいらっしゃったのですか?」
さっきと同じようにローガンが一言目を切った。だがさっきとは違い大公は口を開いた。
「先に言葉を発することをお許しに。皇帝陛下、下々の管理がしっかりと行き届いていないようですね。いくら補佐官といえど、たかが公爵令息。皇帝や大公よりも先に口を開くとは如何なものだと思ういますが」
大公は呆れたような口調でローガンの言動を苦言した。ローガンはテーブル下で、服を手が赤くなるまで握り潰した。大公が言葉を発さなかったのは、皇帝が話していいと許可を出していなかったからだ。
目上の人間が話すまで待つ。目下の者が途中で割り込むような真似をしない。貴族社会で生きる上で1番に必要な事だ。
だがローガンは筆頭宰相を父に持った公爵令息で、皇帝の親友であり第1補佐官の立場を持っていた。だからローガンは自分が言葉を発する側だと思っていた。皇帝を抜いて自分が頭を下げたり、気にしなくてはいけない人間はいない。ローガンは奢っていたのだ。
ローガンはいつものポーカーフェイスをなくしていた。唇を噛み締め恨めしそうに大公を睨んだ。それを大公が鼻で笑った。侯爵と公爵が違うように、たかが公爵令息と現大公とでは明らかな差がある。
「まあその話は後でしてくれ。それよりも本題から入ろう。我が大公家の通例通りにレティーシャに護衛を就けようと思っています。もう選任してここに連れて来ています」
「何を勝手なことを!ここは大公家ではなく皇宮です」
「お前には聞いていない。そろそろ煩わしいぞ」
ローガンは大公に言い返そうとしたが、それを皇帝が止めた。
「それ以上騒ぐならここから出て行ってもらう」
「陛下!」
何かを言おうとしたローガンを手で制した。悔しそうに椅子に座って黙った。
「レティーシャは皇女だ。あの子は大公家の人間ではない。お前達のしきたりを知る気もないが、認める気もない。こちらですでに間に合っている。さっさと領に帰ったらどうだ」
「間に合っているのであれば、レティーシャが階段から落ちて怪我をしたなどという噂は流れないと思うが」
皇帝は余裕そうに優雅に紅茶を飲んでいたが、大公が事故のことを口にすると一瞬動きをとめた。大公はさらに続けた。
「事故であれ事件であれ、そこはいまさら関係ないのです。怪我をしたこと事態が問題なのです。我々が護っていれば起きなかったことです。レティーシャは皇女でもあるが、大公女でもある。この世で1番高貴な女性なのだ。レティーシャまでセシリアのように亡くなってしまってからでは遅い。我々も好きにやらしてもらう。今回は一応皇帝の顔をたてて挨拶に来ただけです。それでは失礼させていただきます」
事故であれ事件であれ関係ないと言ったが、正直事件であれば相当タチが悪い。同じな訳がない。だが怪我を問題にした方が角が立たない。それ以外であれば立ち入る隙を与えてしまう。
「ならこれから皇女が怪我をしたら責任をとれるのか?」
「それはわざと怪我をさせるという意味ですか?」
皇帝は今度から少しでも怪我をしたら、我々に責任を取らせると言った。さらにレティーシャが狙われるようなことになる可能性があるということだ。怪我は死ぬ程の大怪我でなくてもいい。転けて擦りむいても怪我のうちに入る。
つまり皇帝の意志を歪曲して汲み取り、今まで通り怪我をさせる輩が出てくるということだ。いや現時点でレティーシャに牙を剥く輩がさらに活性化するのだ。皇帝が手を出さなくても、周りが勝手にレティーシャを傷つける。
「勘違いをするな。そんな意味で言ったのではない。皇女が健やかでいることが一番だ。あのような姿はもう見たくない。これからあの子に一つでも傷がつくことがあれが許さん。もちろん指が紙で切れることでさえもだ。これ以外に用がなければとっとと出て行け」
皇帝は声を低くし、語尾を強めた。今まで怪我について一切認めることはなかった。だが皇帝は直接的な表現は避けたが、暗に匂わせる発言をした。つまり事故か事件かは分からないが、レティーシャが怪我をする事件があったと言ったのだ。
皇帝もこの怪我が事故の類いのものでは無いと思っている。近衛騎士には守ることができないということが分かっている。
「心配の必要はありません。優秀な治癒魔法が得意な者をつけています。今よりかは確実に安全です。それでは失礼します」
「···」
大公は言い終えると、立ち一礼をすると部屋を後にした。
部屋を出て行った大公を見つめた。これから皇女に会いに行くのだろう。今まで大公家の介入を許さなかった。しかし皇女が大公家の直系の血をひくこともまた事実。せめてセシリアに兄弟でもいれば良かったのに。そう思わない日はない。
この手で守れると思っていた。だがどんどん手から零れ落ちて行って護れなくなっていた。レティーシャにさえ会わなければ守れると思っていた。俺の予想とは裏腹に誰かがレティーシャの命を狙っている。解決策は分かっている。新たに皇后を迎えて子を作れば、レティーシャに向けられる目を逸らすことが出来る。
大公が羨ましい。自分を貫ける大公が羨ましい。皇帝よりも自由だ。何にも囚われることは無い。それに比べて俺は何も守ることが出来ない。
皇帝は静かに祈るように目を閉じた。
あの子のあんな姿はもう見たくない。ベッドに横たわっている姿は一見死体に見えた。何度も息をしているのか確認をした。その姿はまるで、寝たきりになったセシリアを連想させた。
守ることが出来るなら、大公の手を借りることも厭わない。ただただ健やかに生きていて欲しい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
皇宮内は物凄く広く、1週間あっても回りきることが出来ない。広いため皇族や貴族は馬車を使っている。定期便もあるぐらいだ。そこに一際華やかな馬車が5台、皇女宮前に向かっていた。
先頭を走る馬車は20人程が乗れる豪華中型馬車だ。その後に続く4台は荷馬車だ。もちろんこちらも大きい。
この世界の交通は全て馬車である。人数を多く運ぶ為に大型の馬車があったり、仕事で使うような一般的な小型の馬車もある。
皇族や貴族また資産家の平民達は、馬車をカスタマイズし機能性がない豪華絢爛な馬車を作った。見栄えは勿論のこと、権力や財力を表すのにピッタリなのだ。どこの家なのか分からせるために、馬車にも紋章がつけられるようになった。現在でもその名残で、馬車の持ち主の判別の為に必ず紋章をつけなくてないけないという風になっている。
豪華絢爛な馬車が皇宮内を闊歩している。しかも大公家の紋章である。それを見た侍従達や文官や兵士、貴族までもが噂話をしている。
「あ〜あ。くそめんどくせぇ奴らだな。こっちまで聴こえてるっての」
「レオネル。今はいいけど馬車が止まったら、敬語使いなさいよ」
「ったく姉ちゃんは堅苦しいな。いいじゃねぇか、俺達より上なんかいねぇ」
「訂正なさい。ここには大公閣下もいらっしゃいます。我々がこれから仕える皇女様は、今までの皇女ではありません。大公家の直系であることはもちろんのこと、皇家の黄金眼を持つ、最も高貴な···」
「フレイは相変わらずクソ真面目な奴だな。はいはい分かってるって」
「何なんですか、その態度は」
「フレイ、弟がすみません。ほら頭を下げて!」
レオネルは姉であるレオノアに頭を押さえ付けられ、頭を下げさせられていた。「ちょ、何すんだよ」と言っているが、レオノアはフル無視した。
「姉ちゃん。頭もげるって!」
「あんたが生意気だからでしょ!その饒舌な舌、いつか切り落とされるわよ。その時は笑ってあげるわ」
「ひでぇよ姉ちゃん」
「全く貴方達は変わらないわね〜。逆にほっとしたわ〜。知らないうちに緊張してたみたい。おかげで解れたわ」
「ほら姉ちゃん。ニコラだって俺に感謝してるしよ」
"バコッ"
レオネルの頭に拳骨が降り注いだ。レオネルはあまりの痛さに頭をおさえて半泣き状態だ。
「すぐに調子に乗るな。これだから···。はぁ、何でついてきたのよ···。その調子だとすぐにクビにされるわよ。皇女様はね、この帝国で一番高貴な方なの。皆は皇帝陛下が一番だって言うけど、血統で言ったら皇女様の方が上よ。私達が今まで会ったことがある人よりも高貴な人なの」
「けどよ姉ちゃん、その皇女って魔力がないんだろ?一番高貴だったとしても、魔力がなかったら意味ねぇじゃん」
理解をしない弟にため息が出た。
「そのうちあんた、不敬罪で殺されるわよ。殺される前に帰って。弟の死体を見たいわけじゃないわ」
「てめぇらはうるせえ奴らだな。特に男の方黙れよ。蒸し暑くなるじゃねえか」
「静かにしてなのです〜。ラルフさんもあまり挑発してはダメなのです!」
「ええ、ベティちゃんの言う通りよ。ここは大公領でも大公爵領でもない帝都よ。ましてや皇宮。私達の行いのせいで、故郷の皆に迷惑かけるかもしれないわ。最低限敬語を使ってもらわないと、ちゃんも教育されてないのかって皆が笑われる」
「そうですだ。ここでは我々の常識が通用しないですだ。気を付けないと付け入る隙を与えてしまうだよ」
「リッチ。まずその訛りを直したらどうだ?」
「すまねぇです。頑張っで勉強してきたんですけど、慣れんくて」
「スヴェン、訛りは仕方ないわ。訛りで殺されることなんてないもの」
「プリシラは甘いな。殺されなくても笑いの材料にはなる。その対象になるリッチが可哀想だ」
「プリシラさん、守ってくれでありがてぇ。スヴェンさんの言う通りだ。頑張っで直すけ」
「分かった。私も協力するわ」
「ああ。俺も協力してやる。教えるのは得意だ」
「2人ともありがてぇ」
さっきとは違い和やかな雰囲気が馬車には流れていた。大公は口を挟まなかったが、横目で安堵しているようだ。
「あらあらあんた達仲良く出来そうね」
ウインクをしてハートが飛んでいる気がする。女性の口調だが、正真正銘男だ。しかもゴツイ分類の。
「まさかお前が来るとは思わなかったな」
「私もあんたが来るとは思わなかったわ。でも残念。あんたは私のタイプじゃないわ。私のタイプわね、閣下のような方よ♡」
「安心しろ。あいにく俺もタイプじゃねぇよ。ところでよ。エリアスなんでここに来ることにしたんだ?」
「ちょっと、私はエリアスじゃないわよ。エリスよ!失礼しちゃうわ」
「はいはい。分かったよ。エリスは何でここに来たんだ?帝都にはイケメンあんまりいねぇぞ。」
「まぁ良しとしてあげるわ。確かに男前が少なくなるのは残念だけど、噂で皇女様が物凄く美しいと聞いたからよん。期限付きだからちょうど良いと思ったし〜。でオーガストあんたはどうなのよ」
「俺は簡単な理由だよ。剣を教えてやりたくなってな。大公領では、教えることがすくねぇ。魔法があるからな。でもよ皇女様よ無理気だろ。魔力がないんだったら別で強くなるしかねぇ。教えがいがあるってもんだろ!」
「あんたらしいわね。まっ良いんじゃない?でもそこまで気負わなくても良いわよん。寝ている子とずっとブツブツ言って本を読んでる子も居るし」
「確かにな」
話をしている尻目に、寝ている人と本をブツブツ読んでる人が居る。それを見てさらに場が和んだ。会ったことがある人も居れば、初対面の人も居る。1人ずつ自己紹介をして、皇女宮への到着を待った。




