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閑話 マリアベル・アイズ

※注意事項

性描写を思わせる文面等が出てきます。苦手な方は見ないで下さい。

また胸糞展開が続きますが、苦手な方は見ないで下さい。

優しい父と母、そして可愛い4歳下の妹。笑いの絶えない絵に書いたような幸せな家族だった。あの日が来るまでは。



私の両親は幼い頃からの婚約者だった。仲が良く友達のような関係だった。父は男爵家の次男、母は子爵令嬢で一人娘。父が母の婿養子になることで成立している婚約だった。2人は大人になるにつれ、友達から恋人に関係を変えていった。母はよくその頃の父の話をよく私に聞かせていた。



「貴方のお父様はね、恥ずかしそうに顔を赤らめて私に結婚を申し込んで来たの。可笑しいわよね。私達学校を卒業したら結婚するのに」



この話をする母の顔は、女性の顔をしていた。私もいつか子ども達に笑いながら話せるような、両親のような恋がしたいと子どもながらに思っていた。





転機が訪れたのは、母の2度目の妊娠だった。私が生まれたあとすぐに、孫の顔を見て安堵したようにお母様のお母様、私から言うとお祖母様は既に亡くなっていた。お爺様は昔より足腰が悪くなったようだが、母の妊娠を一緒に喜んだ。母は子爵を継いでいたので、私の面倒はよく祖父が見てくれていた。私は間違いなく祖父っ子だったと思う。


その祖父も風を拗らせ、子どもが産まれてくる前に亡くなった。私はショックだった。だが気丈に振舞っていた母も、祖父の死が堪えたのだろう。



出産を予定していた日から大幅にずれ、子どもを出産した。産まれてきた子の性別は女の子だった。妹は元気に産まれてきたように見えたが、体が悪くよく治癒士にお世話になっていた。

命懸けで産んだ母も早産だったせいか、身体を壊しがちになり、とうとう当主としての仕事も出来なくなっていた。母は私が大きくなるまではと、父に代行当主として座を預けた。







最初のうちは一見平和だった。父が代行当主になって1年が経った頃で、母が快調に向かって歩み始めた頃だった。私はお母様に絵本を読んでもらおうとお母様の部屋に向かった。扉に隙間が開いていたので、そこから部屋の中を覗いた。中には祖父の代から仕えていた年配の侍女が居て、あることを母に伝えに来ていた。


「当主様、旦那様が女と子どもを別邸に連れ込んでおいでです」


母はそれを聞いたら起き上がり、その侍女と他の侍従達を引き連れて別邸に向かった。私はなんのことか分からなかったが、母の後をつけていった。



別邸の扉を開け、母のどこにそんな力があったのか分からないが、奥の部屋の扉を"バン"と音を立てこじ開けた。


「貴方、一体どういうことですか!」


母は部屋を進んで行った。私は部屋の外から中を覗いた。まだお母様達に気付かれていない。

すると裸の父が知らない裸の女とベッドの上で、母の登場に驚き腰を抜かしているまぬけな姿だった。


父は裸の姿のままベッドから飛び降り、母に向かって土下座していた。女は他人からの視線から体を隠すように、そこにあったシーツで体を覆った。父と女はベッドの下に落ちてあった羽織りを着た。



私は部屋の物陰に隠れて一部始終を見ていた。母と一緒に別邸に向かった侍従達が、近くの部屋から子どもを引っ張り出してきた。子どもは私より大きい子から妹と同じぐらいの子も居た。父と母が居る部屋に子どもを連れて来た。


「女のみならず子どもまで連れ込むなんて!」

「その子どもはこの女の連れ子なんだ!ただ気迷っただけなんだ!許してくれ!」

「旦那様酷いわ。貴方が()()()()でこの人の奥さんなのね。この子ども達は、旦那様の子よ。昔から私を子爵夫人にしてくれるって、私だけを愛してるって言っていたの」

「何を言っているんだ!」


父は隣の女を黙らせるように怒鳴った。母は父が外に子を作ったことがあまりにショックだったようで、1人では立つことが出来ず侍女に支えられていた。

部屋に連れて来られた子ども達は、女と父の元に「「「「お父様、お母様」」」」と走って駆け寄った。侍従に抱かれている子は大きな声を出して泣いている。父はその子ども達を抱きしめた。


「あなた!私達の子の世話はしなかったのに、その女との子の世話はするのね!有り得ないわ!」

「子どもが聞いているんだ。あまり大きな声は出さないでくれ」


その時になって始めて私は理解した。父にとって私は父の子どもの範囲に入っていないのだと。


「奥様、そんなに怒らないでください。子爵であれば、これぐらいの浮気なんて許されるものでは?何だって旦那様はこの子爵家の当主ですもの」

「貴方は平民だから何も知らないのね。貴族では好色な者以外は愛人や妾は持たないわ。高位貴族なら尚更、私生児なんて恥ずかしい存在だもの。それより何か勘違いをしているのではないかしら。私が子爵であってその男は婿でしかないわ」

「!そんな···」

「もしその男が子爵であったとしても、私の子が嫡子となるから貴方の子に継承権はないわ。もし貴方が夫人になって子を嫡子を産んだとしても、社交界で生きていくことは出来ないはずだわ」

「だってずっと自分が子爵だって······」


女は驚きで言葉が出なかった。ずっと子爵だと偽られていたようだ。だが妻がいるということを知っていて、ずっとこの蛮行を及んでいたのであれば同罪だ。


「この人達を見張っておいて!ここから1歩も出さないように!」

「待ってくれ。魔が差しただけなんだ!」

「魔が差しただけだったら、こんなに子が出来るはずないわ!また今度沙汰を伝えに来るわ」


父が母の足にしがみついている。侍従が母の足から父を引き外した。こっちに向いた母が涙を流していた。ずっと母は父と共に居れると昔から信じていた。それなのに愛していた夫に裏切られたのだ。祖父が亡くなった時でさえ私の前では涙を見せなかったのに、堪えることが出来なかったのだ。


「お母様、大丈夫?泣かないでお母様」

「マリア、どうしてここに居るの?!」

「マッマリア、この父を助けてくれ。お前は私の愛する娘だろう!」


他の女との子どもを抱きしめながら父は私に助けを求めてきた。私はこの状況が、おかしいことだけ分かっていた。


「お母様は大丈夫よ。でもお父様は大丈夫じゃないみたい。マリアほら早く行きましょう」


母は私の手を繋ぎ退出を促した。理解は出来ていないだろうと、それなのに母は私が傷つかないように言葉を選んで私に伝えた。


「マ、マリア」


父が後ろで私を呼んでいる。だがわたしは振り向いたが、父の元に行くことはなかった。父の元に私の居場所がないことと、女とその子どもが私を強く睨んでいたからだ。私はあまりの恐怖に母にしがみついた。





それから母は父に任せていた1年のことを洗いざらい調べあげた。今まで婿の維持費で渡していたお金のほとんどは、あの女と子に渡っていた。また代行をしていた間は、家のお金を使い込み、女とその子に貢いでいた。


その結果我が家は火の車に陥っていた。回復できる見込みがない程打撃を受けていた。経費の欄にそれらしく書いてあるが、実際は女が着るドレスや宝石などに消えていた。


母が悔しそうにまた涙を流していた。




母は調べ終えた次の日、私を呼び出して捻り出した声で私に伝えて来た。


「本当に申し訳ないわ。私があの人と結婚したばかりに、あの人と別れなかったばかりに、本当にごめんなさい」


母は私に頭を下げて、何度も何度も謝ってきた。まだ子どもだったせいが、何のことなのか正確に理解することが出来なかった。


「お母様、顔を上げてください。どうして謝るのですか?」

「貴方がこの家を継いでいる所を見たかったのだけれど、それが叶わなくなったの。この家は取り壊しになるの」

「取り壊しとはどういうことですか?」

「この家は火の車でね、もう維持することもままならないの。この邸宅を売ったお金で、今まで働いて貰っていた皆にお給料をあげないといけないの」

「それと取り壊しがどう繋がるのですか?」

「維持する為に、国に税金を支払わないといけないの。でも今年からそれが出来ない。国に爵位を返還しないといけないの。私の力不足よ。どうか許してちょうだい。

来週にはこの家を出て新しい家に行くわ。全部を持って行くことが出来ないの。だから大切なものを選んで持って行きましょう」

「うん!」



私は旅行に行くと勘違いをしていた。いつも通り好きなぬいぐるみや絵本を詰めに部屋に戻った。その背中を母が悲しそうに見つめているとは知らずに。






来週になり家を出て行くことになった。今まで働いてくれていた人に、ありがとうと伝えるように母から言われた。


「ありがとうございます!」


私は母から言われるがまま皆に伝えた。「奥様方もお元気で」と言われた。だから私は笑顔で手を振った。だが私にも唯一聞けないことがあった。それは父があの後どうなったかだ。

今まで乗ったことがない古い馬車に乗り向かった先はボロい一軒家だった。






それから1年も経てば、さすがの私でも理解出来た。もうあの家には戻れないということを。私はぬいぐるみや絵本を持ってきたが、母は私のために洋服を持って来てくれていた。幼い妹と働きに行っている間2人きりだ。母は知り合いのツテで商会で働かせて貰っていた。


そんな母だったが出産後で身体を壊したまま回復せずに今まで働いていたせいで、とうとう体調を崩しベッドから起き上がれなくなった。その代わり私が外に働きに行くことになった。母が働いていた商会で荷物持ちやお金を貰えるなら何でもした。



必死に働いていた時、母に父のことを伝えに来た年配の侍女に会った。私がボロ雑巾のような服を着て働いているのを見て、ご飯を食べに連れて行ってくれた。その侍女は故郷に帰るのだという。私はあの後、父がどうなったか知っているか聞いてみた。侍女は答えにくそうに教えてくれた。


「あの後ね〜、子爵家のお金を横領した罪で訴えられたのです。旦那様の正確な身分は男爵令息なので、実家である男爵家が支払わんといけんのですが、もう既に旦那様の兄が男爵家を継いでおりましてね、支払いを拒否したんです。なので合法的に奴隷として、奴隷商に売られましてね。旦那様とあの女とその子ども5人も奴隷商に売られましたわい···。そのお金やその女の為に買ったドレスや宝石も全部売りましてね、私達の退職金としてくれたんです」



その話を聞いた私は幼心に胸をすく思いがした。私達家族を傷つけ日陰に追いやった人達は、一生奴隷として生きていかないといけない。私は笑いを耐えるのに必死だった。


それからも私は働いた。母が持って来ていたお金でやりくりしていたが、どんどん貯金は減っていった。一生懸命働いてはいるが、薬代や家賃などで家計は火の車だった。







そんな日が続いていたある日、朝起きてきたら母が冷たくなっていた。昨日お休みって言ったのに、お早うとは返してくれなかった。

母が死んだと分かると大家に家を追い出されて、幼い妹と2人彷徨い歩き続けた。日雇いで仕事をして、外で包まるようにくっ付いて妹と一緒に寝ての繰り返し。私1人だけならどうにかなった。だが幼い妹が居る分、出費がかすみ行動範囲が狭まる。私も疲れ果てていたのだ。それから2年必死に耐え忍んだ。





そんなある日のことだった。きびしく照りつける太陽に気が遠くなっていっていた。陽を遮るものはどこにもなかったのに、急に日陰になった。水を入った袋を前に差し出されて、私は奪い取るようにその水を飲んだ。飲み終えたあとやっと上を見た。

そこには天女のような美しい少女がそこにはいた。


「大丈夫?その子にも飲ませてあげて」


声すらも美しく私は目を見開いた。正気に戻ると、私は言われた通りに妹に水を差し出した。妹も人目を気にせず飲んでいた。少女は笑みを浮かべ「喉が乾いていたのね」と笑いかけてきた。たぶんまだ私が子爵令嬢だったとしても、出会えないようなそんな少女だった。



その少女がセシリア・ルクセイ・アンサール・ヴィルヘルム。ヴィルヘルム大公の一人娘で、この世界で1番高貴な少女との出会いだった。



セシリアお嬢様は優しくて素敵な方だった。でもどこかで嫉妬している自分もいた。私もこんな生活がしてみたいと何度も思った。そして素敵な男性と恋に落ちる。何度も何度も夢に見ていた。


数日後セシリアお嬢様に紹介された男性を見て恋に落ちた。セシリアお嬢様の護衛を務めているグレン・ユノーとの初対面だ。大公爵家出身であり、次世代の大公爵と言われており、容姿や性格と共に家柄までいいと三拍子。私はさらに恋に落ちた。


私は少しでもグレンの近くに居ようと、セシリア専属の侍女になろうとした。結果は不合格だったが、セシリアお嬢様の鶴の一声で専属侍女になることが出来た。綺麗と思って貰えるように、グレンが見ていない時でも身だしなみを整えた。




「マリア、私皇帝陛下と結婚することになったの。貴方についてきてもらいと思って。他の人達は皆ここに残るから」

「······妹がここに残るので、有難い申し出ですがすみません」

「ううん。気にしないで」


セシリアに皇宮についてきて欲しいとお願いされた。他の人達はここに残ると聞いて、グレンと離れ離れになると思い妹を理由に断った。

だが他の侍女からグレンだけはセシリアについて行くと聞いた。私は裏取りをして確証を得てから、セシリアの部屋を訪れた。


「セシリアお嬢様、私もついて行かせて下さい」

「行かないって言っていたじゃない?」

「此処に残ったとしても居場所がないので···」


居場所がないのは本当だ。セシリアが拾ってくれてセシリアが居るから、ここに居させて貰っているだけだった。ここは元々閉鎖的な領だ。帝都から来たどこの馬の骨も分からない女の事を、何年も働いて来たのに一度も認められたことはなかった。

セシリアがここから居なくなれば、私はもう必要は無い。また追い出されて居場所を失う。残ればずっと会えると思っていたグレンとも会えなくなる。


「分かったわ。もうすぐだから用意しておいてね」


セシリアは快諾してくれた。これでグレンと離れなくて済むと安心した。








私も今なら分かる。あの忌々しい父と同じ血を継いでいるんだと。家族思いの母ではなく、家族を壊した父の血を、しっかりも私も妹も受け継いだ。助けてくれたセシリアお嬢様に対して感じていた恩義を忘れ、嫉妬し醜い心は父を奪ったあの女と一緒だ。


セシリアお嬢様が亡くなっても、グレンと一緒に居れればそれで良いとしか考えていなかった。男から言うことを聞けば、グレンと結婚出来ると言われ協力さえしていた。皇女様が死ぬかもしれないと知っていながら。



だから私は追い出された。追い出される最後の最後まで自分のことしか考えていなかった。だから妹が変わったことにさえ気付かなかった。


追い出されてから1ヶ月近く経った。私は心身共にボロボロだ。


妹のクランベルは皇女様の言っていた通り、私が働いて帰って来たら殺されていた。妹もこれから真っ当に生きようと決意してからすぐのことだった。妹は働き先で亡くなった。引き取りに行こうとしたら、謎の感染症を患っていたため燃やしたと言われた。


「有り得ない!クランベルは今朝まで、家を出るまでは元気だったの!」


私の訴えは聞き届けられることは無かった。妹の働き先からは、病原菌と言われたり罵詈雑言を罵られたり、大家が家まで来て家から出て行ってくれと言われた。働き先からも解雇され、私は妹の灰が入った壺を持ってあの頃と同じように彷徨い続けた。


だがあの時と決定的に違うのは、セシリア様のように救ってくれる人物がもう居ないいうことだ。恥など殴り捨て、皇女様にお会いたいと言いに行ったが門前払いを受けた。その時になってやっと、今まで恵まれた立場に居たのだと実感した。私の本来の身分の子爵令嬢だったとしても、皇后付きの侍女やましてや皇女様付きの侍女になんてなることは出来なかった。それなのに恩を忘れ、生きていたから罰が当たったのだ。



妹を弄び殺したあの男に生かされているのは、生きていたとしても何の害にもならないと思われているからだ。実際これから生きていくのさえ難しい。


私の居場所はもう帝都にはない。妹を持って帝都を離れて、別の都市に向かった。アーステリア帝国第三の都市リヘイムだ。そこは活気のあるダンジョンがある都市だ。帝都に居られなくなって逃げて来たが、やっと腰を下ろせる場所が出来た。もう出て行けと言われないように退職金で部屋を買い、さらには働き口まで見つかった。欲を捨てたからか、あれから心穏やかに暮らせている。






だが今までの罪が許された訳ではなかった。私は今都市に侵入して来た魔物に襲われている。着ていた洋服を破かれ下着も破られた。服は元の原型を留めていない。


侵入が確認され警報が街に鳴り響いた。安全な場所にずっと居て平和なれし過ぎていたたか、私は逃げ遅れてしまった。逃げ遅れた私は魔物のいい的だった。


侵入して来たのはゴブリンだ。ゴブリンは簡単に殺してくれはしない。死ぬなら一思いに一気に殺されたかった。私はゴブリンの集団に犯された。それを屋根や高い所に逃げた街の人達に見られていた。哀れそうに見る人、下卑た目で見る人、笑って見てくる人、色んな人が沢山いた。中には「もっとしろー!」「いいぞー!」と言った掛け声を入れてくる人や、私を使って賭け事をする人まで居た。まるで何かの見世物のようだ。


やはり今までの私は人に恵まれ過ぎていた。ゴブリンもメス数匹捕まえたからか、自分の郷に帰って行った。街のあちこちから良かったと平和が戻ったと安堵の声が聞こえてきた。




ゴブリンは100%に近い確率でオスしか生まれない。またメスが生まれたとしても、同種で交配しても子が産まれる確率が極端に低い。そのため外から連れて来た異種のオスやメスと交配し子どもを作る。だがゴブリンは魔物の中で強い方ではない。なんなら弱い方に位置している。だから捕獲しやすい人間をターゲットにする。ゴブリンと他の魔物と違う所は、同種じゃなくても孕ませられる点だ。さらに言えば妊娠期間は約2週間と繁殖力も高い。

ゴブリンに捕まえられたら、子どもを沢山産まさせられ最後は捕食される。わざわざゴブリンの討伐のためだけに軍は編成されない。たまたま通りかかった冒険者が居ない限りほぼ助からない。



私はゴブリンに担がれ、ゴブリンがアジトにしている集落まで連れて来られた。そこには目視してざっと500匹程度のゴブリンがいた。メスは居なさそうだ。

前に捕まえられて連れて来られたのだろうか。数十人の女が集落に居た。ゴブリンに囲まれ犯されている。腹は異様に膨らんでいる。本物と小説の違う所は、催淫効果が存在しない所だ。そのため意識が飛ぶことも無い。現実逃避ができない。だから犯されて気持ち良くなっても、ふと元に戻った時嫌悪感で塗り潰される。女達が「嫌よ、やめて!」と声を上げている。だがたまに気持ちよさそうにしている。私は吐き気そうになった。これから私もああなってしまうから。



私と一緒に連れて来られた女の中で、まだ年端もいかない女の子も居た。その女の子でさえ私達と一緒に犯されている。


私は喜ぶ体とは裏腹に心は冷静だった。私は犯しているゴブリンをグレンと思い込むことにした。思い込んでしまえば、心だけは守ることが出来るから。グレンと思い始めたら、体はさらに快感を得た。他の女達と違い喘ぎ声を出し始めて快感に浸る私に、ゴブリン達はさらに興奮して私に打ち付けてくる。

これはグレンだ。私を気持ち良くしてくれているのはグレンだ。ゴブリン達がグレンに見えてくる。私は抗わずに気持ちよさに身を委ねた。声を出してグレンとも言った。私以外の女達は、そんな私を気持ち悪そうな目で見てきた。


だがそれも束の間、私は正気に戻った。なぜなら前に連れて来られた腹の大きな女の1人が、ゴブリンを産み始めたからだ。


「いやあァァァ!!」


私は見続けていたかった夢から覚めた。私は犯されながら吐いた。他の女達も叫び出した。それでも犯され続ける。

女は数十匹を産み終えた。体がピクピクしている。ゴブリン達が何か話している。


「いやぁ!殺さないで!お願いします!子どもならいくらでも産みますから!!」


女が叫び出した。女は涙を流し許しを乞うている。ゴブリンは何十回か産ますと、目新しいものが良いのか、古いものを処分する。食うのだ。産まれた赤ちゃんゴブリンは母親の母乳を吸っている。

その中で1番偉そうなゴブリンが居た。通称ボスゴブリンと言われているそのゴブリンが指示を出した。するとゴブリン達が前に出てきて、その女を喰い始めた。美味しそうに長い舌出してペロリとした。



私と女達は目の前で、さっきまで出産していた女を見た。生きたまま喰われ始めている。その中にさっき産んだばかりのゴブリンでさえ、乳輪を噛みちぎり食べている。私と女達はあまりの衝撃で、もう吐くものもないのに吐き続けた。


「た、すけ、て、、」


助けてお願いと犯されている私達に、手足が既にない女が言ってくる。私は恐怖で涙が止まらなかった。他の女達もそうだ。明日は我が身なのだ。

女が持ち上げられて最後まで喰われようとしている。可哀想なことに、その状態になってもまで死ぬ事が出来ないようだ。


「お、ね、、、が」


女の瞳から光が消えた。頭を喰われて死んだからだ。ぼきぼきと骨を噛み続ける音が眼を背けても聞こえてくる。せめて催淫状態にでもなれたら良かったのに。気が狂っても正気を保たされる。私は終わりのない地獄に涙した。





あれから何ヶ月経ったのか分からない。1人また1人喰われていった。あれからまたどこかから、新しい女を攫ってきていた。私も何回も子どもを産んだ。せめてグレンに似ていたら、まだ私の心は救われたかもしれない。だがどこまでも産まれてきた子どもは、グレンとは似つかないゴブリンだった。あれから思い込むことが出来なくなって行った。




集落の規模も私が連れて来られた時は500匹程度だったのに、今では4000匹を超えていた。この規模になったらそろそろ討伐隊が組まれるだろう。

私と同時期に来た女達はもうゴブリンに喰われていて居なかった。私が喰われないのには理由がある。ゴブリンの中で私から産まれた100匹以上が、ゴブリンから進化したからだ。背は高くさらに屈強になった。さらに進化したゴブリンに犯されて産まれてきたゴブリンは、皆進化した状態で産まれてきた。数は普通のゴブリンと違い少ないが、強さはゴブリンと桁違いだ。



私は自分から産まれてきた息子に犯されて、妊娠を繰り返した。


「やっやめて!あなた私から生まれてきたのよ!息子なのに!」


ゴブリンは人間の言葉を理解しない。言っても無駄だ。正気でいるのが辛かった。

他の女達と違い私の待遇は改善した。食事も毎日3食は用意されているし、簡易的だが服も用意された。夜は寝させて貰えるようにもなった。下っ端ではなくボスゴブリンの相手もするようになっていた。


私と他の女で違う点は何だ、どうして私が産んだゴブリンだけ進化するのか、ひたすら考えた。私は考え抜いた結果、ある1つの答えを導き出した。


私と他の女の違う所は貴族である事だ。没落しても腐っても貴族だ。平民より魔力がある。その魔力がゴブリンの子に受け継がれ進化を促しているのではないか。私は喰われないことに安堵した。私以外に貴族を連れてくることは不可能だからだ。ゴブリンが侵入して来た時、街の住民を守るために敢えて奴隷を用意して置いておき、連れて行かせて街の皆の命を守る。その奴隷の中にまず貴族はいない。貴族の奴隷は厳重な場所に置かれるためだ。


※置き奴隷

領民が連れて行かれることを防ぐために、買った奴隷を身代わりとして魔物に差し出すことで被害を少なくする方法。



私を求めてくれる必要としてくれる居場所がやっと出来たのだ。帰っても魔物憑きと言われるだけだ。私は幸せになった。絶望の涙とは違い、喜望(きぼう)の涙を流した。


※魔物憑き

魔物に手を付けられた女性や男性の総称。助かったとしても差別の対象となる。





またゴブリンが女達を連れて来た。今回は男達も連れて来ていた。私が産んだ子の中に数匹メスが居たからだ。


私は連れて来られた人を見た時衝撃が走った。忘れるはずもない。私を日陰の女にした原因の、父と女とその子ども達が居たからだ。私の知らない顔も居た。あれから懲りずにまた子どもを作ったのだろう。貴族の中には性奴隷同士に交尾をさせて、それをただひたすら見たり、わざわざパーティを開いたりなどという気持ち悪い話を何度も聞いたことがある。


あいつらは私に気付きもしない。当たり前だ。あれから10年以上経っている。私はまた心にモヤがかかった。奴隷に落ちてもなお、家族として一緒にいるからだ。


私も大人になってから調べて知ったことが、あの人達がなった奴隷は奴隷でも性奴隷だった。家族全員が商業を営んでいる貴族に、いい値で買われたと調べが着いた。

高位貴族になればなるほど、外で妾や愛人を作ったり、私生児が居ることを恥と思う文化が根付いている。だがずっと同じ相手では飽きてしまう。種をあちこちで巻く訳には行かない。そういう時のスパイスとして性奴隷が使われる。またパーティやショーとして人間以下の扱いをされる。貴族達は娼館に通えど、性奴隷の相手はしない。同じ人間だと思っていないからだ。

奴隷の子は奴隷。この国の法律の1つだ。


それなのに父達は私達が苦労して家族と死に別れている時も、ずっとあの女とその子どもと一緒に居たのだ。私がこうなったのも全て父のせいだ。父が居なければ私は子爵令嬢のままだった。母も生きてたし、妹も死ぬことはなかった。私は手を怒りで握りしめた。

だが父達がここに来たということは、生贄にされたからだろう。私にとって1つだけ良かったことがある。ここに来たということは、私の方が上だということ。私は笑みを零した。



「たっ、たすけてくれぇぇ」


父は地べたに倒され、メスゴブリンに上からのしかかられている。犯されているのは父だというのに、どちらが犯されているのか分からない。

あの女とその子どもはあまりの光景に、恐れ慄いている。「近付かないで!」と叫んだり、幼い子どもは泣き喚いている。だが帰った所で魔物憑きの性奴隷と言われ、虐められたりするだけだ。妹が居れば一緒に笑えたのにと思った。


「やっ、やめてぇ!!」


女は子ども達と引っついていたが、引きずられてゴブリン達の輪に投げ込まれた。女に続き子ども達も次々にゴブリン達に囲まれた。



そこからは私にとって楽園(パーティ)だった。あの女は元々娼婦だったようだ。幼い父を籠絡し、貴族の妻に成りたがった。だが何回にも及んだ出産のせいで弛んでいたのだろうか、ゴブリン達も楽しくなかったようで、早々に見切りをつけ別の女の子ども所に行った。


私は笑った。初めて見た光景だったからだ。ゴブリン達が用無しと判断したならば次に行われるのは1つ。

女は脚を持ち上げられ逆さにされた。足から喰われ始めた。まだ子どものゴブリン達はお腹の方を喰っている。


「いだぃ、、、や、めてぇぇ!」


そのおぞましい光景を、犯されていた父とその子ども達は見た。食べられながらも「あなた、助けて」と言っている。

父は助けようと動こうとしたが、メスゴブリン達に押さえ付けられ助けることが出来なかった。母親が食べられている所を見て、幼い子どもは失禁して失神している。


とうとう女は動かなくなった。必死に抵抗していたが、今はただぶらんぶらんとぶら下がっているだけだ。そのままゴブリンは顔を食べてしまった。

それを見ていた父と子は声をなくしていた。他にいた犯されている女の人は、ゴブリンに喰われる光景に慣れてしまっていた。喰われる相手が、自分じゃなければ良いと感じ取れる。


父と子は堰を切ったように、悲鳴のような声を出し泣き始めた。それでも犯され続ける。でも私はちゃんと見ていた。父は幼い頃からあの娼婦によって、快楽漬けにされていたようだ。泣きながらもしっかりと腰を振り続けている。さらには上にのしかかっていたゴブリンを倒し、自ら腰を振っている。父には性奴隷が天職だったようだ。

腰を振り続ける父を見て、子ども達は目を見開いている。やはり父は私の期待を裏切らなかった。逆にその姿の父を見て、ああこんな父が居なくて良かったとさえ思えた。



あれからあの女の子ども達も、役目を終えたあと喰われた。父はメスゴブリンを満足させれたのか、今も生かされ続けている。腐っても父も男爵だが貴族だ。それもあるだろう。

私は父に娘だと告げることはなかった。父がクズで吹っ切れたからだ。そんな父も結局は喰われてしまった。もう血の繋がった家族が一人もいない。心にぽっかり穴が空いたようだったが、心を無視し続けた。





私の幸せな日は唐突に終わりを告げた。増えすぎたゴブリンを討伐するべく、討伐隊が組まれ集落まで来たからだ。私の産んだ子のおかげで、討伐は思ったように進まらなかった。だが魔力がある分、向こうの戦力の方が上だった。


本来なら一日で終わるはずだった討伐も、1週間以上をかけゴブリン達は殲滅された。女は私を含め数人しか生きていなかった。だが私を抜いた女達は、目が虚ろで心を病んでいた。助けられた所でゴブリンには喰われないが、人間という魔の巣窟に戻される。心が病むのも無理はない。


お腹の子を堕ろす薬を無理やり女達は飲まされた。討伐隊の中には、お腹を膨らませた私達を見て下卑た笑みを浮かべ、ゴブリンと同じように犯してくるものさえ居た。



私はその時になって目が覚めた。現実逃避をして心を守るために心を消した。だが途中から私を求めてくれるゴブリン達を可愛いいとすら思った。殺されたゴブリン達を見て涙が出てきた。


私は吐いて吐いて吐きまくった。少しの間でも魔物(バケモノ)に心を許していたことが気持ち悪くなった。


本で一度読んだことがある。こんな現象をストックホルム症候群と言うようだ。所詮ゴブリンにとっても、私はただ良い兵士を産ませるだけの存在でしか無かった。何者にも結局私はなれなかった。


「セシリア様、セシリア様」


裏切った主を呼ぶことしか私は出来なかった。


私達は外れの聖教会が運営している修道院に連れて行かれる。穢れを受け入れたから、穢れを祓わないといけないらしい。

私は修道院に入りたくなかった。だからその場から逃げ出した。リヘイムではなく別の街が見えてきた。あそこに行けば私が魔物憑きとバレない、これからも人間として生きていけると安心した。


"ヴウゥゥ"


近くから唸り声が聞こえた。私は恐る恐る音をした方を見た。そこにはモンスターベアという巨大な熊のような魔物が居た。私はその場から走った。だが距離を詰めてくる。



私はモンスターベアに咥えられている。巣に連れて行かれるようだ。巣には3匹の子どものモンスターベアが居た。私は咥えられた時の出血で動くことが出来なかった。3匹がたどたどしい足取りで私に近付いてきた。

私は悟った。ここが私の最後になると。頭に走馬灯が駆け巡った。



ごめんなさいお爺様。お爺様のように真っ当に生きることが出来なくて。

ごめんなさいお母様。産んでもらったのに、命を無駄にしてしまって。

ごめんなさいクランベル。貴方の姉だったのに、貴方の孤独に気付いてあげることが出来なかった。

ごめんなさいセシリアお嬢様。命を助けて貰ったのに救ってもらったのに、恩を仇で返してしまった。

ごめんなさいグレン様。最初は見ているだけ良かったのに、欲が出て欲しくなってしまったの。

ごめんなさい皇女様。裏切ってごめんなさい。初めて抱かして貰った時、物凄く嬉しかったです。



私は死の間際にして、やっと昔の私が戻って来た気がした。幼い私が私を見て、にっこり笑っている。憑き物がない無邪気な笑顔だ。



ごめんなさいマリアベル。貴方のことずっとあの日に置き忘れていた。あの時貴方をちゃんと連れて行っていたら、何か変わっていたのかな?

お母様は怒るかな?馬鹿なことをしてって。お爺様は抱き上げて抱きしめてくれるかしら?クランベルは私を許してくれるかしら?


私は笑顔のマリアベルに手を伸ばした。やっと大好きな家族の元へ旅立てるのだと、私は久しぶりに心をから笑った。







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