バックラー
街に到着したアイザックは、早速、傭兵の募集がないかを探し始めました。
この街には過去に一度父親と訪れたことがあったため、大まかな規模や街頭の様子は承知していたつもりでした。
しかし、いざ1人となると、何を目指してどこを歩けばよいのか全く勝手が分かりません。
まずは街の中心に行こうと道を歩いていると、近くにある建物のドアが勢いよく開き、中から憤怒に顔を歪めた1人の男が長剣を片手に外へと出てきました。
道行く人が男の側から離れる中、男は建物の前に置かれていた木のタルを勢いよく蹴りつけています。
その後、開け放たれたドアから別の男が現れると、長剣男の注意は出てきた男の方へと移りました。
2人は軽装ながらも傭兵風の出で立ちで、後から出てきた男は右手に短めの剣を持ち、左前腕部には円形の小盾が付けられています。
長剣男は小剣男に向かって口汚く何かを罵っているようでしたが、罵られた本人は涼しい顔で相手の言葉を聞き流しているようでした。
しかし、しつこく繰り返される罵倒に嫌気がさしたのか、小剣男は長剣男の言葉を遮って「いいから早くかかってこい」と告げました。
その言葉に激昂した長剣男は、両手で長剣を振りかぶりながら小剣男に斬りかかります。
ところが、小剣男は振り下ろされる剣を盾を使って外側に受け流すと、薄笑いを浮かべながら右手の剣を相手の腹に突き付けました。
長剣男は慌ててその場から飛び退きながらも、大声を上げながら再び襲い掛かりました。
その後、怒涛の勢いで暴れ回る白刃を、小剣男は小さな盾1枚で難無くいなし続け、気が付いてみれば、長剣男は剣を構えつつも、大きく肩で息をしながらその場を動くことすらままならないといった様子です。
小剣男は「今日のところは引き分けだな」と言うと、剣を収め、悠々とその場を去って行きました。
アイザックは小剣男を遠目に見送りながら、戦場であの男と敵対しないことを祈らずにはいられませんでした。




