表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万屋チェーン正直堂【商品目録】  作者: 一二三 五六七
22/31

バスタードソード

 騎士達が戦闘訓練を重ねる傍らで、オリビアはどこか上の空でその様子を眺めていました。


「考え事ですか、オリビア様?」


 伯爵家の騎士達を束ねる騎士長ローガンがオリビアに話しかけます。


「ローガン、私もお父様もあなた方騎士団には心から感謝しております。あなた方がセントレイク家の領地を守ってくださっているお陰で、お父様も安心して執務に専念することができます」


「もったいないお言葉です」


 ローガンは感激し、オリビアに深く頭を下げました。


「――でもね、ローガン。私は思うんです」


 そう言うと、オリビアは壁際に掛けられているバスタードソードに目を移します。


「どうしてあんな立派な剣があるのに、皆さん普通の剣で戦おうとするのでしょう?」


僭越せんえつながらオリビア様、あの剣は馬上で用いるための長剣で、あまり歩兵向きではありません」


 ローガンはオリビアをたしなめるように言いました。


「存じてます。しかし、傭兵の方の中にはああいった大型剣を巧みに扱う方もいらっしゃいますよ」


「確かに。ですがそれは見栄や威嚇のため。実際の戦場においてはその長さと重さが振るう者の負担となり命を危うくいたします」


「それは日々の鍛錬によって自己の技量と力量とを高めていけば解決できる問題だと思います」


「簡単に仰いますが、人間にはどれだけ鍛錬を重ねたところでどうしても肉体の限界というものがございます。やはり近接戦闘においては身の丈にあった武器が一番かと」


「そうでしょうか……」


オリビアは頬杖をつきながら今一つ納得がいかない様子で溜め息を漏らします。


「オリビア様はよほど大剣がお好きなようですね」


「それはもう!私、今度の誕生日にはお父様に大きな両手剣を買っていただくつもりなんです」


 目を輝かせながら語るオリビアを前に、なぜこれほど勇猛で天賦の才に恵まれた方が男子ではなく女子として生まれてしまったのかと、ローガンは運命のいたずらを呪わずにはいられませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ