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万屋チェーン正直堂【商品目録】  作者: 一二三 五六七
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ショートボウ

 己の見識を広げるため遊歴を続けるゲンジは、深い森を力なく歩いていました。


(やはりあのご主人の言うように街道から離れるべきではなかったか……一生の不覚だ)



「この森を抜ければ隣町まですぐではないか?」


 ゲンジは宿屋の主人が描いてくれた地図を見ながら言いました。


「とんでもない!そこは“死霊の森”と呼ばれてましてね、一度迷い込んだら生きて帰れない死の森なんですよ」


 死霊の森とは随分仰々しい名前だと笑いながらも、ゲンジは感謝の言葉を主人に述べ、宿をあとにしました。



 勘だけを頼りに森を進んでいると、突然、近くで金属がぶつかり合う音が聞こえます。


 音の方向に注意を向けると、1人の青年が2匹のオークと争っているではありませんか。


 青年は必死に応戦しているようでしたが、オーク達は薄笑いを浮かべながら遊ぶように青年を追い詰めていきます。


(いかん!)


 ゲンジは背負っていた短弓を取ると、弦を引き絞りました。


シュン、ドッッ!


 ゲンジが放った矢がオークの脳天を射貫きます。


 呆気にとられる青年とオークでしたが、直後に残ったオークの額にも別の矢が突き刺さりました。



「御仁、怪我は無いか?」


 ゲンジが立ち尽くす青年に声を掛けます。長身痩軀ちょうしんそうく眉目秀麗びもくしゅうれいなその青年は、慌てた様子でゲンジの元へ駆け寄ってきました。


「あ、ありがとうございました!も、もうダメかと思いました……」


 青年の名はクーリンディアといい、広い世界を旅するために里を出たばかりとのことでした。


 それは奇遇だとゲンジは喜び、実は自分も見聞のために世界を旅していることを告げます。


 そして、この森で迷ってしまい困っていたことをゲンジが話すと、クーリンディアは顔を輝かせました。


「この森は私の庭みたいなものです。ご案内しますよ!」


 すっかり意気投合した2人は、クーリンディアの案内で歩き出しました。


(情けは人のためならずとは正にこのこと、――しかし、随分と変わった形の耳をした御仁だな)

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