表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万屋チェーン正直堂【商品目録】  作者: 一二三 五六七
18/31

マント

 貴族風の男は不機嫌そうに書斎に入ると、手に持っていた書類を机に叩きつけました。そして執務用の椅子に腰を下ろし、散らばった書類を忌々しげに見つめます。


(何が凶作だ!怠け者共の言葉を真に受けおって――そもそもアイツらも税収の上前をはねてるに違いない!くそっ、どいつもこいつも!)


 男の背後にあるカーテンが静かに揺れます。


(密告制度もうまく機能せんようだが、恐らく農民とアイツらがグルになってるんだろう……なんとかして証拠を掴んで)


 大きく椅子にもたれ掛かった瞬間、男は何者かに口元を押さえられました。


「んんっ?!」


 首元に火傷のような痛みを感じると、男は二度と言葉を発することができなくなりました。


 

 暗殺者はダガーの血を拭き取ると、侵入に使ったロープを伝って庭へ降り、足早に屋敷をあとにしました。


 風のように農村内を駆け抜け、やがて郊外にある粉ひき小屋まで到着すると、暗殺者はその中へと身を隠しました。


「――流石だな、アニマ」


 窓の外から別の男の声が聞こえます。アニマは別段気にすることもなく羽織っていたフード付きのマントを脱ぐと、床に置かれたボロボロのバックパックに押し込みました。


「カネは袋に入れておいた。ご苦労さん」


 その言葉を最後に窓際から男の気配は消えていました。


 アニマはバックパックをあらためることもなく外に留めてあった馬に跨ると、月明りの下、粉ひき小屋をあとにしました。



 アニマが街に到着したのは早朝でした。


 入口付近で訳知り顔の男に馬を託すと、アニマは街の中心部に向かって歩き始めました。


 しばらく歩いていると、アニマは家の窓から呼び止められます。


「ブラコンじゃない。こんな早朝にどうしたのさ?」


 声の主はカミラでした。


「こりゃ、アネさん。お早うさんです」


 ブラックコンドルはいつも通りの卑屈な笑みを浮かべた。


「なーに?また賭場からの朝帰りかい?少しは真面目に働きなさいよ」


「ヘへへっ、アネさんにはかないませんや」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ