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万屋チェーン正直堂【商品目録】  作者: 一二三 五六七
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ノーマルソード

 セントレイク伯爵リアム・グランウッドには大きな悩みがありました。


 伯爵が屋敷の窓から庭園を見下ろすと、今日もその原因ともいえる少女が剣術の稽古に励んでいます。その顔は真剣そのもので、流れる汗と充実感でキラキラと輝いていました。


 少女は伯爵の娘であり、名をオリビアといいます。


 オリビアは可憐な容姿とは裏腹に剣術に対する異常な熱意をもっており、年頃になっても社交の場に出ることはほとんどなく、日々剣の鍛錬に勤しんでいました。


 当初は伯爵家に仕える騎士達から貴族向けの華美な剣術を習っていましたが、やがてそれだけでは満足できなくなり、こっそりと屋敷を抜け出しは街の酒場に出向き、そこに集う傭兵連中から酒代と引き換えに実戦重視の剣技を学ぶこともありました。


 今振るっている剣はオリビアが15歳の誕生日にオーダーメイドされた長剣ですが、本人の希望は大男が担ぎそうなツーハンデッドソードでした。


「筋力増強と殺傷力の両面で最適です」と、力説するオリビアでしたが、「お前が何を言っているのか意味が分からない」と、リアムに却下され、妥協の末に今の長剣へと収まりました。



(なんとか剣から離さねば……)


 苦悩の末、伯爵は娘を修道院へ預けることにしました。そうすれば剣に触れる機会も無く、あの性格も少しは落ち着くだろうと考えてのことでした。


 当然オリビアは猛反対しましたが、敬愛する父親のたっての希望と、3年間だけという条件により、しぶしぶながら了承しました。



 オリビアは仏頂面のまま馬車に乗ると、武装した8名の兵士に囲まれながら修道院へと向かいました。


 その様子を見ていた街の住人は、「少女1人に8名の護衛とは、伯爵様は娘を溺愛しすぎではないか」と口々にウワサをしますが、同行している兵士達の心中はそれどころではありません。


 もしもオリビアが暴れだしたら8人程度の武装兵では止めることができないことを、彼ら自身が十分承知していたからです。

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