死にました
ゲームの中では魔物は食べると死ぬってイメージがある。
でもそれは違う。必ず死ぬんじゃなくってたまに死ぬ。
そして、それは今私が食べるスープも例外ではない。
<魔物料理>の授業を受けるためにはバトリが上げたスープを飲んで感想を語るのが条件だ。
なのにたまに、本当にたまにこれを飲んで死ぬ時がある。その確率は1%くらいなんだがよっぽど運がなければ死ぬ。
けれど魔物料理の利点が多すぎて私はゲームが現実になった今もこれを飲むつもりだ。
まさか、死んじゃう訳ないんだろう。1%だぞ?
私は目を閉じて一気にスープを全部飲み込んだ。
「おお、よく飲んでるじゃろう!」
横から聴こえるバトリの声。舌から感じられる形容出来ない味。そう、これはまるでタイヤを泥水に混ぜて24時間くらい沸騰した味みたいだ。
こんなに不味いからキャラが死ぬんだな。
「あら?」
おかしい。指先から力が抜けて行く。目眩もするし、体から魂が抜けるような感じがする。これはまずい。不味いもあるが本当にまずい。私が感じていることは多分死の感覚に間違いない。
「おい、大丈夫のじゃ?」
バトリの声が聴こえる。でも私は返事が出来なかった。声はもう出ないし体は動かない。目の前の景色が焚き火から夜空に変わる。私の体が倒れたってことだろう。
ゲームの用語で言えば気絶状態直前まで後1秒なんだろう。
いや、気絶じゃなくって死か。とにかくこの状況を何とかしないと確実に死ぬ。でも体は動かない。力が入らないんで何をしようとしても何も出来なかった。
そして私は。
[死亡しました。]
死んだ。
目の前に浮かんだ案内文口。慣れたものだ。ゲームの中で飽きるほど見たものだから。こんなところで死ぬとはなぁ。
考えも出来なかった。まさか1%の確率が当たるとは思わなかった。
「でもまぁ。」
ここで終わりはないはずだ。こんなことがあるかっと思って私は<死神代理>の才能を選んだったから。
[<死神代理>の効果で死から逃れます。]
[クールタイム:30日]
少しもったいない。ここで使うことになるとは。
目眩で何も見えなかった視界が元に戻る。力が抜けた体が動き始める。死から戻った私は息を出しながら倒れた体を立ち上げた。
「呼吸が戻ったなぁ。おかしいじゃろう。確かに死んだ気配だったのに。」
「大丈夫なのか?お前。」
「…本当に死ぬかと思いましたよ。」
バトリとポイナスがこっちを見ながら言った。ポイナスはまだスープを飲まなかったのでスープの先輩として助言をしてくれた。
「死ぬほど美味かった。一気に飲んでね。」
「まじかぁ……。」
私の言葉にポイナスは半信半疑する顔で一気に紫色のスープを飲んだ。そしたら彼女の顔色が紫色に染める。
「し、死んじゃう…!」
そしてそのまま倒れた。その姿を見ていたら自然に笑いが出てしまった。まぁ。ポイナスはドラゴン。抵抗力が強いから死ぬ事はないんだろう。
視線をバトリに向かって移すと彼女はニコニコ笑いながら私を見ていた。
「どうなんじゃ?わしの魔物料理は。」
「…紫色の味です。使ったのは毒雲キノコと、鋼鉄牙猪の肉ですよね?」
「ほお、それを分かったのじゃ?食べたすぐに?」
もちろん、分からない。私が覚えているのはゲームで見たスクリプトだ。後で分かるようになることを話すだけだ。
でもそれでバトリが嬉しく思ってくれると分かっている。
「ふふん。そうか、そうなんじゃろうな。よし、ダビと言う者よ、君をわしの弟子にしてあげよ。隣に倒れているドラゴンにも伝えておけ。ドラゴンだから簡単に死ぬことはないんじゃろう。」
「ありがとうございます。バトリ先生!」
「それじゃ、後で見よう。久しぶりの授業が楽しみになって来たのじゃ。」
「私もです。先生。」
バトリは満足する笑顔で手を空に向けて上げた。そしてゆっくり手を下げると、目の前の風景が一瞬で変わる。
1秒まではバトリの焚き火の前だったが、今は森の入り口に戻って来た。どうやられたかも知らない一瞬で起きた魔法。私は長く息を吐きながらまだ起きてないポイナスの足を掴んで引きながら教室まで戻った。
他の選択科目の方は行かなくっても良い。ただ申請書を作成するだけで入れる授業だったから。
「ポイナス、君は俺に感謝するべきだ。」
ゲームだったら役に立たない変な科目を受けた後、事故を起こして入れなくなる運命になるはずだった。
今私は、彼女の運命を変わってあげたんだ。これで少しは敵になる可能性は減ったんじゃないかな。
とにかく、私は彼女が起きることを待つながら初めての授業が始まるのを楽しみにしていた。
選択科目の体験の後にはリンストンが進行する魔法基礎の授業が短くある。魔法があるゲームの中にはいったんだから魔法が使いたい。
そして、魔法の時間が来た。
ポイナスはまだ起こってなかった。
よろしくお願いします




