3.初めての町で
僕は目を覚ます。
森の中で横たわっていた。
手紙が添えられている。天の門番と名乗った老人からだった。
『町の中では目立つので、森の中に転生させました。
近くに川があるから、そこから川を下って町を目指してください。
現在地は、ジノベール大陸のロベルト王国という場所です。ここからであればクローバーの町が一番近いです。わからなければ、地図帳やノートPCのマップで確認してください。
収納魔法の魔法陣を記載しておくので、地図帳などを袋から出し入れしてみてください。
それではこの世界での生活を楽しんでください。』
とのことだったので、早速、収納魔法を使い、この世界の地図を見る。
地図帳には4つの大陸といくつかの島が記載されている。
簡単に言えば、この世界には4つの大陸があるということだ。
その中の一つ、北西の大陸に、ジノベール大陸という大陸が記されていて、一番東端の半島部分に、ロベルト王国の文字が記載されていた。
なるほど、この半島と、大陸の北東部分がこの国というわけだな。
周りには針葉樹や白樺の木などの寒冷地隊を好む植物とかもなさそうなので、それほど緯度や標高が高いわけではなさそうだな。
半島ということもあり、海から暖流とかが流れてくるのだろう。
と、言うわけなので、大体の位置が把握できたので、ここから移動してみる。川は幸いにもすぐに見つけることができた。
魔物とかに出くわしたらどうしようか。
回復魔法とかは使えても、攻撃魔法はまだやったこともない。
こういうアニメとかだと、1人で無双するということもできるが、あの老人が言っていることを総合すれば、やはり、信頼できる誰かと出会った方が得策だろう。
けた違いの異端扱いされてもそれはそれで困る。
こうして僕、森田修は、シュウ=フォレストとして、冒険を始めることになった。
まずは、一気に川沿いを下り、町を目指した。
魔物に出くわしませんようにと思いながら。
だが、そんな願いもむなしく、スライムに出くわしてしまった。
やはり魔物が居たか。何か対処法は無いか・・・・。
と、思ったら、すぐに魔法陣が浮かび上がる。
「肉体強化!!」
と僕は魔法陣を出現させ、そのうえでスライムを殴る。
一発で余裕でスライムを倒すことができた。
なるほど、こういう補助魔法も回復魔法の属性に含まれるのかということを知り、少し心に余裕が生まれた。
しかも、『20階級特進』の効果なのだろう、スライムの動きが止まって見えた。
おそらく、他の強い魔物もある程度対応できると感じた。
心に少し余裕ができた僕は、歩くスピードを少し緩める。
少しゆっくり歩きながら、町を目指した。
やがて、森を抜けて、町が見えてきた。
そこまで大きくはないが、施設等はすべてそろっていそうな町だった。
ここが、クローバーの町なのだろう。
レンガ造りの塀で囲まれ、いろいろな家が立ち並ぶ。
町に入るためには身分証が必要になったが、持っていない人には、水晶玉に手を当てられ、名前や罪状などが調べられて、問題がなければその場で身分証が発行される。
当然、僕はこの世界に転生してきたばかりなので、大きな罪状もなく、すぐに身分証を発行してもらった。
さて、次は仕事だな。この世界に転生したは良いが、仕事が見つからないと話にならない。
ギルドみたいなところがあればいいのだが。
ということなので、ギルドのような場所を聞いてみる。
町の人に聞くくらいであれば問題ないだろう。
町の人、何か仕事をしていそうな人に聞いてみる。
ちょうどそこに、剣を持っている冒険者らしき人がすれ違ったので、声をかけてみる。
「あの、すみません。ギルドなどの施設はこの町にありますか?」
「はい。それでしたら、冒険者ギルドのクローバー支部があちらにありますよ。」
とのことで、道も教えてくれた。
その人にお礼を言って、僕は教えられた道の通りに冒険者ギルドへ向かった。
やがて僕は、教えられた場所にたどり着いた。
建物の規模としては小さいが、中に入ると、いかにもギルドらしい風景が広がっていた。
仕事のボードに、受付、そのほか、フードコートや武器屋など、いろいろな施設がある。
ギルドの受付に登録の申し込みをすると、すぐに登録できた。
「最初は簡単な依頼から受注可能になりますが、おそらくステータスを見ると、すぐに昇格できそうです。今まで登録していなかったのがもったいないくらいのステータスですね。治療とか、錬金とかの仕事もありますので。またランク上位者とパーティーを組めば上のランクの仕事も出来ますよ。ヒーラーはどのパーティーでも必須ですから。」
そのように言われたので、僕は頷く。
「報酬の収入管理についてはどうしましょうか?銀行の口座などがありますか?」
銀行の口座かあ。なるほど、異世界にもそういうのがあるのだな。
「銀行の口座とかは持っていないのですが。」
「こちらでお作りしますがいかがですか?」
とのことだったので、お願いします、と答える。
「わかりました。この建物に銀行が併設されてますので、そこへ行ってください。」
ということで案内される。
案内された、銀行の窓口で、銀行の口座も簡単に作ることができた。
「いくらかお金を最初に収めていただきたいのですが・・・・・。」
と、銀行の窓口の人から言われたので、少し困ったが、袋を見ると、お金がかなり入っていた。
『言い忘れていたが、君の日本での銀行口座のお金をこちらの世界のお金に変換しておきました。慣れないうちの生活の足しにしてください。』
と手紙が入っていた。
これはかなりありがたかった。
さすがは『20階級特進』だ。といっても、何もしないと半年前後で使い果たしてしまいそうな額だったので、新たに収入源はすぐにでも必要だった。特に異世界だ。慣れないうちはお金の支出がかなり激しいだろう。そう考えると、本当に短期間で使い果たしてしまいそうな予感がする。
僕はこのお金を銀行に預けた。
「承知いたしました。」
銀行の窓口の人はそう言って、預かってくれた。
これで、とりあえずは短期間ではあるが暮らせる目途が立った。
早速、ギルドの仕事を行った。
いきなり回復魔法や錬金術の仕事だと本当に大丈夫なのかが不明だったので、先ずは一度倒したことがある『スライムの討伐』からやることにした。
待ちの外に出て、実際にスライムと戦う。
【肉体強化】の魔法でスライムを倒す。
少し疲れてきたかなと思ったところで、回復魔法を試みる。
初級クラスの回復魔法【ヒール】。
魔法陣は幸いにもすぐに浮かんでくることができ、かなり効果が現れてくるようだった。
回復魔法の使い方が、わかったので、次はワンランク上の魔物を討伐することに決めた。
ダメージを受けては回復魔法を繰り返し、何とかこなすことができた。
この依頼で、先ほどの【ヒール】よりさらに上位魔法、【メガヒール】もやってみたが、効果はすぐに表れた。
この依頼もすぐに完了し、ギルドに報告した。
一番下のランクなので、僅かな額ではあったが、確かに報酬が自分の元に帰ってきた。
今日はもう日が暮れそうなので、宿屋を取って休むことにした。
これも、ギルドの受付のお姉さんから、宿の場所を教えてもらった。
教えてもらったところに着くと、そこまでの高級旅館とまではいかなくても、きちんとしたビジネスホテルのような、宿屋がそこにはあった。
お金の価値はまだまだ分からなかったので、今日の報酬と、銀行にあったお金をいくらか引き出し、これで何泊できるか聞いてみた。
「ああ。それでしたら、1か月分宿泊できますよ。本当は3週間分ですが、お客さん見るからに初めてここをご利用されるので、初回割引き特典で。ああ。夕食と朝食付きサービスもふくんでいま~す。」
なんと、素晴らしいクオリティだ。
少なくとも1か月はこれで困らない生活を送ることができるのはありがたかった。
「じゃあ、それでお願いします!!」
「毎度あり~。そしたら、こちらに名前を書いてくださいな。」
宿帳を渡されたので、名前を書く。
えっと~。この世界の文字が書けるだろうか・・・・・。確かに依頼内容を読むことができたが。
だが、自然と文字が書けてきた。
『シュウ=フォレスト』と。
「はい。シュウ=フォレスト様ですね。それじゃ部屋はこちらね。」
と部屋番号が記載されたカギを渡された。
少し安堵する。住所まで書かされていたら、どうしようかと思ったからだ。
まだ住む場所とかは決めていない。
さすがは冒険者も泊まる宿なのだろう。旅メインの人も居るのだろう。胸をなでおろす。
部屋の鍵を開けると、そこには、ベッドと机と椅子が置いてあった。
また、共同ではあるが、シャワー室もあるそうだ。
十分すぎるくらいの設備だった。
しばらくはここを拠点にすると決めた。
この町に住むことが分かったら、家を決めればいいか。
ベッドに横たわる。
今日は二つの依頼をこなし、回復魔法を確かめてみた。
回復魔法の効果もわかったし、お金も僅かではあるがもらうことができた。
当面はこれで大丈夫だろうと確信する。
とりあえず、この世界のことはまだ知らないので、この間にいろいろと知識を吸収しよう。
明日は、薬草とか錬金の勉強をしてみようかなと思う。
幸いにも、いただいた薬草の本や調合のやり方が記載されている。
よし。この調子で、どんどん、知識の吸収と、ギルドの仕事をするぞ!!
と思いながら、今日はベッドで眠った。
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