神々の世界
それからも信託は続々と続いていった。
そして最後に俺の番が来た。
女神様の像に祈りを捧げた時だった。
世界が真っ白になり意識が暗転した。
「・・きなさい、起きなさいセト。」
誰かの呼びかけによ。俺は目を覚ました。
あたりを見回すがただどこまでも白い世界が続いているだけだった。
そして正面を向いて固まった。
そこには今まで見たこともないような、この世界に存在するであろう様々な美しいものを遥かに超越した、恐れを抱かせるような美を持った女性が立っていた。
「よくきました、セト。まずはいきなりこちらに呼び出してしまった事を謝罪します。」
彼女が何か話し出したのだが、俺はそんなことは気にもならないほど惚けていた。
「セト、聞いているのですか?」
そうして彼女が指を鳴らすとようやく俺は惚けた意識を元に戻すことができた。
「あ、すいません。」
そうしてようやく彼女へと向き直った。
「いいのですよ、それでは私が貴方をここに呼んだ理由をお話ししたいと思います。まずここは神界、神々が住まう世界です。ここでは私以外にも多くの神が存在しています。そしてそれぞれの神には司るものがあります。戦の神なら戦いを、愛の神なら愛を、火の神なら火をという風にです。そして私は彼らの主である大女神です。貴方達に信託を授けているのも私になります。」
彼女はそう話し出した。突然の話に理解が追いつかない。
「そうですね。貴方が理解できるまで待つことにしましょうか。」
彼女はそう言った。まるで俺の考えていることがわかるようだ。
「その通りです。神ならばこれくらい造作もありません。」
彼女はそう言った。どうやら目の前の存在は俺の理解を超えた存在らしい。
「そろそろ落ち着いたようですね。それに理解も早い。それでは続きをお話ししましょうか。私は貴方達に信託を授けていたのですが、まずはこの由来をお話ししましょうか。と言ってもおよその話は貴方達の世界に伝わっているようですね。ある時、貴方達の世界に魔王が誕生してしまいました。あれはただの人に倒せるものではなかった。なにせかつての神が堕ちたものなのですから。魔王、彼はかつて悪を司る神でした。彼は悪を司っていましたが悪人というわけではおりませんでした。しかし、次第にその悪に飲まれていきました。善悪の区別がつかなくなっていったのです。そしてついに彼は悪に飲まれ堕天しました。そして最悪の魔王となったのです。」
魔王が実在したことにも驚きだがそれが神だとは露ほども思わなかった。
「私達は人々に戦う力を与えました。信託によるジョブという力です。これは私達の力の一部を授けています。まぁ、一部と言ってもほんの搾りかす程度の私達からすればとても小さなものです。しかし人の身からすれば余りある大きな力です。貴方達は今までとは比べものにならないほど大きな力を手にしました。そして魔王の眷属である魔物達と戦いはじめたのです。
しかしそれでは神であった魔王を倒すことなどできません。そこで授けたのが勇者というジョブです。ある1人の青年にその力を授けました。清廉潔白で人のことを心から思うことができる優しい青年です。彼に勇者のジョブを授けました。神に勝つための力ですから勇者の力は強大です。だから彼にしか授けることはできませんでした。私達も彼に惜しみなく力を授けましたから。そして彼とこの仲間は見事魔物達を蹴散らして魔王を倒すに至ったというわけです。」
これは少し形は違えど俺も知っている話である。それにしても俺をわざわざここに呼んでこんな話をするくらいなのだから何か続きがあるはずだ。
「その通りです。やはり聡明ですね。見事魔王を打ち倒した勇者ですが彼は亡くなってしまいます。そちらの世界では相打ちということになっていましたね。まぁ、ある意味そうではあるのですが、実際は少し異なります。彼の体が力に耐えきれなかったのです。当然ですよね。神の力そのものなのですから。彼はそこで命果ててしまいました。彼にはこのことを伝えていましたが一瞬も迷いはありませんでした。世界のためにと力を払うことを躊躇いませんでした。」
まさか真実がそうだったとは。このことを伝えるために俺を呼んだのか?
「いえ、ここまでは前振りです。本題はここからです。」