最初の授業
昨日はクラスメイトに試されて大変だったけど、今日から本格的に探偵としての活動に参加する。
どうやら僕にとって初の授業は2人一組で街に出て事件を発見して解決することだ。
事件と言っても都合よく殺人事件に遭遇することは稀で、人探しや忘れ物の持ち主を探すなど平和的なものが多い。
「ねぇ、ルナ! あたしがペアになってあげるよ」
「ありがとう、友達がまだ居ないから助かるよ」
「だと思ったよ、凄くいおどおどしてたよ?」
「周りからはそう映っていたのか……」
不安が前面に出ていたらしく、ルールに気を使わせてしまった。
それにしてもルールの人の懐に入り込む技術は凄まじいな。
友達の居ない僕にとってはありがたい。
ルールとペアを組むことになり事件を見つけて解決するために学外へ出た。
僕は転校してきたばかりで土地勘がないため、ルールが場所を決めることになった。
「うわぁ……。 人の密度が濃い」
学校から3区離れた11区の街へ来たものの、思わず心の声が零れるほど人で溢れかえっている。
やっぱり、昼の街は昼食時間ということもあって賑わっているな。
「よし! 交番近くに行ってみようか」
なるほど、ルールは困っている人達が集まりやすい交番で事件を探そうとしているのか。
確かにこのやり方が一番効率良さそうだな。
早速交番を目指して歩いていると周りをキョロキョロと見回している人を発見した。
ルールが事件の匂いがするというのでその人に話かけることにした。
「何か探しているの? あたし達も手伝うよ」
「えっと、あなた達は誰ですか?」
「あたし達はAPCの生徒、授業の一環で困った人を助けることをやっているんだよ」
「そうなんですか。 ぜひ、お力を貸して下さい」
そして、お互いの自己紹介を済ませて詳しい話を聞いた。
名前は宮越 杏里、第5区にある高校2年生で僕たちと同い年。
どうやら、失踪したペットの猫を探しているということだ。
一週間前にこの街に猫の散歩に来た時、飲み物を買うためにコンビニに寄った隙に失踪したらしい。
コンビニに入る際はリードを縛っていたし水を購入するだけなので3分くらいで出てたにも関わらず、結んでいたリードごと猫が居なくなっていたことから誰かに連れ去られたと疑っているということだ。
「事情は分かりました。 でも、早く見つけないと大変ですね」
僕の言葉の意味にルールは気づいたらしく同意する。
この街では2か月前からペットの失踪届が大量に出ているからだ。
最悪なことに発見されたペットは死体となっていた。
そのことを知った宮越さんは泣きそうな顔になる。
「大丈夫、みんなで協力して探せばすぐに見つかるよ!」
「はい……」
「そういえば5区から11区までの定期券を持っているよね? どうして5区から11区の街に通っているの??」
「この11区には好きなものが沢山あるからです」
それからも宮越さんと雑談をしてお互いのことが多少分かってきたところで本格的に猫を探し始める。
「とりあえず先週の散歩コースを辿りましょう」
「わかりました。 先週はコンビニ、河川敷、公園の散歩コースでした」
宮越さんが提示した順番に猫を探しに行くことにした。
コンビニと河川敷では手掛かりが得られなかったが最後の公園で猫を発見した。
「あ! 猫居ました!!」
僕が公園で猫を見つけたので駆け寄って行き抱きかかえて宮越さんに渡した。
宮越さんはおどおどしながら猫を持ち近くで確認する。
「違います……」
期待が外れ暗いムードになる。
それを打ち消すかのようにルールが口を開く。
「それにしてもルナは猫の扱いが上手いね?」
「僕は猫が好きだからね。 自然と知識や扱い方も染みついた感じかな」
「宮越さんはいつも猫と何してたの?」
「えぇと、最近は熱くなってきたので一緒に水浴びとかしてました」
その発言に違和感を覚えた。なぜなら、猫は体温調節が自分で出来ないため水に濡れることを嫌うからだ。
「じゃぁ、また一緒に水浴びするためにも早く見つけないとね!」
その後も2時間間程猫の好きそうな場所を重点的に捜索したが、見つからないまま元居た交番近くまで戻ってきた。
「期待させたのに見つけられなくてごめん」
「いえ、協力して頂きありがとうございました」
18時過ぎくらいになったので今日は解散の流れになるが、気になることがあったので宮越さんに質問する。
「宮越さん。 2つ質問してもいいですか?」
「はい、かまいません」
「動物と遊ぶのは好きですか?」
「はい。 触っているだけで癒されます」
「この街には毎週来ているようですが、猫が失踪する前は散歩する以外に何をしていたんですか?」
「街を歩くのが好きなのでブラブラしていました」
「ありがとうございました」
あと一歩で猫の事件を解決出来そうなのに何かが足りない。
やっぱり、トレースするしかないのか……。
なるべくは使いたくないけど他の誰かがこの事件を解決出来てない以上、僕が解決しないとこれからも動物の命が奪われていく。
だから、僕は……。
「Trace・on」
何卒、高評価よろしくお願いいたします。