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メツボウ・ゲーム  作者: 七海 わいえーす
3/3

02.雫と湊

「ここは……?」


 凛は気づくと何もない真っ暗な世界に立っていた。脱出を試みようと歩みを進めるが、全く周りが見えない。


「何なのここ……」


 しばらく歩いていると、目の前に謎の黒い影が現れた。その瞬間、凛の身体が一瞬にして強張り、動かなくなってしまった。その影がゆっくりと振り向く。


「……み、美香!?」


 凛は目を疑った。その影は、変わり果てた姿になった美香だった。目はくり抜かれたかのように真っ黒になり、顔からは正規がなくなっていた。凛は変わり果てた美香が少しずつ自分の方に寄ってきていることに気が付いた。


「美香!! 返事して!!」


「あ゛ぁ゛ぁ゛……」


 何度も呼びかけるが、凛の声は全く届いていない。その後ろから現れた犠牲になったクラスメイト達が美香と一緒に近づいてきた。


「何なの……!?」


 体の硬直を振り解こうと必死に体を動かすがびくともしない。その瞬間、一気に美香が近づき耳元でこう囁いた。


「あんたが……殺したのよ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 勢いよく飛び起きた凛。見慣れたそこは学校の保健室だった。


「凛ちゃん……目が覚めてよかった」


「雫……無事だったのね」


 ベッドから起きた凛に最初に声を掛けてくれたのは雫だった。どうやら、保健室にいたことであの惨事に巻き込まれなかったという。凛が辺りを見回すと生存者らしき人物が数名いた。ドアと窓は簡易的なバリケードで塞がれている。


「でもどうして私はここに……?」


「あの……湊くんがね、運んできてくれたの」


 雫が言うには凛が意識を失くした後、致命傷を刺される前に湊が駆けつけて凛を救い出したということ

らしい。


「そうなの……それで湊は?」


「まだ生存者がいるかもしれないから助けに行くって……」


 その言葉を聞いた瞬間、湊を助けにいく、その一心で凛の身体は勝手に動いていた。が、傷は深く間もなく倒れてしまった。


「うぅ……」


「駄目だよまだ動いちゃ……止血はしてあるけど傷深いんだから」


 雫に支えられてベッドに戻る凛。すると突然、保健室のドアがガタガタと揺れ始めた。同時にかすかに声が聞こえる。


「俺だ! 開けてくれ!」


 その声は湊だった。急いでドアを開けに行く雫。バリケードをどかし鍵を外したところで、湊と湊の肩に支えられた生存者と一緒に入ってきた。


「湊……!」


「凛! よかった、目を覚ましたんだな!」


「うん……そっちこそ無事でよかった……もう……会えないと思ってたから……」


「こっちこそ、一人にしてごめんな」


「ううん、雫も見守ってくれてたから……」


 少し微笑む雫。湊の声を聞いた途端、凛の目から涙が溢れ出す。急にこんな非日常に放り込まれて、死の恐怖に直面した凛にとって、涙を流さない方が無理な話だった。


「……で、これからどうするの……?」


 ひとしきり泣いた後、凛は涙ながらに湊に問う。


「それなんだが……!?」


 突然、また保健室のドアが揺れだした。今度はとても大きい揺れで、人間が出せるとは思えないほどの揺れだった。


「なんだなんだ!?」


「どうなってるのよ!?」


 ざわざわと騒ぎ出す生存者達。先ほどまでの安堵とは裏腹に一気に不安の波が保健室内に押し寄せる。

 

「くそっ、ここも安全じゃなかったか……」


「湊くん、どうするの……?」


 不安になり、湊に問いかける雫。すると、また突然、揺れが止んだ。


「待て……様子がおかしい」


 湊の不安は的中した。保健室のドアがバリケードごと破壊され、煙の中に“それ”が姿を現した。


「何……あれ……」


「鄒主袖縺昴≧縺ェ莠コ髢薙?∬ヲ九▽縺代◆」


 今までの虫とは違う、巨大な蜘蛛のような化け物。凛と、生存者達に何度目かの絶望が襲い掛かった。

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