異世界初心者の行く年
今年も後もう少しで終わりです。
今回は本編に直接関係無いっぽい時期モノの番外編を。
寒期から陽期に掛けての、あったかもしんない会話文です。
異世界リヴァイヴァル
寒期 4の月 30日 夜
マイ達の暮らす赤い三角屋根の家の1階リビングにて
マイ達は晩ご飯に年越し蕎麦食べてだらだらお喋り。ルシファーはソファで既にオネム中
「アニスさんに聞いてんけど、まさか≪デカラビア≫に年末年始にするお祭り的なイベント無いなんて思わんかった」
※甘めのカクテル飲んでる
「にゃん」
※甘酒飲んでる
「あー、≪ユートピア≫にはあるぞ?」
※度数高いお酒飲んでる
「むぐむぐ…≪デスペリア≫……あったかな?」
※みかんもぐもぐ
「俺とディルムッドが産まれた≪ユートピア≫は寒期になるとぐっと気温が下がるから、首都エイデンは完全に雪に覆われるんだ。……今頃は雪祭、日を跨いで陽期になった早朝は雪解け祭だ」
「それってどんな祭り?」
「雪祭は、雪降る中外で酒飲んで歌って踊る。……氷のステージで踊り子がくるくる回るのおっさん達が楽しんでるな」
※この時点で一升瓶半分飲んでる
「それおっさんしか喜ばない」
「にゃぐ」
※唐揚げもぐもぐ
「それがちょいと金払えば、刃の付いた特殊な靴と陽気な水の精霊の手助けで誰でも苦労なく氷のステージくるくる回れるんだなーこれが。女児に人気だ」
「えーいいなー!」
※みかんもぐもぐ
「まさかのチート可能なスケートリンク!」
「にゃぐぐ」
※フライドポテトもぐもぐ
「そんで次にあるのが雪解け祭。陽期になって最初の朝は前日と比べてもすっげぇあったかくなるから、山から大量の雪解け水と魚が一緒に川から流れて来る。その魚を、男どもが釣って釣って釣まくる!」
「魚!?」
「別名が魚祭り。何でも寒期の間は山の上も凍ってて、自然と氷で囲われた貯水池みたいなのが出来てるらしい。外敵も少なくて、氷の浮かぶような冷たい水を好む魚がそこで育ってるんだ。でも陽期になるとその氷も一気に溶ける。昔はそれで増水しちまって、鉄砲水みたいに川が荒れたらしい。オマケに折角の魚も水の急な温度変化で弱って死ぬ。死んだら水が濁って、川が汚れる。特に水の精霊達の住む環境に悪かった。だからそうなる前に水の精霊達が川の水をコントロールして、大量の魚をモンスターや俺達に処理させてるんだ」
※ディルムッドから唐揚げとポテト分けて貰いながら一升瓶カラにした
「えーすごいねー!」
※みかんもぐもぐもぐ
「一杯の、魚!」
※酔いからか食欲からか、目付きが怪しい
「≪ユートピア≫は陽期も熱期も他の大陸と比べて気温が低くて、育つ動物と作物が限られてる。だからここぞとばかりに祭で釣った魚は食べきれない分を保存食にして、飢饉用に王族が管理する貯蔵庫に収めるんだ。勿論、傷む前に定期的に冒険者用の携帯食としてギルドで販売してもらったり、国営の宿屋に格安で卸して消費してる。そんで、何で男達が必死になって釣るかっていうと……実は国に魚を納めると、多く納めるだけその年の納税が減るんだよ。家族単位でな。だから毎年、税金節約したい嫁にせっつかれた男どもは必死で釣る。……精霊がコントロールしてくれててもなお荒ぶってる川に、釣竿垂らしては釣り、垂らしては釣りを繰り返し……次の日、男達は全身筋肉痛になって、泣くんだ」
「何その現実」
※正気に帰った
「ぅ、うーん。魔法でお魚集めるのはダメなの?」
「……2人の想像以上の人口密度の中で釣るからな。隣同士肩ぶつかるっていうか密着してる中で釣るから。魔法なんか使ってたら、それこそ災害になるぞ」
「うへぁ」
「ふみ……さかにゃ、いっぱい、つれた」
※甘酒でちょっと酔ってる
「ははっ! ディルムッドは高給取りな軍人だったのに毎年行ってたなぁ! 金関係無いのに、まぁ凄かったぞー。食い意地はって1人で釣竿3本面倒見てたからな」
※新たに一升瓶開けて飲み始めた
「おいしかった」
「「いーなー!」」
※母娘揃ってみかんもぐもぐもぐ
「……まぁ来年、色々と落ち着いたら帰れば良いだろ」
「うんっ楽しみー!」
「……でも、何で≪デカラビア≫はお祭りしないの?」
「み……にゃっ!」
※両頬に手を添え身悶え中
「いやディルなんで照れんの」
「あー……一応この国、起源的に獣の性強い獣人の国だからなぁ」
「……だから?」
「……獣にとって、寒期の終わりから陽期の初めって……恋の季節なんだよ」
「「え」」
「恋人も新婚さんも……まぁ、祭りそっちのけで家に引き篭もるよなぁ?」
「「え」」
「獣人の男どもに言わせりゃ……お祭り騒ぎはベッドの中だけで十分なんだと」
「みゃっ!」
「セクハラ発言禁止!」
「ははっ!」
「???」
※マイに耳塞がれてる
『……まぁ、祭りと言うか、相手居ない同士は酒場で盛り上がってるな…………今年も、終わるなぁ』
おーわーれ!
楽しそうなアニキがセクハラに走ったの見てたにいねぇちゃんが強制終了させました。
それでは皆様、良いお年を!!!




