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87:ギルド前広場7



今回短めです。マイ視点になります。

短い理由はラストのせい。それでも宜しかったらどうぞ。

 



『≪名無しの軍団(ノーネーム)≫『副団長』が自滅しました。『団長』ナナシの出現条件が変更され……』



 私の視界で流れて行くメッセージ。とても大事なメッセージや。

 ……でも、涙で目の前が歪んでよく見えない。



「にゃああああああ!!!」



 抱き留めていた私の腕からディルが駆け出しても既に遅く、ディランの居た場所には血溜まりしか残ってない。ディランが消えたと同時に、装備品も破片ごと消えていた。



「にゃ……とぅ、しゃ……とうさんっ……とうさ……っ!」

『ディラン……』



 ディルは、ディランの血溜まりに膝を落とし、血と混ざった土に爪を立てながら泣いてた。血と泥に汚れながら、消えてしまった父親を想って。ディルの頭上に、声だけ聞こえる小さな背中があるんやと思う。



『まさかずっと……正気で闘ってた、のか?』



 隣に居たキールの言葉に、私は首を振る。多分、それは違う。

 私を殺そうとした時、ディランの金の瞳は氷の様に冷たかった。でもディルに倒された後に見たディランの瞳は……愛しいものを見る……私やサーリーを見るディルと同じ、暖かい金色やったから。感情だけでそこまで印象変わるんやって、本当に驚いて……だからこそ気付けたのに、私は……間に合わんかったんや。



『……っおいディルムッド!』



 緊迫したカールの声に目元を拭うと、性懲りも無く湧き出て来たゾンビ軍団の姿が遠目に見える。町の被害を抑える為、魔石を砲丸として使う小型の大砲をリカルドさんが装備して対応してるけど……。



『ぐすっ……お前の親父さんっ……すっげぇ、良い顔で笑ってただろ! 泣く前に、何で笑ってたのか考えろよな!!!』



 青白マダラ模様の魔導人形スタイルのカールが鼻声混じりにそう言いながら、リカルドさんの応援に向かう。

 私は蹲るディルに近寄り、膝を汚しながら覆いかぶさる様に抱き締める。血と泥で汚れたディルの手を遠慮無く力一杯握りながら。



「ぅう……マイ」


「うん」


「とうさん……わらってた、の」


「うん」


「おれ……おれ、たち、みて…………わらって、くれた、の」



 ぴちゃ、と私の体の下で濡れた音がする。



「うん」


「おれ……かなしぃ、けど……さみしい、けど…………っうれしかった、の」



 血溜まりに、涙の滴が落ちる。



「……うん」


「とぅさんに、また、あえて…………わらって、くれてっ……うれしかったのぉ」



 血溜まりに落ちる滴の音が、止まない。

 私は心なしかへたれた虎耳に頬擦りした。



「……うん。笑顔の素敵な、お父さんやったね。……きっとお父さんも、ディルに会えて嬉しくて、……おっきくなって、かっこ良くなったディルに会えて、……嬉しくて、笑ってたんや」



 絶対そうや。じゃなかったら、あんなに可愛く嬉しそうに……ディルが、私とサーリー両腕に抱えてうにゃうにゃ鳴いてる時みたいな、幸せ一杯って顔で、笑えない。



「にゃ…………ぅ、うん……うんっ、うん!」



 ディルは私の腕の中で何度も何度も頷いてから身動ぎして、私と一緒に立ち上がった。顔が涙と鼻水、あと血とかでどろどろだったので魔法で水を出しながら手と顔をタオル地のハンカチでしっかり拭ってあげた。



「……少し、休む?」



 遠目にヒューリッヒさんがあの大きな魔力玉の準備をしてる。また一斉清掃並みの蹂躙が始まるんや。

 ……それならもう少しだけ、ゾンビ軍団はリカルドさん達に任せても大丈夫と思う。

 それでもディルは、ぶるぶる小さい子の様に首を振る。



「今は闘ってる方が、良い。……俺、もぅ大丈夫! だからマイは、サーリーと一緒に≪結界≫の中に居てね」



 ナナシやっつける! と鼻息荒くやる気を見せてくれながらディルがそう言ってくれた。

 ……うん。やっぱそうなるよなぁ?



「………………う、うん分かった。サポートは任せて。でも、その……あの、落ち着いて聞いてくれると嬉しいねんけど……」


「……にゃ?」




 私の話を聞き1分間しっかり硬直した後、ディルによるリカルドさん殺害未遂が発生しました。




『≪名無しの軍団(ノーネーム)≫『副団長』が自滅しました。『団長』ナナシの出現条件が変更されました。残り3時間の間に条件を満たさなければ≪名無しの軍団(ノーネーム)≫の完全勝利となり、選ばれた周辺地域の生命ある生物のアンデッド化が開始されます。繰り返します……』




 こんな大変な時の人手不足程、困ったもんはありません。私1人では無理だったので珍しく美貌のエルフも手助けに入ってくださり事件は何とか未遂に終わりました。




「俺の子供だもん! 血は繋がってなくても俺の子供だもん! リカルドが勝手な事するにゃあ!!!」


『るるるぅ……ディル、それダメなの……!』


「ディル! ストップストップ!」


「今、此奴の火力は必要だ。煮て焼いて斬り刻むのは事が終わった後にせよ」


「だからヒューリッヒ何言ってんの!!?」





 うん。そりゃ心配やんな。

 ディランと闘ってる最中に、ルシファー置いてサーリーが1人で()()()()と行っちゃったから。


 私も頑張って止めてんけど戦闘中やったから……はい言い訳しませんごめんなさい!





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― 新着の感想 ―
[一言] ………(# ゜Д゜)←リカルドに突き祟る憤怒のマナザシ 終わったら…?そう、終わったら揚げて蒸して焼いて煮ても宜しいんでございますね?よござんす!チャーシュー並みにぐるぐる巻きにして吊るし…
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