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鼻血を我慢しながらの夕食を終え、後片付けをささっと済ませて早めの就寝準備を始める私達。
そして、ディルムッドさんが私に自分の毛布を押し付けて寝かし付けようとしている様だと感じた私は、断りの意味を込めて首を横に降る。
ふふ。ディルムッドさんは優しいなぁ。
でも大丈夫。
実は、料理する時に≪アイテムボックス≫確認したら、色々あったから。
調理器具は家で使ってたのが色々入ってたし、しっかりした毛布も神様が支給してくれてたみたいやし。
……それ以前に。
真夜中に活性化するモンスターを見張るなんて事、私がいる限りしなくて良いのですよ!
「こういう時の為にあるスキルでしょ!」
私は脳内で自身のステータスに集中した。
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●谷山麻依 (マイ)
●レベル:1
●HP:510
●MP:600
●力1
●魔1
●守8
●護8
●早1
●運10
≪特殊スキル:結界≫
スキルMax
自身、又は任意の人物や物体を中心に物理・魔法攻撃を無効化する結界を展開
少しの痛みも感じたくない人向け
特殊スキルレベルUPによって結界の範囲拡大、強度も上がる
単体・複数・広範囲と選択可能になる
スキルMax特典
モンスターが近寄ってこない≪聖結界≫使用可能(要聖属性)
対象1人につきMP100使用で約12時間持続
――――――――
これが、今の私のステータス。初心者なので、勿論レベル1。
他の人は見ることは出来ない、私の個人情報。
個人で見え方が変わるらしいけど、私の目には昔ながらのRPG仕様のステータス画面に見えてる。
そして、私の使いたいスキルは≪聖結界≫!
うふふ〜。
そうなんです。一部のスキルは、スキルポイントMaxにすると特典が付くんですよ〜。
戦闘能力に自信の無い私が、モンスターが存在するこの世界で単独行動希望出来たのもこの≪聖結界≫があったから。
「ディルムッドさん。私のスキルに≪聖結界≫というのがあるんです。モンスターが近寄れない結界らしいので、見張りは必要無いですよ!」
「!」
私の言葉に、声ではなくピーンと立ち上がる尻尾(勿論2倍に膨れてる)で返事をするディルムッドさん……ああ、その尻尾もふりたい。
どうしよう。 男の人なのに……てか殆ど初対面なのに……なんでこんなにかあいく見えてしまうの私の眼球。
もっさりな前髪の隙間から見える、金色の猫目(あ、驚いて瞳孔開いてる)も綺麗でカッコよくて可愛くてって……私、今にもキュン死しそうです!
「せ、≪聖結界≫!」
まさかの初スキル発動、鼻血を我慢しながらかあいい尻尾ガン見って特殊な状況になるとは私も思わなかったけど。
何とか≪聖結界≫を発動させると、私とディルムッドさんの体が一瞬だけ光輝いて、すぐに収まった。
……え、これだけ?
……ホンマに、これで大丈夫なんかな。ちょい不安。
『不安なら、自分のステータスを見てみたら良いよ』
あ、天の幼女の声もとい、神様の声が聞こえる!
なら一回確認してみよ!
――――――――
●谷山麻依
●レベル:1
●HP:510
●MP:500
●力1
●魔1
●守8
●護8
●早1
●運10
状態:聖結界(あと約12時間)
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あ。ちゃんとMP減ってるし、半分に軽減されてる。
状態も≪聖結界≫になってるし、成功やな!
ディルムッドさんにもステータス確認してもらうと大丈夫だよ、と言いたげに何度も頷いてくれた。
「さ、これで大丈夫ですよ!」
私も神様とか高校生とか可愛すぎる獣人さんとのふれあいでお疲れです。キュン死一歩手前だったのでしっかり脳みそと心臓休ませたい。
今日はもう疲れたので、明日の朝に詳しく説明するとディルムッドさんにも約束し。
そのまま、焚き火から少し離れた大木の幹と根に腰と背中を預けて就寝。
……………………の、はずやってんけど。
「……ぁ、ぁ、あの、ディ、ディルムッド、さん?」
「?」
「ぁの、あの、ですね? こ、こここれは、ふ、普通ではないと」
「?」
何故か現在。
私はディルムッドさんの逞しい太腿の上に乗せられ、触ると分かっちゃう筋肉たっぷりの胸板を背凭れにして座っています。
ディルムッドさんは、それのどこがおかしいの? って感じで首傾げてるし……えなんで私がおかしいの!?
い、いや落ち着け思い出せなんかあったはずやから!
た、確か……始めは、≪アイテムボックス≫に入ってた毛布に包まって太い木の幹を背凭れにしてたのに。
この場所は森の中って言っても、野営地用に作った広場みたいになってる。広くもないけど、狭くもない。
そんなに建築に詳しくないけど……2DKくらい?
そんでディルムッドさんは私の数メートル視線の先、焚き火近くの岩に体を預けていて……。
私は……確か、お尻と背中に違和感あるけど、我慢出来ない程じゃないから慣れの問題やなぁとか。
服着て毛布かぶっててもちょっと寒いなぁとか思いながら一回鼻をすすったら……。
(よいしょ)
「え」
(こらしょ)
「え」
気付いた時には近寄って来ていたディルムッドさんが木の根っこに腰掛け、私を自分の太腿に乗せ……背後から抱き込む形で毛布に包まってた。……だからなんでや!?
乙女の秘密が詰まったお腹の所に腕を回されてるから不用意に立ち上がれないし、それに……ひ、左頬がくすぐったい。
私の左腕にディルムッドさんのふわふわ尻尾が巻き付いてて先っぽが頬くすぐってて何なのどうしていきなりご褒美イベント発動してるの何処でフラグ回収したの私!!?
「…………さむい」
「ふぇっ」
あわわわディルムッドさんは知らないでしょうけど耳元でその声は凶器です!!!
「俺がさむい、から…………くっつくの、ダメ?」
「ダメじゃないです!」
「……へへ」
(にぱ〜)
「ぅぐうっ」
ああ、耳元の囁きで瀕死やったのに。
心なしか悲しげな表情で首傾げながらの「にぱ〜」がトドメの一撃に。
……どうしよう。
ディルムッドさんが、会話すればする程かあいい人になってる。
ぱっと見、前髪もっさりなムキムキ武闘派獣人やのに。
見た目と中身のギャップが、ヤバイ。
……その声と男前な顔で甘えん坊って、可愛すぎるからぁ!!?
「……おやすみ、マイ」
「……お、やすみ、なさい」
ご機嫌にめっちゃ喉鳴らしながら、尻尾も腕も絡めてくるディルムッドさんの腕の中。
……確かにめっちゃあったかい、とか考えてる内に私は寝ちゃいました。
意外にずぶとい性格してたみたいです。私。
しってるか、マイ
きんにくは、あったかいんだぞ(笑)
追記
内容はほぼ同じですが、少し書き直しました。あんまり変わらなかったですorz