83:ギルド前広場5
今回は虎にゃんことにいねぇちゃんコンビです。スキルの説明多いお話です。そして戦闘はヘタッピです。第三者視点です。
それでも宜しかったらどうぞ!
『行くぞディル!』
「にゃんにゃっ!」
ディルムッドの頭上にふよふよと浮かぶ精霊は、眼前の敵を見据えながら声を張り上げる。
その声にやる気が満ち溢れた虎にゃ……ディルムッドは、精霊の言葉に大きく頷きながら父だった動く屍、ディランに斬りかかった。
ディルムッドの戦闘での強みはただの通常攻撃が一撃必殺となる攻撃力と、槍と大剣、弓に盾とリーチの違う両手武器や多彩な攻撃手段による手数の多さである。スキル≪アイテムボックス≫を持っている為、装備変更の手間が少ないのも強みと言える。
幼い頃、ノーランの鍛錬する背中に憧れたディルムッドは親鳥を真似る雛の様に鍛錬に勤しんだ。そして自身の特殊スキル≪武芸者≫による物理ステータス向上に両手で違う武器をと考えたディルムッドは、ノーランとノーランの父に剣の手解きを、ユーリディア王子を背に庇うアルフレッドを槍の師匠とした。
猫系獣人特有の軽い足運び、ディルムッドは長い手足を活かしながら武器を振るう。漆黒の大盾で防がれ避けられ、それでもしつこく渾身の力で心臓を貫こうとリーチの長い聖槍で狙い、避けられればそのまま横に薙ぎ払う。
「しゃあっ!」
「……っ!」
ディランの素早さならこれも避けられるのは想定内。ならばと逃げる場所に当たりをつけていたディルムッドは予想していた場に、一刀両断に大剣を振り下ろした。
「!」
「にゃっ!」
しかしディランはディルムッドのこの一撃さえ、腰を落とし頭上に掲げた黒い大盾で受け止めた。しかしディルムッドの一撃の威力も相当なのか、ディランは足を地面にめり込ませ耐えていた。
ならばとディルムッドはこの大盾を蹴り上げ、ディランの喉元を聖槍で素早く突く。しかし身を傾けただけで避けられたディルムッドはディランの足払いを受け、あの素早さを生み出す豪脚による蹴りで地面から足も離れ数メートル蹴り飛ばされてしまった。
しかし、猫の様に中空で1回転しながら両足で着地した為問題無かった。……しかし本来ならここで追撃があっても良い筈なのに、ディランはその様な事はせずその場に棒立ちしている。それが一層、ディルムッドの中で眼前の屍を予測不明の存在として認識せざるを得ない状況にしていた。
異世界≪リヴァイヴァル≫のスキルは多彩である。何らかの条件で発動するスキルも存在する、と聞いた事があるディルムッドは一層緊張感を高めた。
「ディルっ!?」
「にゃっ、大丈夫!」
マイの心配する声がディルムッドの背中にかかる。振り返る事は出来ないが、それだけでディルムッドの背筋は伸びる。愛するツガイが存在するだけで、ディルムッドの気迫も増していた。
そして、終始ディランを観察していた精霊は1度大きく頷きながらディルムッドへ口を開いた。
この双子が戦場で揃う時、作戦を考えるのは精霊の役目だった。
『むむぅ…………良しっディル! お前がお宝指定した、毒色のイロモノ槍に今すぐ装備変更!』
「にゃ……? ……みっ、にゃにゃにゃ……!」
しかし片割れである精霊の言葉に、どの槍か思い当たったディルムッドは顔色を悪くしながら高速で首を横に振りたくった。その様子は、宝物を奪われたくないただの幼児。
気迫は、一瞬で消えた。
これを見た精霊は、白い頬をリンゴの様に真っ赤にしながらディルムッドの頭をぽこぽこと小さな拳で叩いた。周囲に精霊の姿が見えない事は、ディルムッドにとってある意味救いだったと言える。
『ええいっ武器マニア根性出すな! また手伝ってやるから言う事聞け! ……それに、小旅行気分でお前の嫁と娘をあの場所に連れてったら喜ぶから! だから嫌がらず、さっさと装備しろ武器マニア!』
「みっにゃい!」
叩かれた所で痛くも痒くもなかっただろうが、マイ達を引き合いに出したらコロリと態度を変える弟にこめかみを押さえた精霊は、しかし聖槍と大剣を片付け、青紫色の毒々しい装飾が施された槍のみが装備された事にほくそ笑む。
『さあ、行くぞ……ステータス・魔を全てステータス・早に! ≪再振り分け≫!!!』
「っ……≪ゲイル≫!!!」
精霊の言葉、スキルに反応する様にディルムッドが纏う清らかな白い光に一部、灰色の挿し色が混ざる。
直後、ディルムッドの眉間にシワがよるがそのまま素早さを上げる≪ゲイル≫を使用し……先程と比べても、段違いの速さでディランへと特攻した。
これは精霊の持つ特殊スキル≪再振り分け≫による効果。
この特殊スキルは味方のHP・MP・運以外のステータスを一定時間弄れるスキル。ポイントをMaxまで振り分けられている為、強化時間は5分間である。
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ディルムッド
●レベル:69
●MaxHP:1950/1450
● MaxMP:800/540
●力90(+70)
●魔53(−53)
●守81(+20)
●護53
●早83(+53)
●運64
―――――
この様に今のディルムッドは、自身の魔を早に振り分けられ素早さを限界突破している状態である。
これだけ見ると有用だがもちろんデメリットもあり、この特殊スキルを使用された相手はHPを一律500削られ、また強化されている5分間は回復魔法を受け付けない。乱発すれば死ぬ可能性もあるので、強敵のトドメを指すその時に使うのが2人の決め事だった。
「っしゃあああああああっ!!!」
一撃、一撃が先程よりも素早く勢いのある数十の槍の連撃に、ディランは避けて大盾で防ぐ所で間に合わず、重量感のある漆黒の鎧の右肩上部を青紫の毒々しい槍に貫かれた。
しかしこの攻撃は鎧部分、それも飾りが壊れただけで肉体には何のダメージも無い様で、ディランは気にせず黒光りする剣で応戦しようとした。
しかし、この時。
『今!!!』
「『コカトリス』発動!!!」
ディルムッドの声に反応し鎧を貫いた青紫の槍の穂先に、男の手のひら程の紫色の魔法陣が現れた。その中央には金色の目玉が出現し、ディランは槍の穂先を己の漆黒の剣で払った。
この瞬間、精霊は自分達が賭けに勝った事を知った。
目玉はぎょろぎょろと回転する様に周囲を見回し、ディランの貫かれた鎧と装備された剣を見つけた途端……この目玉は弾け、その肉片が周囲に飛び散りディルムッドの槍とディランの鎧と剣を汚した。
ほんの、数秒にも満たない時間。ディランはディルムッドへと剣を向けるが……。
「……っ!?」
ディランが気付いた時には、その手に持つ国宝級スキルを内包する漆黒の剣は、無残にも虫食いの様に剣先を消失させていた。
同時に、ディルムッドの手にある槍も砕け散る。
ディルムッドが装備していたのは『コカトリスの邪槍』と呼ばれる、武器などの装備品を破壊する呪われた槍。魔法陣から現れたのはコカトリスの目玉、その肉片が呪われ破壊される装備品の目印となる。コカトリスの邪槍と相手の武器は否応もなく破壊されるが、鎧や兜等はコカトリスの邪槍で傷付けられる耐久の物に限られる。
デメリットはこの槍を2本以上わ同じ場所、≪アイテムボックス≫等に保管すると同様に所持している装備品全てが破壊される事と、1度の使用でコカトリスの邪槍そのものが破壊される事である。
『ステータス・護を全てステータス・力に! ≪再振り分け≫!』
ディランの動揺を精霊はチャンスとし、ディルムッドの負担も覚悟して先程と同じ特殊スキルを発動させた。
『……今だマイ!!!』
「は、はいっ! ≪セイント・ジャッジメント≫!!!」
後方、ギルドに展開された≪結界≫の中に居たマイは……聞こえたらしい精霊の言葉を合図に、聖属性最強の広範囲攻撃魔法を放った。
自身の下に輝く白銀の魔法陣と光の剣に、ディランの動きは恐ろしく鈍る。
精霊は、ディルムッドの髪をぐしゃりと無遠慮に握る。
それに、ディルムッドは「俺は平気」と呟いた。
その言葉に覚悟を決めた精霊は、自身のもう一つの特殊スキルを発動させた。
『……っ頑張ってくれ、ディル! ステータス・力を≪倍加≫!!!』
特殊スキル≪倍加≫、この特殊スキルは味方のHP・MP・運以外のステータスを文字通り倍加するスキルである。50pでMax、3倍になる所この精霊は30pまでポイントを使用した為2倍となる。
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ディルムッド
●レベル:69
●MaxHP:1950/95
● MaxMP:800/540
●力90(+70+53)←倍加により2倍
●魔53(−53)
●守81(+20)
●護53(−53)
●早83(+53)
●運64
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現在≪再振り分け≫の効果がある為、ディルムッドの力は合計213。その2倍は426。武器を装備した状態の攻撃力は500を優に越える。確実にディランを倒す為の精霊の奥の手だった。
しかしこの能力にもデメリットがあり、この特殊スキルを使用された相手の残りHPの9割が削り取られる。≪再振り分け≫を2回使用した為、残りHP950となっていたディルムッドは瀕死の苦しみを味わう事となる。
「っぐふ、げぇっ……が、あああああああああああっ!!!」
聖属性の大剣と聖槍を装備し直したディルムッドは、口から血を吐きながら左手に装備した大剣を渾身の力で振り下ろす。
ディランは風の切る音を感じ受け止めようと大盾を構えていたが、このディルムッドの一振りは大盾を叩き斬り、その下にあったディランの右肩……それもコカトリスの邪槍によって虫食いの様に鎧の一部が消失し、むき出しだった右肩に食い込み……ディルムッドはそのまま、左脇に掛けてディランの体を斬り裂きその下の地面さえも叩き割った。
やっぱり週一投稿さえ出来なかっ…年末に向けて仕事忙しくなったらもっとこうなるのかとか今から怯えてる私が居ますorz
そして今回予約するの忘れてた…生暖かく待っていてくれてるかもしれない優しい方々すいませんした(;ω;)
しかも投稿してない時にも誤字修正してくれてる人が居て…ありがたやありがたや。
細く長く続く様頑張ります!




