表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/149

78:ギルド前広場2


ノーラン達の居る北門周辺から、今回からしばらくマイ達の居るギルド前広場で話が進みます。マイ視点です。

時系列はギルド前広場1の続きになってます。

それでも宜しかったらどうぞ。


 


 ノーランとルシファーが、天高く昇る火柱の側で戦ってる。サーリーにそう言われた私は一気に不安を煽られた。


 私のスキル≪結界≫は自他共に認めて万能やと思ってる。

 ……それでも、スキルの性能はレベルやステータスで左右されやすい。相手が強敵だった場合、紙の盾あるだけみたいな効力しかなかったら……。



「大丈夫! ノーラン、強い!」


「……ディル」


「マイに守ってもらってるのに、ノーラン負けたりしないっ!」


「……うん!!!」



 双子が黒い魔導人形に突撃した為、ギルド周辺に展開した≪結界≫のすぐ外側で敵を屠るディルがそう叫ぶのに、ディルの背後を取ろうとしたゾンビに攻撃しながら、私は大きく頷いた。


 あかん。不安になるな。

 気弱になったら、まだまだ素人に毛の生えた様な私は隙を突かれる。

 そしたら……大事な大事な私の家族を、奪われる。

 そんなん、絶対許さへん!!!



「にゃ……ヒューリッヒ! さっきの魔力の塊、今も出来る!?」



 目の前のゾンビ数体を、槍を振り回しながら大剣で首を刈り取ったディルが叫ぶ声に、私の背後で魔力を練っていたヒューリッヒさんは小さく頷く。



「ああ、今出来たが?」


「それ、頂戴! リカルド、カールとキール、ギルドの≪結界≫中まで呼び戻して!!!」



 だっ、と戦線離脱し≪結界≫の中に戻って来たディルに言われたリカルドさんは、拡声器っぽい魔道具片手に双子に指示を出し始めた。ちなみにさっきの大砲による魔法攻撃はヒューリッヒさんの都合だけじゃなく、リカルドさんの体の負担もあって連発出来ないらしい。

 双子はある程度損傷させた黒い魔導人形を地面に転がしてから、ゾンビを蹴倒し戻って来るみたいや。



「ディル、どうするの?」


「ゾンビ、広場いっぱいで動き辛い! これじゃ走れない!」



 サーリーの問い掛けにそう返事をした後、ヒューリッヒさんに近寄ったディルはすぐに軽い身のこなしでギルドの屋根に登っていった。

 そして、ヒューリッヒさんの手から魔力の塊が消えていた。



「え、魔力の玉は???」


「もう渡したぞ。何ぞ、赤黒い禍々しい槍に吸わせていたが」


「「へ?」」



 槍って、魔力、吸うの?


 私とサーリーの疑問に、リカルドさんは何か気付いた風に慌ててこちらに視線を向けた。



「マイっ、ギルドの≪結界≫二重にするんだ、今すぐ!!!」


「え!? あ、はい!?」



 私は首を傾げながらも、4メートルの範囲でギルドを包んでいる≪結界≫とは別に、その内側、正面から2メートル範囲でぐるっとギルドを包む様に≪結界≫を発動させた。外側はゾンビがうようよ居て無理やったから。

 私がその旨を伝えると、リカルドさんは私達とヒューリッヒさん、そして戻って来た双子(スライム装備中)を内側の≪結界≫に押し込み……。



「……全員、耳を塞げえっ!!!」


「ふぅしゃああああああああっっっ!!!」



 リカルドさんの号令の後、ディルの雄叫びが聞こえ。



「……っゲイ・ボルクぅ!!!」



 え、と思った次の瞬間。

 目の前の大地が揺れ、次いで爆音。

 ……どうやら、ディルが私も初めて見る赤黒い槍をゾンビのウヨウヨ居る広場に投擲した、らしい。遠目でも分かる、黒い雷を纏うその槍周辺の大地が小さなクレーター状に凹んでる。しかし、それでもひるむ事なくギルドに押し寄せようと進むゾンビ達……その頭上へと、今度は血を塗りたくった様な、紅い紅い槍が降り注ぐ。



『『あばばびばば……』』

「え? なに? なに?」

「サーリーは、見なくて良い」

「ぅっぷ……す、凄まじいな」



 ディルが装備していたのは突けば心臓を貫き、投擲すれば30の(やじり)にもなると私がオタク故に聞いた事がある伝説の槍『ゲイ・ボルク』やと思うんやけど……。



「いや、余裕で30超えてるやん」



 漏れなく敵に1本。魔力で出来た紅い槍で頭から串刺しにされていく哀れなゾンビ軍団に、ちょっぴり同情してしまった。リカルドさんの心配をよそにギルドの≪結界≫はノーダメージやった。セーフや。

 ……ヒューリッヒさん。サーリーの目隠ししてくれて、ありがとう。

 口から魂抜けて逝きそうになりながら、私はヒューリッヒさんにこっそり頭を下げた。



 数分後。



「……にゃぅ、広くなった!」


『『いやそういう問題!?』』



 ギルド周辺に(ひし)めいていたゾンビ軍団はすっかり消え失せ、私達の眼前には荒れ果てたギルド前広場のみという状況。おそらく、裏手もこんな感じやと思う。

 屋根から降りて来たディルの第一声に、双子が突っ込むのもしょうがないと思う。



「≪ユートピア≫の白虎も大軍に強いとは聞いていたが、いや〜流石だな!!!」



 リカルドさんの褒め言葉に、ディルは照れた様に頬を赤らめながら首を横に振る。



「ううん。()()のゲイ・ボルク、ホントはもっと範囲広くて、強い攻撃なの。……でも今のステータスだと、これぐらいだと思ったから……」


「成る程。あの槍は魔力依存の武器……お前のかつての相棒はリカルド並みか、それ以上に魔が強いタイプであったか」


「にゃ!」



 大きく尻尾を振りながら、ディルは笑顔で返事をしてる。

 かつての相棒……それは今も眠ってる、ディルの片割れであるにいねぇちゃんの事やね。



「ディル、凄い! ゾンビ一気にいなくなった!」



 そう言ってディルの腰に抱き着くサーリーの可愛さに癒される私の耳に、ピコンピコンピコン、という音が届く。

 一昔前の、メールの受信音みたいな音……まさか!?


 そして私の目の前に突然展開された、半透明のメニュー画面に、表情が強張る。



『パーティー≪ニクジャガ≫ モンスター討伐数400体達成。ギルド前広場にて≪名無しの軍団(ノーネーム)≫幹部『副団長』を確認。パーティー≪ニクジャガ≫が確認済みの幹部は『空帝』、『副団長』となりました』



「は、はあっ!?」


「あっ、あそこ見て!」



 私が与えられた情報に呻いた時、サーリーが荒れ果てた広場を指差す。


 ギルド周辺に展開した≪結界≫から数メートル離れた地面に、紫色の光で描かれた魔法陣が現れ……そこからゆっくり、黒い泥の様な魔力と共に言葉通りにゅっと現れたのは、黒光りする鎧を纏う騎士やった。



 今まで相手していたゾンビ軍団は、ズタボロの装備やほぼ裸で腐ってますよ〜が雰囲気で分かる風体やった。

 でも今出て来た……おそらくゾンビやと思うんやけど、目の前の黒騎士はしっかりと手入れされた真っ黒い鎧と剣、そして大盾を装備してる。

 私がスキル≪鷹の目≫でよく確認しても、見えてる首筋とかの肌の部分はゾンビらしくない滑らかさや。


 顔は……兜やなくて、顔面をすっぽり覆う鉄仮面。おそらく大型肉食動物の顔をイメージした模様が刻まれ、耳っぽいとんがりが鉄仮面上部に2つにょきっと伸びてる。周囲を確認する様に首を左右に動かした時に見えたのは、適当に伸ばした黒髪をノーランみたいに襟足部分で引っ詰めてて……うん。ノーランみたい、っていうか、ぱっと見ノーランに見えたやんかっ体格というか骨格が似てるっ!

 もう、心臓に悪い…………っていうかノーラン達何と戦ってんの幹部の空帝って何!!?


 そんな風に私が1人、脳内で憤っている間に準備の整ったディルと双子が新たに現れた敵に突撃していく!



「あっ……っディル、気を付けてっ! そいつ≪名無しの軍団(ノーネーム)≫の幹部、副団長らしい!!!」


「……っ分かった! カール、キール!!!」


『はっはぁ! 幹部がっ!!!』


『なんぼのもんじゃあっ!!!』



 初撃は、双子。

 3メートル程の青白まだら模様な魔導人形スタイルで突進した双子は、動きにくそうな見た目とは違い俊敏で手数も多い!

 それでも敵の黒騎士は副団長の名に恥じない実力らしく、全ての攻撃を自前の禍々しい大盾で防いでる!



『キール!』

『おうっ! ……ほらっこっちだっ!』



 ここで一瞬、私は双子の片割れ……おそらくカールの所在地が、目の前で行われている戦闘の筈なのに分からなくなり、キールだけが浮き彫りになる。……これは、双子がそれぞれ持ってるスキル≪隠密≫と≪陽動≫の相乗効果!



「しゃぁっ!!!」



 ディルも≪陽動≫を発動させた状態で追撃!

 新調した槍で突いて、突いて、突きまくる!

 数分の攻防。そして、副団長の背後に……。



「……っ!!!」



 ここで黒騎士の鎧の継ぎ目に大剣を突き刺す、カールの姿が現れた!

 どうやら≪隠密≫は攻撃に転ずると効果が切れるらしいけど、ディルとキールが邪魔で黒騎士も防げなかったみたいや! 連携プレー凄い!



「わあっ、もうやっつけた!」


「……いや、様子がおかしい!」



 飛び跳ねるサーリーと険しい表情のリカルドさんの言葉で、カールが不自然に固まり動かなくなっているのに私も気付く。



『こ、こいつ……ありえねぇ位堅いぞ!!?』



 そしてカールの動揺は隙となり、魔導人形スタイルという巨体でも副団長に簡単に蹴り飛ばされてしまった!


 あの身のこなし……まさかカールの渾身の一撃、副団長の鎧の継ぎ目に刺し込んだのにノーダメージやったって事!?



「にゃ……っキール! カールと一緒に≪結界≫に退いて!」


『……悪いっ!』



 おそらくカールを担いだキールが、ダッシュで私達の居るギルド正面入り口に戻ってくる。

 ……黒騎士に蹴り飛ばされたカール、ぐったりして動かへんやんか!!!



『旦那っ! カールに()()()出たから少し休ませてやって!』


「分かった。……ブルーム、1回離れろ」



 そうしてキールはディルと副団長の戦闘に加わる為に戻り、ヒューリッヒさんの言葉に反応した青白まだら模様の鎧が溶ける様に剥がれ落ちて……顔を真っ赤にして息を乱すカールが現れた!



「悪いな、旦那……」


「カールっ! 苦しいんか!? ……≪アンヘル・ヒール≫!」



 私は全状態異常とHPを回復してくれる≪アンヘル・ヒール≫を使ったけど……カールの状態が、何も変わらない!?



「ど、どうして!?」


「ブルームに寄生されると、寄生された者の身体能力が向上する。……その代償に、この様な全身筋肉痛に近い副作用が現れる。回復魔法の効果は薄いぞ。……カールとキールはブルームとの相性が良く、副作用が出るまでの時間も長く、症状自体とても軽いから問題無いぞ?」


「全身筋肉痛!? いや、え、これで軽いん!?」



 どう軽く見ても重病人っぽいけど!?



「ああ。リカルドの場合は、1分で全身筋肉痛となってその後1週間動けなかった。……私自身も試したが、似た様なものだった」



 それでもそんな危ない事、と私とサーリーがヒューリッヒさんを睨んでいたら、カール本人が寝転がった状態から何とか起き上がり、自身の≪アイテムボックス≫からエーテル出して一気飲みし始めた。



「……ふぅ。マイ、サーリー、心配ありがとうな」


「無理したら……」


「いや、エーテル飲んで少し休んだらまた動ける様になるから。それに、旦那から貰った護符も服の下に着けてるから前よりも回復早いんだ」



 サーリーの言葉に、カールは笑って首を振った。護符……そう言えば、ギルドの応接室で顔合わせた時に何か渡されてたな。布っぽいの。



「それよりあの黒騎士だ……副団長だっけか。アイツの防御を何とかしないと。ディルムッドのアホみたいな攻撃でも無傷は異常だ!」



 眼前では、ディル達の猛攻に耐える副団長の姿。


 ……そうや。ディルのステータスは物理特化されてる。敵は、それに耐えてる。……それなら、次にすべきはドーピング!



「サーリー! 私とディル達の攻撃力上げて!」


「分かったっ……ステータス・アップ! ≪カオス・ミッドナイト≫!」



 ふわん、と私を紫色の光が覆う。

 これはディルお得意の≪ゲイル≫と同じ、攻撃手段だけじゃなくステータスだって上げてくれる闇魔法! 物理、魔法攻撃どちらも上がる優れものの魔法や!

 私の後、少し距離はあったけどサーリーはディル達にも同じ魔法を使ってくれた。

 ……良し。私達の攻撃力底上げ、完了!!!


 そして性懲りも無く、ぞろぞろとゾンビも集まって来て戦ってるディルにちょっかいだそうとしてるし!

 ……一生懸命戦ってるディルの邪魔する可能性大なお腐れ方には、退場してもらいます!!!



「……くらえっ≪セイント・ジャッジメント≫!!!」



 私の叫びに、ディル達を中心として大地に巨大な光り輝く魔法陣が出現! そして白く輝く光の剣が魔法陣から現れ、魔法陣の上に存在する敵……ゾンビ達と副団長に襲い掛かる!!!


 光の剣に触れた瞬間搔き消えるゾンビと違って、鎧姿の副団長は流石に五体満足や。でもやっぱりゾンビらしく、聖魔法の攻撃に動きがすっごく鈍くなってる!



「ディルっ、いっけーーー!!!」


「……ふぅしゃああああっ!!!」



 そして、首を狙ったディルの攻撃を……副団長は器用に鉄仮面で受け止めた! おお惜しいっ!

 でも次いで、ばきゃん、と音立てて鉄仮面は砕けた! ……よしっ、これでもう同じ手では防げない!



「ディルっ! ……え、ディルっ!?」



 私の視界の先に、鉄仮面を砕かれた副団長の顔を凝視し微動だにしないディルの背中。なんと槍と大剣を、だらりと下げて無防備にしてる!!?


 案の定、ディルは副団長の攻撃……大盾での突進に耐えられず吹き飛ばされ私達の居る≪結界≫の中まで飛ばされた。

 キールもディルを追い掛け戻って来る。


 ……副団長は、追撃もせずその場から動かない。

 多分、現れた場所から殆ど動いてない筈や。もしかしたら制約とかあるんかもしれん。……それよりも!




「どうしたんディル!?」



 戦闘中にディルが気を抜くなんて、そんなん有り得へんのに!



「にゃ……にゃ…………ふみゃぁああああああっ!!!」



 ディルは、放心した様にぼんやりとした表情を浮かべた後。

 ……私は初めて、その金色の瞳を涙で一杯にして号泣するディルを見た。


 そして、まるでディルの叫びに呼応する様に、遠くの空にまたも天を焼く様な火柱が昇る。



「みゃあああああああ! みぎゃああああああああっ! とうさんっ! とうしゃっ! にぎゃあああああああとうさああああん!!!」



 ディルの叫びに戦慄した私達全員が、広場に向き直る。



 私の広範囲攻撃魔法によって、広場にゾンビ軍団の姿は無く立っているのは副団長のみ。



 砕かれた鉄仮面の下に隠されていた顔は、無表情ながら凛々しくとても整った造形をしていた。

 襟足でひっつめられた黒髪は変わらず。……でも、頭の上に丸みを帯びた、黒と灰色の縞模様のある虎耳があり……その瞳は、私の見慣れたお月様の色。




「まさか、ディラン・ホイール……≪ユートピア≫の英雄か!!?」





 そう。

 私達が戦っていたのは……ディラン・ホイール。



 ≪ユートピア≫で英雄と呼ばれた……ディルを守って命を落とした、実の父親やった。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ