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話の都合上、マイ達以外の冒険者達がちょいちょい出て来る様になります。

混ざらない様に頑張ってるつもりですが、見辛かったら申し訳ありません(T_T)





 


 私達の装備が整った、次の日の朝。




『腕に自信のある冒険者は今すぐギルドに集まれ! 緊急依頼だ!!!』



 何らかの魔道具で拡張され町中に響き渡るリカルドさんの言葉に、私達はその日がやって来た事を知った。




 慌ただしく朝食を口に詰め込んだ私達は、ディルを先頭に人でごった返すギルドに向かった。

 迷子防止の為、サーリーとルシファーはノーランに抱えられ、私はディルに手を引かれながら歩く。



 やっと辿り着いたギルドの正面入り口では、いつも素敵な笑顔で対応してくれていた受付嬢達が、その顔を緊張と恐怖に強張らせながらも声を揃え、繰り返し繰り返し説明していた。



「本日早朝。我がギルドとミラ教会に、鏡通信にて≪ユートピア≫の王都エイデンに住まう大神官、ヨルルガ様の≪天啓≫スキル発動の報せがありました!」


「内容は≪名無しの軍団(ノーネーム)≫……ナナシの再来! 出現場所はこの町、サルーを中心とした数キロ範囲です!」


「出現日時は明日の正午! しかしっ17年前の2箇所同時出現というイレギュラーがある以上、油断は一切許されません!」


「実力に少しでも不安のある方は、数組のパーティーで行動して下さい! Bランク以上の単独冒険者の方も、必ず集団行動を心掛けて下さい!」


「戦闘不可な市民はギルド地下のシェルター、もしくは隣国≪ユートピア≫と人魚の村ローレライへの避難を始めて下さい! 乗合馬車、およびパーティー≪風の民≫のグリフォン便もまだ居ります! 申し訳ありませんが冒険者の方、どうか戦闘不可の市民を優先する事をご了承下さいませ!」



 がやがやと人で溢れる中、懸命に説明する受付嬢。話を聞いた冒険者達はそれぞれの行動を起こしギルドの中に入ったり慌てて引き返したりと大忙しや。

 避難用シェルターあるのは知らんかったけど……うん、アニスさん達にはシェルターに居てもらおう。

 ローレライが避難場所なのは、……リヴァイが居るからかな?



 私達はそんな人達を掻き分けながら前に進み、数日前にも対応してくれた馴染みの受付嬢の人の前で足を止めた。



「……リカルド、中に居る?」


「……っ、……はいっ、地下1階、水鏡の間に居ります!」


「ありがとう」



 ディルは小さく頷き、臆する事なく前を進む。私達も、そんなディルの後ろをついて行く。

 不安はまだちょっぴりある。でも、思ったより恐怖感は薄い。

 そんな私達に瞳を潤ませた受付嬢達は「ご武運を!!!」と揃ってお辞儀をしてくれた。



 地下へと続く階段の先は、薄暗く神秘的な雰囲気の部屋。ゲームとかで召喚儀式しちゃうような部屋。ここに来るのは初めてや。


 さらさら、と水の流れる音がする。

 部屋を10歩程進めば視界が明るくなり、目の前にはリカルドさんと≪タイガー・ロンド≫のリーダー、ゴリマッチョな虎獣人であるフィンさんが現れた。私の≪結界≫と同じ様な魔法の壁で目隠ししてたみたい。


 あと2人、種類は分からんけど鳥の獣人と、エルフの男性冒険者が居る。何処かのパーティーのリーダーかな?



 彼等の向こうの壁は天井から落ちる水できらりと光り、その光の中には何処かの室内と人影が浮かんでる。これが魔法の水鏡かぁ。日本で流行った、プロジェクションマッピングみたいや。



「おおディルムッド、来たか!」


「……」



 勢揃いだな、とリカルドさんは笑顔で私達を迎え、フィンさんは目礼のみで今も人影映る水鏡へ視線を戻した。



『では、今日の昼に』


「おおっ待っているぞ!」



 大きく頷いたリカルドさんの言葉を最後に、水鏡の輝きは失われた。

 そうして、鳥の獣人がリカルドさんに頭を下げた。



「リカルド殿、感謝致す」


「構わん! お前の産まれた鷹の集落は、俺達とご近所さんだ! 頭を上げろっルアン!」



 ルアンと呼ばれた彼は鷹の獣人らしく、腰まである焦げ茶の長い髪を襟足で1つに結び、同じ焦げ茶の鋭い瞳を潤ませながら頭を上げた。背中の大きな翼で飛ぶ為なのか、装備は片手でも扱えるボウガンタイプの弓と布製の軽装。年齢は、私やノーランに近いかな?



「……お主らも、今回の緊急依頼に参加するのか?」



 ルアンとリカルドさんが話す中、エルフの男性冒険者がこちらに寄って来た。

 緑の色味が混ざった金髪に青い瞳の白い肌、ローブを纏ってるから魔法使いやな。言葉遣いも古めかしいから、適度にお年も召されてると思う。

 しかし、微笑みが素敵なフェールさんを見慣れてるせいか、氷の様な無表情がちょっと気になる。



「そう」


「……子供を、連れて?」



 ……サーリーを心配しての言葉なのか、依頼舐めてんのかごらぁ、とのお叱りの言葉なのか。無表情過ぎて分からん。


 ディルも何を言われてるのか分からないらしく、首を傾げて目の前のエルフを見つめる。


 そして。



「リカルド。こんな脳みそ沸いたロリコン共は戦力にならんから外に捨ててこい」


「ヒューリッヒ何言ってんの!!?」



 溜息混じりの罵りとリカルドさんの慌てた声に、ああ良かった口は悪いけど女子供に優しい人なんや、と私は少し安心した。



「……俺、ロリコン?」


「もしかせんでも俺も入れられてるな、ロリコンに」



 ノーランの苦虫噛み潰した顔を見たリカルドさんと私の説明(私が成人でディルの嫁、サーリーは私達の娘)で少し理解してくれたらしいヒューリッヒさんは、冒険者生活していた時のリカルドさんの相棒だった人。ちなみに今年で250歳。なんと、フェールさんより年上……でも見た目20歳くらい。どんなアンチエイジングしたんや?


 リカルドさんに珍しい酒があるから久し振りに遊びに来い、と呼ばれて来たらこんな状況だったらしいので緊急依頼に参加してくれるらしい。



 私は無言でリカルドさんを見上げ。

 その返事の様に、リカルドさんは無駄に良い笑顔でサムズアップした。



 ああ。ヒューリッヒさん……リカルドさんに何も説明されないで戦力にされてる。



 そして簡単な自己紹介をその場で終えた私達は、明日の段取りを話し合う為、リカルドさんに促され3階の応接室に向かった。


 地下から1階に戻って来た時、まだギルドの前でウロウロしていた冒険者達にリカルドさんは向き直った。



「緊急依頼の登録は本日19時まで! 覚悟あるものは、緊急依頼専用の魔法契約書に名を記し、明日の朝6時にギルド前に集合! それ以外の者は、己自身と、大切な人を守る事に集中せよ!!!」



 時間は有限だぞ、との一喝にギルド前に集まっていた人集りは蜘蛛の子の様に散って行った。



 応接室の扉を開くと、顔馴染みはフィンさん家族とカールにキールのみで、あとはギルドで会ったりすれ違ったりした事ある人ばっかり。

 うん。部屋が狭苦しい。

 ……目があった途端にぷるぷる震え出した虎耳兄妹は、あえて無視しよう。マーニャさんはにっこり笑顔でサーリーに手を振ってくれてたよ。



 フィンさん家族とカール達を除くなら、どうやら3つのパーティーが居るみたいやな。




「待たせて悪かったなっ! ……それじゃあ、作戦会議といこうか!」




 リカルドさんは今ここに集められたAランクの冒険者パーティーを、町を守る要……冒険者達を纏めるリーダー格として考えてるらしい。




「≪ツインズ≫はBランク(レベル40相当)だが……実はヒューリッヒとの相性が良くてな。ヒューリッヒの希望で呼んだんだ。2人には俺達と組んで、ギルド周辺の掃除を頼みたい」


「「了解! ヒューリッヒの旦那、宜しく!」」


「ああ。馬車馬の様に扱き使うから、私に代わってキリキリ働くがいい」


「「言い方!!?」」



 おお、まさかの知り合い。そして双子の扱いが雑。

 ……アニスさん達には無理矢理でもシェルターに入ってもらう予定やし。町に残る住民の安全は、リカルドさんと双子にお任せやな!



「次に北門周辺を……ルアン。お前達≪漆黒の翼≫を主軸にして、掃除を頼みたい」


「……その依頼、承った」



 仲間達と視線を合わせたルアンは了承し、リカルドさんに差し出された魔法契約書にサインを入れ、自身の仲間達にも書かせていった。

 ルアン率いる≪漆黒の翼≫は最近Aランクと認められたらしく、彼を入れて4人。全員鳥系の獣人で、空を飛ぶ為に皆が軽装で武器も短剣に細身の剣、弓なんかを装備してるみたい。


 ルアンと同年代な鷹の男はラムス、白鳥を思わせる白髪と白い翼を持つ男女はレーヨンとマルル。仲良しやなぁって思ってたら2人はツガイだとディルにこっそり教えられた。

 なんで、知り合いでもないのに分かったかって? ……はっはっはっ。ホンマに、匂いで分かるんやーはっはっはっ。ディルとのイチャコラするタイミング考えな、私、痴女になってまうな!



「そして東門周辺を≪タイガー・ロンド≫、西門周辺を≪赤薔薇≫に頼みたい」


「……引き受けよう」


「ふふ。あたしが、愛しい旦那の頼み断った事あるかい?」



 フィンさんの頷く後ろで、パーティー名に相応しい、真っ赤な薔薇を思わせる緩いウェーブのあるたっぷりとした真紅の髪を色っぽく搔き上げた彼女はローテローゼさん。≪夜の赤薔薇(ブラッディ・ローズ)≫の異名を持つエルフの美魔女で……。



「あっはっはっ! ローゼ、こんなおっさんに世辞は要らんよ!」


「っぉ、お世辞じゃっ、…………、ぅう……うう〜」


「「姉さん、ファイト!」」



 リカルドさんの笑顔を真正面から見て真っ赤な顔でモジモジし始めたローテローゼさんに、実の妹と弟同然の少年は心の底からのエールを送った。



 リカルドさんに惚れ込んでるのに気付いてもらえない、妖艶な美魔女姿とは程遠い一途で可愛い片思い魔女として有名なローテローゼさんにはファンクラブ、もとい恋の応援団もこっそりがっつり居る。団員は、主に主婦層。

 仲間には魔法剣士を思わせる装備の灰色の狼獣人ジョイス君と、その幼馴染でローテローゼさんの年の離れた妹、プラチナブロンドが美しい魔女ファピュラスちゃん。一応既婚者になってる私も、ギルドで何回か相談された事あるけど……ノーラン並みに、にぶにぶなリカルドさん相手にすると伝わらない。直接言おうとしても、笑顔を向けられると何も言えなくなるらしいローテローゼさんに……私も胸キュンが止まらない。



「南門周辺は……≪ドラグ・スレイブ≫に頼みたい」


「……そいつは、困ったな」



 そして、その身を竜種の装備で固め、ソファに踏ん反り返って座っている50歳台の男……リカルドさんと同年代か少し上っぽいその男は、ディルに視線を向けた後……私とサーリーに、自身の視線を固定した。


 そこには、明らかな侮蔑が込められてる。



「役立たずを連れてるパーティーに、俺は命を預けられんなぁ」



 彼の名は、ヤツカ。

 竜種討伐専門パーティー≪ドラグ・スレイブ≫のリーダーで、ドラゴニュート……竜人である。


 人魚の村で知り合った精霊リヴァイに負けないくらい真っ青な色をした短髪頭で、側頭部からは乳白色に水色を落とした竜の角を生やしてる。自身の頭をガリガリ掻きむしりながら、ヤツカは髪と同じその海色の瞳で、苛立たしげに私達を射抜いていた。



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