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 調理場で下準備を終えた私達は、ギョロルお爺ちゃんの案内で屋上にやって来た。


 鉄板設置する為の広さがある海竜亭入口前の広場でも良かってんけど……。






 ざばざば、ざばざばばば……。






「……ふわ〜!」


「ふっふっふ〜マイ驚いた!」


「りゅるっ、るるる〜!」


「……ルシファーも、驚いてるね」



 人魚の村が、どうして4階以上の背の高い建物ばかりなのか。



 それはこの海底洞窟、リヴァイの魔力で天井にはめ込まれたいくつもの永久氷河と呼ばれる氷の塊……今、その部分から放物線を描きながら海水が降り注ぐから!



 洞窟の天井から、いくつもの美しい滝が流れ落ちる光景は圧巻の一言。


 ギョロルお爺ちゃんとサーリーが言うには、実は魔力コントロールがまだ未熟な幼い人魚は長時間、水から離れると体調を崩してしまうらしい。


 だからリヴァイは夜、自身が食事に外に出る時に魔力を弱めて洞窟内に海水を一定量、建物で例えると2階部分にまで溜め込む。


 リヴァイ本人が村の外、洞窟の向こうに広がる海原で確認してるから、リヴァイの縄張りだと知ってる魚型のモンスターも入り込む事もほぼ無い。

 もしもの場合に備えて、ちゃんと村の若者達が自警団作って夜パトロールするらしいよ!



 えら呼吸出来ない私達ヒトは3階より上の部屋で眠り、ローレライの住人達は1階、2階で眠る。


 そして朝になったら、またリヴァイが魔力で海水を操って洞窟の外に出してしまう。

 この時起こる、地面から天井に続く水柱も幻想的でとっても綺麗やねんて。


 ……明日早起きして、見ないと!



「いや〜。リヴァイ様には色々してもらっててのぅ」



 有り難いことじゃ、とギョロルお爺ちゃんはナマズ特有の長い髭を揺らしながら笑っていた。



 こうして私達の見ている前で、ローレライは十数分程できっちり2階部分まで海水で満たされた。


 階下の海面、ざばざばと波打つ所を見ると人魚さん達が泳いで移動してるっぽい。自警団の人達かな?



 うん!

 これぞ、ファンタジーの世界や!!!



 私が感動しながら柵の向こうへ視線を上へ下へと動かしている間に、ディルの手によって火石(ひいし)埋め込むタイプの簡易設置コンロと大きな鉄板の設置が完了してた。なんと!


 私は、慌ててディルの側に走り寄った。



「ご、ごめんごめん全部やらしてもうた!」



 近寄った私に向けて、ディルは小さく首を横に振ってから笑ってくれた。



「良いの。……俺、マイが楽しそうに笑ってるの、可愛くて好きだから……」



 えへへ、と可愛い八重歯を見せて破顔したディルの輝き。

 100万ボルトである。



「ふぎゅっ」


「……にゃぅ?」



 心臓停止されそうになった私は、けったいな呻き声を上げてしゃがみ込み。



「「あら〜」」


「りゅるる」



 傍観者となった娘と魚人さん、ペットが空気を読んで調理台とかの細々した準備を続けてくれた。なんか、色々すんません。


 ……旦那様が可愛すぎて、私、そろそろ死にそうです。


 しゃがみ込む私を心配して頬をぺろりんしてくる旦那様、……舐められるのは恥ずいけどっ、大好きです!!!




 数分でなんとか落ち着きを取り戻した私は、準備していた持つとこ付いたボウルにキャベツ、卵、天かす、ねぎ、イカ、水と小麦粉等で作ったタネをおたま1杯と少し入れて、菜箸でざかざか素早く混ぜ合わせる。

 ちなみに、先に全部の材料とタネを混ぜちゃうとキャベツから水分出てきて、鉄板に小麦粉のびらびらが無駄に広がる残念なお好み焼きになる。

 ちょっと面倒でも1、2枚づつ生地を作った方が確実!



 そして油を引き温めていた鉄板に、丸型になる様に生地を焼いていく!



「サーリーっ、お肉!」


「はい!」



 私がどんどん生地を鉄板に乗せていく横で、火傷に気を付けながらサーリーがお好み焼きサイズにカットされた豚バラ肉を生地の上に並べていく。

 ちなみにサーリーの背丈は鉄板に足りなかったので、食卓用に持ってきた3人掛けの長椅子の上を移動しての作業。

 サーリーの背後で心配げなディルがハラハラしてた。可愛い。



 サーリーが豚バラ肉乗せ終わったら鉄板とセットになってる大きめの蓋して、火加減も弱めに!

 生地乗せたらその時点で鉄板の温度下がるし、これで良いやろ。蒸し焼き大事!


 丁度、お好み焼き4枚分の鉄板サイズ。素敵や!


 そして蓋にイタズラしそうなルシファーは、ディルが捕獲済みなので安心。

 るぅるぅ憐れっぽく鳴いてうごうご暴れても、晩御飯が大事なディルとサーリーは無視である。


 ……うん、想定してた。

 だから予定通り、私はじっとりした視線をルシファーに向けた。



「そぉんなにご飯で遊びたいんなら別にええけど……そぉんな子に私、ご飯作るの……嫌やなぁ?」


「りゅるるっ!?」



 そんなぁ!? と言いたげな鳴き声と悲しげな表情で私に視線を向けるルシファーを、あえて無視。



「りゅっ……!」


「……」



 無視ったら、無視。



「りゅるっ、るる!」


「……」



 まだや。耐えろ、私!



「……くすん。りゅ、るるるる……」


「うん。許しちゃる」



 半泣きでごめんなさい、と言いたげに弱々しく鳴くルシファーの頭を撫でて、私は本日の躾を終えた。



 教える事は、まだいっぱいある。

 現在、サーリーと2人でルシファーのトイレ・トレーニングも始めてるしな!


 他所の人に不快な思いさしたら、あかん。

 躾、大事!



 数分経ったから蓋取って焼き色、確認。よしよし、香ばしい焼き色や!



「……サーリー、見ててな!」



 私は愛用のフライ返し2本を生地の下に差し込み……手首のスナップ効かせて、くるりと一回転!!!


 幼い頃の苦い思い出、崩れて真っ二つにもならず綺麗な円形を保ったまま鉄板に着地した!

 じゅっ、という肉と鉄板の触れ合った音が素晴らしいと思う!



「「「ぉお〜!」」」



 見ていた御三方(ルシファーはディルの腕の中でいじけてた)から小さな拍手や感嘆の声を聞いた私は満足!

 さっさっ、と素早く2枚の生地をひっくり返した私は、サーリーにフライ返しを2本、渡した。


 残り、1枚。



「……初めは、失敗するかもしれん。でもこれは、勢いが大事っ、恐れずどうぞ! ……女は度胸や、サーリー!」


「……っうん!!!」



 そうして。



「……やぁ!」







 お好み焼きは、割れた。

 この時の、サーリーの淋しげな顔は過去の私と同じでした。




「……ぐすん」


「ま、まだまだ練習出来るから問題無し(モウマンタイ)! 私も初めは潰れたし!?」


「……ゔん」



 半泣きのサーリーはディルに任せて、私は仕上げの準備。



 本当は鉄板の上で焦げるソースの香りを楽しみたいけど、後片付けの事と保存用も作る為、今回はお皿の上で完成させる。


 裏返してから火を強めて数分、お肉をもっとカリカリにしたいから、とこの時生地を鉄板に押し付けるとせっかくのふわふわ食感がなくなる。


 焼き色確認すれば、適度にカリカリになったお肉とキャベツの焼ける香ばしい匂い。


 ディル以外はお箸が不自由な為1枚はそのままお皿に、残りの3枚を鉄板の上でフライ返しを使って大きめの一口大に四角くカットしてからお皿に。


 ……関東の方ではピザみたいな感じに切るらしいけど、フォークで食べてもらうつもりやから今回はこれで良いやろ。


 私は取り出したお皿に生地を移し、そこに甘口のお好みソースをたっぷり。



「マヨネーズ、好きな人ー!」


「「はーい!」」


「わしは無しが良いのぅ」


「らーじゃー! ……ルシファーは?」


「るぅ……りゅる!」


「はいはい、サーリーと一緒な!」



 ソースをかけられた生地に、マヨネーズと青のり、そして鰹節をトッピング!



「はーい、出来たよぅ! 火傷せんように食べてなぁ!」


「「わーい!」」


「るるるるるぅ!」





 結果として。

 お好み焼きは皆に大変好評でした。やったね!


 ギョロルお爺ちゃんは複雑なソースの味に感銘を受けたらしく、自分でも作れないか模索するらしい。

 取り敢えず、野菜や果物、あと動物性の出汁的なモノを使う様アドバイスしといた。


 現代っ子の私に、手の込みまくった手作りソースなんて……無理、やなぁ。


 ……ギョロルお爺ちゃん印のソースが発売されたら、買おう。


 残りのお好みソース残量を視野に、ガチで検討しながら次のお好み焼き作成の為に鉄板に油を塗る私やった。





うっひっひっと笑う神様にタカ…げふん頼んだらソースくらい貰えるよ、とは思わないでもない作者がここに(笑)

そんな考えが真っ先に出ないあたり、マイさんもファミリー達と一緒で良い子なのだと思う作者がここに!( ̄▽ ̄)


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