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皆様お久しぶりです。
不定期更新1発目になります。
前回はっちゃけた王子様は置いといて、元のマイ視点に戻ります。
人魚の村ローレライで、イカをガチで拝んでるマイとそれを見つめる家族の図を思い浮かべてからお読み下さると分かりやすいと思います( ̄▽ ̄)
「……ねぇ、マイ……さっきのにゅめにゅめしたのが、今日のおかず?」
私の拝み倒す姿を見た後だからか、イカが私の好物だと思ったらしいサーリーは少し顔色悪くしながらそう聞いてきた。
……そう言えば私の産まれた日本はともかく、外国だとタコとイカってデビルフィッシュとか呼ばれて怖がられた時期あったような……?
もしかして、ここではイカってその扱い?
「サーリー、食べた事無いの?」
「……ぅ、うん。にゅめにゅめ、食べた事ない」
にゅめにゅめ……まあ、否定出来ないネーミングやけど……幼女から聞いてはいけない単語な気がする。
「にゅめにゅめしたの、じゃなくイカ。イカという名前で呼びましょう」
「は、はい!」
私の真顔に、サーリーは素直に、大きく頷いてくれた。……いや、そんな怯えんでも。
リヴァイが言うにはイカもタコも人魚の村ローレライではポピュラーな食材やけど、その見た目からやっぱり冒険者達には不人気らしい。
「にゃ……俺もイカ……食べた事、無いと思う……」
「え」
なんと。
凄腕冒険者であるディルまで?
岩山出身のルシファーは言わずもがな。
……皆、なんて勿体無い事を!
なら……よし。
「……鯛は明日にして、今日の晩ご飯はお好み焼きにします!!!」
イカ入りの焼きそばも美味しいけどっ、私の今の気分は断然お好み焼き!
イカ玉、ラブ!!!
本当は、ホットプレートがあったら一気に何枚も焼けるけど。
今回は、フライパンでおっきなの焼いて食べようか!
「! ……それなら今から行く『海竜亭』で鉄板と屋上を借りたらいいよ。それで人数分同時に焼けるだろ?」
「え!?」
何と、精霊であるリヴァイはお好み焼きを知ってる!?
いや、鉄板借りれるのは嬉しいけど……昔一緒に居た冒険者って、まさかの異世界から来た勇者なんか!?
……ルシファーのお母さんも言ってたけど、異世界の人ってそんなに独特な雰囲気なん? ……モロバレ?
私のあんぐりと開いた口を見たリヴァイは、私が何に驚いてるのかもしっかり伝わったらしく、お色気たっぷりにニコリと微笑んだ。美人の微笑み、凶器や!!!
「……あの独特なソースの味が忘れられなくてな。教えたんだから、私にも分けてくれ!」
「らーじゃー!」
そうしてそれから10分程歩いて辿り着いた『海竜亭』は……何と海底洞窟の岩壁の中に出来たお宿だった!
屋上と呼ばれる場所も、高さ的に5階部分に相当する岩壁から出っ張った岩部分に、落ちない様に柵を設置しただけの場所。宿の中にある螺旋階段登ったら行けるんやって!
店主で上半身がナマズっぽい半魚人、ギョロルお爺ちゃんはサーリーを覚えていてお願いしたら快く鉄板等必要な道具を借してくれた。
それを見届けてから、リヴァイは村周辺のパトロールに戻って行った。
お好み焼きは、明日の朝に取りに来るらしい。
そして私はギョロルお爺ちゃんに調理場を借りて、ディル達の不思議そうな視線の中で胴体30センチ超えなイカの掃除を始めた。
先ず胴体から内臓引っ付けたゲソを引き抜いて、残っちゃった内臓をまな板と手で挟んで押し出す。半透明の軟骨は胴体に手を突っ込んで引っ張り出したら、水洗いで胴体の中に残った汚れを落とす。
この動作を10杯全部、先にやっちまう。
……ゲソを胴体から引き抜く度に背後でサーリーがひぃひぃ言ってるけど……た、食べれるかなぁ。見てなくても良いんやけどなぁ。
でもここで向こうで遊んできてって言っても「見てるもん!」って反抗しそうやしなぁ……どないしよう?
……ま、まあ無理そうなら在庫にある好きなの食べさせてあげよう!
取り敢えず、私は無心で作業を進めた。
10杯全部引き抜いたら、ゲソにくっついてる内臓部分も切り捨て。ゲソにある硬いクチバシ部分も取っちゃう。
あとスルメイカの吸盤ってそのままやとちょっとガリガリ硬いから、包丁で削る様に軽くこそげ取って、と。
……うん。目玉の周りの身も美味しいの。目玉は取るから、だからお願い静かに泣かないでサーリー!!!
ディルには背中を撫でられ、ギョロルお爺ちゃんにはあの手間暇で美味しくなるんだよ、と説明されて少し落ち着いてくれたサーリーに私は安堵した。
……それにしてもやっぱこのスルメイカ、身も厚いし立派やわぁ…………良し。半分は念の為切らずに置いとこう。
そんでゲソも使わず、こっちは天ぷら用にしよう。
胴体とゲソを分けて私の≪アイテムボックス≫に仕舞い、残りをお好み焼き用に切り込み入れてから短冊切りに。
お造り用とか皮が気になるって人は皮剥ぐけど、私は焼けた時の香ばしい香りが好きだから皮付けたまま切っていく。
「……良し!」
私はギョロルお爺ちゃんにフライパンを借りて、少し大きめにカット&切り込み入れた少量のイカにさっと塩を振って皮目から焼いた。
ああ、じゅうじゅうと響く心地よい音とイカの香ばしい良い香り……。
イカ特有のプリッとした反り返りで火が通ったのが分かった私は、お皿に移して背後の2人と赤ちゃん龍に差し出した。
「……皆、まずはちょっと味見してみ?」
そうして、白い身に皮目に香ばしい焼き色の付いたイカのソテーを前に、初体験の皆は固まった。
……無理、かな?
どうしても無理なら、皆の分は豚玉にしちゃうけど……。
「にゃ……頂きます!」
そんな事を考えていた私の目の前、誰よりも早く覚悟を決めたらしいディルがひょい、ぱくっとイカのソテーを口に放り込んだ。
サーリーとルシファーが、ディルのもぐもぐと動く口元を凝視している。
「っ……食感、面白い。……普通に、美味しい!」
「いやそんなに不安やったんかい」
私の旦那様、心底安心しましたって顔に書いてるやん。
……これって、ジェネレーション・ギャップ? いやカルチャー・ショックになるんかな?
ディルと味の好みが同じだと知ってるサーリーも彼の安心しきった顔を見て、イカのソテーを恐る恐る口に入れてくれた。
ルシファーも欲しがったので、サーリーに餌付けされる形で口に入れた。
……ちゃんと繊維断ち切る感じで切り込み入れたから、そんなに硬くなってないと思うんやけど……。
「むぐむぐむぐぐ……っうん! 私も、これ好き!」
「るるるぅ!」
「ホンマ!? 良かったー!」
それでは私も、ひょいっと一切れ頂きます。
もぐもぐもぐ………………ぐすっ。久しぶりのイカ、おいしいよぅ。
私は半泣きになりながら調理場貸してくれたギョロルお爺ちゃんにも味見用のイカのソテーをお裾分けして、お好み焼きも出来上がり次第お渡しする約束した。
色々あったけど、これでイカの準備はオッケー。なので次はキャベツを切り倒す!
……せっかく鉄板借りれたんやし、オマケに皆イカ食べれるって分かったし保存用も少し作っておこう。
まな板の上に取り敢えず大玉のキャベツ2こ取り出した私の背中に、今度はしっかりがっつり突き刺さる視線。
なんぞやと私がゆっくり振り返ると、有難くもお手伝いしたがりのマイ・ファミリーの視線と合う。ルシファーは床に転がってるけど、2人とはめっちゃ視線が合う。
……特に、半泣きのディルと。
うん。確かにお魚捌くの明日に回ったから、お手伝いの約束も明日にずれ込んだけど。
……そんな「仕事くれ」って職業病みたいな視線、やめて。
「……う〜ん。私、イカの掃除で疲れちゃったなぁ〜キャベツ切るのしんどいな〜」
「「やる!」」
うん。お2人さんお早いお返事。
「……今回はがっつり刃物を使うので、ディルにお願いしようと思う」
「にゃう!」
「えー」
うん。可愛いにゃんこのサムズアップとは反対に、サーリーのテンションはだだ下がりや。
「しかし! ……お好み焼きを作るにあたって、大事な、ある作業をしないといけません。……教えるから、サーリーはそっちを一緒にやろ!」
「うんっ、分かった!」
うんうん。素直で単純なのは良い事や!
そんな訳でディルにキャベツを任せた。
色々方法あるみたいやけど、我が家ではキャベツを横に切って葉っぱ多い方と芯のある方と切り分けてからの千切り。千切りした後キャベツの向き変えて小口切りに。
芯のある方は硬いから、芯を切り取ってから出来るだけ細かめにザクザク切ってもらった。
ちなみに私はディルの隣で小麦粉と山芋の粉末、あとだしの素と水を合わせた生地を作ったり。
天かすとネギ、あとせっかくやしイカと豚ダブルで乗っけちゃう贅沢お好み焼きにしようと豚肉準備したりしてた。
そんでディルはやっぱり器用らしく、私の適当な説明でもきっちりキャベツ切りをやり遂げてくれた。
……そして、多分私がやるより切り終わるの早かった。オマケに綺麗なお仕事でした。
……ちょっと、ほんのちみっとジェラシー感じたのでディルの尻尾を握り締めてからの逆撫でしてやったら、ふみゃぁあんっ、て鳴いてびっくりしてた。
……ディルの顔と鳴き声、めっちゃエロ可愛かったから仕返し関係なくまた今度してやろうと思いました。まる。
マイちゃん。
セクハラ、ダメ、ゼッタイ。




