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 村に一歩入ってまず最初に目に飛び込むのは、乳白色だけじゃなく、白にピンクや赤が混ぜられた色彩鮮やかな……窓の位置で考えると、大体が4階建ての建物が綺麗に大通りと呼べる幅広の道の両サイドに並んでる事。


 生きてるのか化石化してるのかは分からんけど……多分、目の前の建物含む建造物の殆ど、巨大なサンゴで出来てるんとちゃう?

 サンゴそのものって形と、人の手で削って角ばった形に整えられたのと半々で建てられてる。


 そんで一軒一軒、おっきな色鮮やかな貝殻やヒトデ、フジツボっぽい貝が張り付いたりしてて海の世界っぽくて素敵。


 そんで街路樹みたいに生えてる、ディルの背丈超えてる代物は……もしかして海藻?



 ……え。まさかのワカメや昆布?



 ワカメの比較的固い茎の部分が、木の幹みたいになっててしっかり岩の地面から生えてる!


 ……これ、食べれる?

(ちなみにガン見し始めた姿を見て泣きそうな顔になった旦那様と娘が居たので、マイは街路樹っぽい昆布の収穫を断念しました)



 ……あかん。ワクワクが止まらん!




「ふぁ〜っ、すごいなぁ!」



 テンション上がって来た私は外歩いてる時のルシファーみたいに周囲をきょろきょろと見渡しながら村の中を進んでいった。


 ……あ。サーリーも前言ってたけど、天井もずいぶん高い。光る苔のお陰でめちゃくちゃ明るい星空みたい!

 洞窟内っていう閉鎖的空間に背の高い建物が並んでるのに、全然狭っ苦しく感じない。


 オマケに頭上でキラキラ光ってるのも……よう見たら苔だけじゃなくて、陽の光っぽいのも感じる。

 確か魔法で解けない氷を洞窟の穴に埋め込んでるって言ってたから、もしかせんでも光ってる所が氷部分?

 光が届くなら……結構、海面近くまで繋がってる穴なんかな?



 ……しかし残念ながら、村と呼ぶ位やから住人も少ないらしく人影は、まばら。


 さっきからすれ違うヒト、服装から冒険者っぽい。

 夕飯にはまだ早い時間帯やねんけど……人魚さん達はもう家に居るんかな?


 ちょっぴり残念に思いながら、どっかに飛び出してしまわないようにルシファーを抱っこした状態のディルを真ん中に挟む形で私とサーリーは先に進んだ。


 私達はリヴァイとサーリーの近況や海底洞窟でも育つ作物の話をしながら、彼女の案内で村の中を進めば……曲がり角から、今度こそ本物の人魚の母娘が現れた!


 そんでそんでっ、母娘はリヴァイの姿を見つけると微笑みながら近寄って来たよ!


 サーリー位の女の子がぴょこぴょこ跳ね歩きしてんのっ、かあいい!!!



「あら、リヴァイ様。もうお戻りに?」


「もう食べて来たのー?」


「ああ、ご飯は後にするんだ。この時間帯のお客さんだからね」



 その言葉で私達の存在に気付いたらしく、人魚の母娘は私達にも笑顔を向けてくれた。



「外の人ー?」


「あら、うふふ。ようこそローレライへ! ……観光ならもう明日にして、日が落ち切る前に早めに宿を決めてね?」


「は、はいっ。ありがとうございます!」



 き、綺麗! そんで可愛い!


 母娘両方、明るいピンクの髪で、上半身はピンクのビキニ。

 そんで女の子の方がピンクの巻きスカートで、下半身は赤みがかったオレンジの鱗で覆われてる!


 お母さんもお揃いの巻きスカートで……え。



「……足?」



 なんと。お母さんの方は私と同じヒトの足。

 ……異類婚姻?


 私の不躾な視線にも嫌な顔せず、お母さんの方はくすくす笑ってくれた。



「うふふ。貴女は人魚、初めてなのね?」


「大人の人魚は、魚足(ぎょそく)人足(じんそく)どっちでも歩けるのー」


「へぇー!」



 し、知らんかった。

 ならさっきすれ違った人達も、人魚やったんかも知れんな。


 色々楽しみにしてたから、ネタバレならんように脳内知恵袋気にしてなかったし。



「ほらほら、日が落ちる前に宿屋に入らないと」


「は、はーい!」



 こうして、私達はリヴァイに促され人魚の母娘と別れた。





「……むうぅぅぅ!」


「にゃう……マイ……俺とサーリーの、方が……かあいい、よね?」





 なんと私が初人魚の母娘にめろりんした為、サーリーがむっつり顔、ディルが甘えん顔で迫って来たりしてんけど。



 いやもう、何を仰いますか。

 私の家族、かあいい部門不動のNo. 1やから!

 問題無し(モウマンタイ)やで!!!



「……るるるるるぅ」



 ルシファーの「しゃーないやっちゃ」みたいな呆れを多大に含んだ鳴き声に反応する様に、リヴァイだけが超振動で震えてた。……せめて声出して笑って!?



 そうしてワイワイしながら幻想的な建物に囲まれた道を進むと、日没までに片付けようとしている出店が並んでいる通りに出た。



「……ぁあっ!」


「にゃっマイ!?」



 私はディルの叫びを無視し、小走りで出店を片付けてる全体的に緑っぽいナイスミドルな人魚さんに突撃した。



「あ、あ……こ、こっちの出てる10杯全部と、あっそこの尾頭(おかしら)付き1匹買いますぅ!」



 私の剣幕に一瞬ビビったっぽいけど、売れ残りを買うと理解した瞬間に商売人の顔に戻ったのは流石やと思う。



「そんなら、ちょっとまけてやるよ!」


「ぃよっしゃあっ!」


「「「?」」」



 私のテンション急上昇に伴う雄叫びに、揃って首を傾げたマイ・ファミリーが出店に近寄って来た。



 でも許して。

 こればっかりは、しょうがないの。


 だってこの出店……お魚屋さんやってんもん!!!




「い、イカや〜!」



 近年、日本でも漁獲量が減って値段がお手頃ではなくなってしまったイカ。

 そして今、私の目の前に並んでいたのは生のスルメイカ!


 胴体部分の長さが30センチ以上、身も痩せてないふっくら大きなスルメイカが、1杯100ギル! つまり、100円!!!


 皮の色が綺麗に黒から茶色にかけてのグラデーション……このサイズでこんだけ新鮮やったら、私の地元のスーパーとかだと498円、下手したら598円とかいっちまうよ?



 昔っから、関西ではイカ焼き筆頭にスルメイカをよく食べる。

 新鮮なら家で皮剥いてお造りにしたり、肝とあえて塩辛みたいにして食べたり。



 この世界、生食は駄目だともう分かってる。

 だから、贅沢は言わん。言わんから!



「これでイカ玉作れるぅ〜!」



 お好み焼きっ焼きそばっ!

 ビバ、ソース! ビバ、粉もんっ!

 あ、イカ天も作れる! やったね!!!



 そんでそんで、お腹ぷっくりしてる2キロは超えてる立派な真鯛もゲット! これで1000ギルは安い!

 そんでこの真鯛、魚卵か白子きっと入ってる! アラと一緒に甘辛く炊いたら美味しいの!


 お造りで食べる場合、栄養が魚卵方面に取られてまうから脂乗りがちょっと悲しいけど、加熱して食べる分には全然いける!


 宿屋で調理場借りて、鱗とエラ、内臓出してディルに切り身にしてもらおう!



 だから宿屋に着いたら、調理場借りようね、ディル!

 私、焼き魚も食べたいな!!!



「……マイは……あのにゅめっとしたの、好きなのね」


「にゃ、にゃう……そう、みたい」


「……ぐりゅるる」


「ぶふっ……き、君の奥さん、面白いね」


「にゃ……マイは、可愛いの!」


「ぐふっふ!」



 真鯛とスルメイカ拝みながら泣く私を見て、私のファミリーとリヴァイがそんな会話をしていたとは。



 気付かない私でした。




ディルは鶏肉。

サーリーは果物と甘味。

ルシファーも果物と甘味。

そしてマイは魚介類。特にお造りとイカが好き。


寄生虫の恐怖によりお造りを諦めたマイ。

イカとの出逢いに、理性が吹っ飛びました(笑)



そして来週の投稿は番外編である勇者サイドになります。

時系列的にはサーリーが加入した後、サルーの町近くの街道でゾンビ兎と戦ってる頃です。


それでも宜しかったら、また見に来てやって下さい。

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