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本日から年号が令和となりますね。
私自身が昭和生まれなので、年号渡り歩くことになっとります。
色々ありましたが、これからも楽しく毎日過ごせるよう頑張ろうと思います。
地道に投稿、していきます!
お話読みに来てくださった方々にも感謝してます!
今年も、令和も宜しくお願いします!
休憩していた場所からも見えていた……岩礁って言うんかな。
海面から1メートルくらい飛び出た、水草と苔塗れのトゲトゲギザギザな岩が両サイドで綺麗に列作って並ぶその間に、海中に続く洞窟があった。
海原の向こうには、大陸が見える。
あっちが≪デスペリア≫なんやなぁ。
……それにしても、気のせいかな。
……この綺麗に並んでる尖った岩……おっきな肉食動物の下顎に生え揃った牙みたいに見えんねんけど?
……まぁ、気のせいにしとこっか!
「……そう言えば、海の精霊さんが言ってたけど……この洞窟の入り口、大昔に死んだサメの下顎で飾り付けしたって言ってた」
「あっやっぱそっち系!?」
このギザギザトゲトゲっ、サメの歯!?
歯の部分で1メートル超え、ヤバくないかなっ!?
……うん。
異世界って、怖い。
「なら……≪デスペリア≫側の入り口……上顎、使ってる?」
こっちが下顎使ってるなら向こうもかな、というディルの素朴な疑問に。
「確か、そう言ってた!」
喜色満面で答えてくれたサーリーが、居た。
……わぁ。
異世界って、怖い!
あんまり知りたくなかった裏話を聞いてから、私達は前衛ディル、中衛私、後衛サーリー&ルシファーで洞窟内に出発した。
ルシファーはモンスターの為、気配に敏感。
なので背後からの不意打ち防止の為に、サーリーと一緒に後衛。
今はふよふよと浮かび、サーリーを守る様に周囲の気配を探ってる。頼りになる。
ちなみにレベルUPの事もあって、≪結界≫は朝に発動したけど≪聖結界≫は今回無しにしてる。
この海底洞窟はダンジョンというより、街道扱い。
ダンジョン程モンスターは多くないから、このまま進む。
磯の香りと湿った空気に満たされた洞窟内は、先に進むと海底に向かう様に緩い下り坂。
なのにどんどん天井高く、道の横幅は広くなっていく。
入り口からの光が少なくなって少し薄暗くなって来たけど、壁や天井にこびり付いた苔が淡く光ってて、真っ暗ではないからランプ片手に進めばいい何とかなった。
ちなみにディルに持たされた火石入りのランタン片手に進んでるのは、私。
私のマジック・ピストル、片手で問題ないからね。
「ぁ……マイとサーリーは、洞窟内での火魔法、駄目。……空気、一気に減るから」
「「はいっ」」
気を付けます!
「りゅるっ、りゅるっ!」
「……ルシファーは、噛み付くか、引っ掻くか、だけ。……ブレスも……空気一気に無くなるから、駄目」
「りゅっ!」
旦那様の言葉に素直に従って、私達は進む。
小さな明かりと苔の光を頼りに、時々やって来るコウモリ退治しながら暫く進めば……。
先頭を歩くディルが、ピタリと足を止めた。
その背中には、警戒の色が強い。
愛用の黒槍と大剣を持って、隙なく前を見据えている。
ルシファーも、ごるごる野太い威嚇の鳴き声に変化した。
私とサーリーもディルの背中から伺い見れば、視線の先に人影があった。
「……おや? もう戻ったのかい?」
「……リヴァイ?」
サーリーに呼ばれた人影が一歩前に出た事によって、私達はその姿を見る事が出来た。
現れたのは海によく似た青い瞳、同じ青の長い髪を白いリボンで1つにゆるく纏め、肩から垂らした美しい女性。……色っぽい系の美人や。
服装も上半身は緑色のビキニのみ、下半身は長い緑の巻きスカートでほぼ隠れてる、けど……スリット部分から見える部分が、青い鱗に覆われてる。
人生初の、人魚さんや!
……それにしてもこの世界の成人女性、皆、ボインさん……やなぁ(涙)
リヴァイと呼ばれたナイスバディな人魚はサーリーに向けていた視線を私とディルに変えてから、美しく微笑んだ。
「うん。元気そうだね。……探し人にも会えた様で、良かった」
「うんっ! ……あ、この子はルシファー! 私のテイム・モンスターなの!」
「ごるるるっ」
「っと……ルシファー?」
サーリーがリヴァイに近付こうとディルの前に出る前に、ルシファーは主の襟首部分を噛んで静止させた。
リヴァイはそんな幼女と幼い飛龍を見て、楽しそうに笑っていた。
「……ふふ、優秀な護衛だね。大丈夫、私はサーリーを食べたりしないよ」
「え、食べ?」
……こ、この世界の人魚って肉食通り越してヒトをもぐもぐすんのっ!?
理想と現実の違いに私の顔色が悪くなった事に背中越しに気付いたディルが、小さな声で言った。
「……マイ、よく見て。……あいつ、人魚じゃない」
え?
人魚じゃ、ない?
「で、でも足の部分、魚の鱗が……」
そう言いながら彼女の下半身をもう一度見ると……?
こっちの様子を見ていた彼女は、私にも分かりやすく、ちゃんと見える様に下半身の先っちょ……尻尾部分? を振ってくれて……あ、あれ?
……お魚特有のピラピラした尾ひれが、無い?
あれやと、ただの……まさか?
「ふふ……ちゃんと名乗ってなかったな。私はこの海に住まう水の精霊、リヴァイアサン。村の者達にはリヴァイと呼ばれている。……以後お見知り置きを、聖女殿」
うわ、異世界人通り越してまた聖女ってバレてるーとか的外れな事考えちまった私に向かって舌を出して笑った彼女は……二股に分かれている蛇舌だった。
あっ、ラミアちっくなお姿の精霊さんでしたか!?
……まさか精霊のお姿見れるなんて思わなかったんでっ、普通に人魚と思ってすんません!!!
「リヴァイは水の精霊だけど、体を手に入れてるからマイにも見えるの!」
「……か、体?」
なんか不穏な単語が混ざったやん。
……手に入れるとは、どうやって?
「私の場合は、昔行動を共にしていた冒険者が討伐したモンスターの体を貰ったんだよ。ドロップアイテムに変化する前に、ね?」
精霊は自分に合ったモンスターの体や動植物を依り代……同化する事によって、一般人にも見える様に進化するらしい。
オマケに体のある分、能力も上がる。
……その体が強ければ強いほど、底上げされるねんて。
「…………リヴァイアサン……確か、何百年か前に討伐された、大型海蛇の呼び名で同じのいた……ような?」
ディルの言葉に精霊リヴァイアサン……リヴァイは大きく頷いた。
「そうそう、私はその体と名をそのまま貰ったんだ。その時の冒険者との約束で……ここ、人魚の村ローレライとその周辺海域の守護を対価に、ね」
何でも重要な素材をドロップするだろう大型海蛇をリヴァイの体として渡すんだから、代わりに言う事聞けって仲良くしてた冒険者に言われたらしい。
……約束というより、それは契約に近いんじゃ?
「人魚は見目麗しい者が多いからね、大昔はクズな貴族共に奴隷やペット扱いで連れて行かれてたって話だ。……まぁ当時も今も、私に行く当てはなかったからね。村に居座るついでに守ってるんだ」
敵対する者は遊んで(痛めつけて)から追い返すが、サーリーとその仲間は大歓迎、とリヴァイは笑顔で私達を手招いた。
「ふふっ。人魚の村ローレライに、ようこそ!」
そうして彼女の声に呼応するように天井や壁の苔が明るく発光し始め。
彼女の背後に、サンゴ礁や貝殻で彩られた美しい町並みが見えた。




