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「にゃっにゃんっ」




 ……ぅゔ……くすぐったい。


 しょぼしょぼしちゃう瞼を持ち上げれば、私の目の前には可愛くてカッコいい寝起きの旦那様。眼福や。


 ぁあ……うん。ディルに頬をぺろぺろ舐められながらの起床にも、慣れてしまった私がいる。ドコドコ暴れる心臓、静まれ。



「くすぐったい〜」



 ……はっはっはー。

 サーリーは、笑顔で受け入れてるの凄いなぁ。






「「「……はぁ」」」






 ……なぁんて。

 私達3人、色々現実逃避しちゃった。



 ディルが私の頬をぺろぺろ通り越してべろんべろん舐めてたんは……私を、必死に起こそうとしてただけ。



 サーリーのかあいい笑顔も……すぐに引き攣った笑顔に変化したからな?










「りゅるるる?」


「「「……」」」









 うん。


 私達が一晩泊まった横穴、≪結界≫と≪聖結界≫の向こう側に存在する……ダックスフンドっぽい胴体長い小型犬サイズで、ワニっぽい形の顔、額から尻尾にかけて黒の(たてがみ)靡かせてて……短足気味な前足と後ろ足のある……紫色の鱗の、変わった、トカゲ……では、ないよなぁ?



 …………うん。


 どうしよう。

 サーリーとは違う明るい紫の瞳との視線と、めっちゃ噛み合うんやけど!!?





[4日目]




 取り敢えず。

 鳴き叫ばれると親を呼ばれる可能性もあるので、と私達と横穴自体に≪結界≫あるのを確認してから。


 闇龍(あんりゅう)の赤ちゃん(仮定)に、賄賂と言う名のバナナとりんごを手足の長いディルが差し出しました。




「りゅるぅ♫」



 ≪結界≫からはみ出したバナナを、後ろ足だけで立って前足で器用に掴んで見せた赤ちゃん龍は機嫌良くかぶりついた。皮ごといってる。



 ……ご機嫌に尻尾振ってるーるー鳴いてる。良し。気に入ったみたい!



 りんごの方は、ぽいっと≪結界≫外に向けて放り投げると……なんとボールに飛びつく子犬みたいに、ジャンプして口でキャッチした!



「ごりゅんごりゅんごりゅん……」



 おっきめのりんごは芯ごと、立派に生え揃ってる牙でごりゅんごりゅん齧ってるっていうか音が凄いぃ!




 ここは臨時の家族会議、始めよう!?


 私達ファミリーは、円陣組んで固まった状態で小声で話し合う事にした。




「……ど、どないする?」


「あの赤ちゃん……お母さん……居るの?」


「……気配がするのに、他のモンスターが全然襲ってこないって事は……親は生きてると、思う」




 親に間違っても攻撃されない様にって事か……成る程。


 そりゃあ、竜種の恨み買いたくないってモンスターばっかやんな。

 死に急ぎたくないよな。本能で無意識に逃げるレベルなんやな。うんうん。



 なにそれこわい。



 特殊な例が無い限り、竜種は全モンスターの頂点といっても過言じゃない程に強く……オマケに情が深い。


 愛する時はトコトン。

 怒る時も、トコトン。


 ……日本風に言うと、7代先まで祟られる感じらしいよ?



 なにそれこわい!



 オマケに、竜種は自身の強さからくる矜持もあり……基本的に、正々堂々真っ向勝負を好む。


 ゾンビ化してたり、多少個別で性格の違いとかはあるっぽいけど。



 成熟した竜種を≪テイム≫したい場合、まず自分の人となり、強さを知ってもらう為に決闘を申し込まないといけない。

 勝つか認められるかしたら、テイムモンスターとして主人が死ぬその時までそばに居てくれる。


 ……この時、背後から仲間がこそこそ援護攻撃仕掛けようモノなら竜種は激怒。


 あたり一面破壊の渦にのまれますので、御用心。



 しかし相手がまだ赤ちゃんの竜種の場合は、完全なるフィーリング。お互いの直感頼り。



 ……この赤ちゃん龍、私達に友好的やから≪テイム≫するには条件悪くないと思う。


 ……でも。




「……お母さんのところに、返してあげよう?」




 ……うん。

 サーリーは、そう言うと思ってた。


 この子のお母さん……家族、待ってるもんな!



 私はサーリーの頭を撫でながら、にっこり笑顔を浮かべた。



「誘拐したやろ〜っていきなり親に攻撃されても、私の≪結界≫あるから大丈夫やしな。連れてったろか!」


「うん!」



 サーリーは私とディルを嬉しそうに見上げてる。

 ……これで良い。

 無理矢理仲間にしたら、サーリーはきっと後悔するもんな!


 サーリーの決断にそれなら、とディルは一言付け加えた。



「……サーリー、マイ。仮でもあだ名でも、名前を付けるのは駄目。……竜種、すっごく怒るから」


「「は、はい!」」



 そうなん!?

 ……あっぶな。チビちゃんとか呼びそうなってた。



 こうして。

 パーティー≪ニクジャガ≫に闇龍(あんりゅう)の赤ちゃん(仮定)が一時加入する事になった。


 と言っても、同じ方向に向かって進むだけやけど。



 ……そういえば、力のある竜種は人の言葉を理解したり操るって言うけど……この赤ちゃん龍も、私達の話していた言葉を理解してんのかな。


 こっちこっち、と私達を何度も振り返ってヨチヨチ歩きしながら上の階層目指して緩やかな坂道進んでくれる姿を見ると……そうかもって思……ぁあかあいい!



 うん。どうしよう。

 めっちゃ可愛い。



 ほら、産まれて数週間とかの子犬とか子猫……歩くの下手やん?

 まっすぐ歩こうとしてるのは分かんねんけど、どうしても途中で斜めになって足滑らせてひっくり返ったり壁に頭ぶつかったりしてるやん?



 ……頭が重いのか少し俯きながら進む赤ちゃん龍は、右手側の岩壁に頭こつこつ当たって前に進めないのに数秒気付いていませんでした。可愛いです。



「りゅる? りゅるる?」



 うん。「あれ? 何で壁なの?」って副音声聞こえる。可愛いです。



 ぁあ……抱っこして、歩きたい!



 実は私、爬虫類苦手かなって思っててんけど杞憂やった。全然イケる! 滑らかそうな鱗にすりすりなでなでしたい!

 サーリーも両腕わきわきしてるやんっ私の気持ち分かるよなぁ!?



 ……でもディルが「人の臭い沢山付いてたら親が怒るかも」って言うから出来ない。残念過ぎる。



 なので私達は、歩きながらでも食べられるおにぎり(鶏そぼろ)とかバナナとかの果物を朝食に、緩やかな坂道をのんびり登る事になった。



 ちなみに赤ちゃん龍を一定距離より近寄らせない為に、私達3人をぐるっと囲むイメージで≪結界≫を張り直してる。



 ……≪聖結界≫せんでもモンスターが遠巻きにするだけで襲ってこないのは、赤ちゃん龍居るからやな。



 周囲の警戒は怠らず、このまま進もう。

 迷子の赤ちゃん龍、親元に帰すよ!




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