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37

 



 賑やかな朝食を終えて、私達は再びダンジョン攻略に踏み出した。



 ちなみに、昨日の蝙蝠と爆弾岩無双したお陰で私とサーリー、レベルが上がった!



 ――――――――



 ●谷山麻依 (マイ)

 ●レベル:23


 ●MaxHP:740

 ●MaxMP:1290


 ●力10

 ●魔29

 ●守35

 ●護35

 ●早15

 ●運43



 ――――――――



 ●サーリー

 ●レベル:16


 ●MaxHP:170

 ●MaxMP:1800


 ●力1

 ●魔63(+10)

 ●守1

 ●護37

 ●早13

 ●運55



 ――――――――



 うん。

 私のステータスは運が高い以外、許容範囲や。

 サーリーの魔法特化は、磨きかかってるなぁ。



 ……悲しい程、HPと物理ステータスが紙や。

 ……ん、でも待てよ?



「前衛でどかどかいける物理特化なディルと、魔法どかどかぶっ放せる魔法特化のサーリーと、遠距離でちくちく攻撃しながら回復&サポートする私……」



 私が≪結界≫切れへんようにし続けたら、防御気にする事なく、体力魔力続く限りモンスタータコ殴り出来る力押しパーティーの出来上がり。





 ……あんまり強いと、めんどくさそうなんに巻き込まれる可能性高くない?




 人はそれを、強制イベント(フラグ)という。




「……うん。強くなった事は素直に喜んで、今日も張り切って≪ルルの壁≫攻略行こか!」


「「おー!」」



 まあ、細かい事気にしたら負けやな!




 取り敢えず。

 全てを明後日の方向に丸投げし、私達は昨日まで進んだ第3階層の終わり目指して小屋を出発した。




[3日目]




 この日も大型モンスター……竜種が暴れた痕跡は無く、地図も描き直す事なくさくさくっと進めた。



 そして水属性寄りだった第2階層終わりに、デビルズ・スパイダーの夫婦(片方赤い斑点有り)が現れた!



 最初に気付いたディルが右手に大きな盾、左手に大剣装備して迎え撃つけど……今度は、私達も戦闘に参加した。



 ここで私が弾丸に火属性を付加した、見た感じ火炎放射な≪ファイア・ショット≫を。

 サーリーは火魔法にスキルポイント10p使用で使える様になる、人の頭くらいの火の玉飛ばす≪フレイム≫で援護攻撃!


 味方判定(マーキング)してるから、ディルにダメージ与える事は無い!



 巨大蜘蛛は突然の弱点属性に驚き、混乱して鎌になってる前脚を意味もなくバタつかせ始めた!


 その隙を見逃さなかったディルは、即座に盾を予備の大剣に変え……両手に大剣を装備した状態で回転する様に身を躍らせ、それぞれの巨大蜘蛛の頭を刈り取りドロップアイテムにしてしまった。



 ……え。マジで?

 ……確かに隙見せてたけど、一瞬?



 やっぱ私の旦那様、めっちゃカッコいい!!!




 危険いっぱいのダンジョン内で、性懲りも無く見惚れちゃう私。


 ……そんな顔赤くしたまま固まっちまった私を、振り返ったディルに見られ。



「……にゃ?」

(どうしたの?)


「ぐっは!」



 ディルの、不思議そうに首をこてっと傾げながら鳴く姿に私は撃沈した。


 首傾げて鳴いちゃうディル、かあいい!

 カッコよくてかあいいディル、好きっ!!!


 ちょっとした興奮状態で脳内パラダイスなりかけてた私ですが。



「……ふーん。あれが()()()()って事? ……ウンディーネは物知りね!」


「ちょっとそこの見えない精霊さんっ!? サーリーに変な事教えないでぇっ!!?」



 サーリーの発言に、私は先程とは違う意味で撃沈した。



「……めろめろ?」


「ディルもその部分だけチョイスしないで嬉しそうに尻尾振らんといて恥ずかしいぃっ!!!」



 そして、私の叫び声に気付いた別の巨大蜘蛛の夫婦がこの場に来ちゃってんけど。



 ……私だけのせいじゃ、ないと思う(涙)



 巨大蜘蛛の夫婦を退治した後、ドロップアイテムをしっかりゲットした私達は火属性になっている第3階層に到着。



 ちょっと早いけど、本日早起きして作ったサンドイッチ(ポテトサラダと卵サラダ)と具沢山のポトフ食べながらの休憩を挟んでから第3階層に向かった。



 私のレベルが少し上がったお陰か、気持ちだけモンスターが近付いて来ない気がする。えらいもんや。


 蝙蝠と爆弾岩のぶっ飛ばしながら素材を拾い、何とか次の階層……第4階層へ続く階段前まで戻って来れた。




 ……そして気合いを入れる為、マフィンとクッキー、紅茶を楽しむおやつタイムを挟んでから。


 ……私達は、長い長い()()を進む事になった。




「……みぃ」


「……マジかぁ」


「……凄いねぇ」




 初めは、確かに階段登ってた。


 でも、次の階層分くらい登った先に……入り口は無かった。



 上の階層からの落石によって、階層1つ……いや2つ3つ分が潰れてるっぽい。


 そして、私達が進める道といえば……1つだけ。


 途中で無くなった階段の先には、道がある。

 ……例えるなら、重量のある、長い体でずりずり岩壁削って出来た様な緩やかな坂道が……上へ上へと続いている。



 ……そして、時折。


 ……何か、大きなものがぶつかり合う様な。

 ……トラックの横転事故が起こってるような、地響きっぽい気配が上の方からする。





「……マイ、≪結界≫大丈夫?」


「……ぅ、うん」



 ディルに言われて念の為確認。

 ……うん、大丈夫。今日はまだ一撃もダメージ与えられてないから、全員、10回丸々無効化してくれる。



 それを伝えると、ディルはパーティーのリーダーらしく、私達に指示を出した。



「……今から、マイは攻撃禁止。……≪結界≫用のMP温存の為に、節約。……≪聖結界≫は、切れたら取り敢えずそのまま。これから出てくるモンスターは……俺が全部、倒す」



 助けて欲しい時は言うから、それまで手出し無用。

 ディルはそう言って、天井……上層階にいるであろう強敵を睨み付けた。



「……私は?」



 岩の天井の先を見通す様に見上げていたサーリーは、ディルに視線を向ける事なく聞いた。



「……サーリーも、MP節約……竜種は強くて、誇り高い。相手が赤ちゃんでも、……実力見せろって言われるかも」



 その時、俺とマイは手伝えないかもしれない。


 最後にそう付け加えたディルは、真っ直ぐサーリーを見つめた。

 その表情は……怖いなら、今ならまだ引き返せると言いたげだった。



「……私、やってみる!」



 でもサーリーは、行くと決めた。




 そうして私達は、ゆっくり、周囲に注意しながら坂道を進んでいった。




 横幅は5メートル程。私達の右手側は分厚い岩壁、左手側は少し脆いのかひび割れからは外の景色が覗いてる。まあ脆いといっても、厚み10センチはある。


 どうやらこの道、岩山の外側を這うように出来てるみたい。……落ちない様に、気を付けないと。



 1時間、2時間と私達は黙々進んだ。


 時々ポイズン・スネークという毒液飛ばす蛇と、お馴染みになった爆弾岩が現れたりしたけど。

 元々がランクC(レベル30相当)ダンジョン。

 モンスター達はディルの敵ではなく、槍で薙ぎ払ったり大剣の一撃であっさり倒された。




 ふと気付けば。

 ひび割れた岩壁の向こうは、空と地平線が確認出来る程の絶景になってた。



「……あっちの森の中に、世界樹があるの?」



 景色を見たいって言うから、私がサーリー抱えて一緒に外を見る。


 確かにサーリーが指差す先には、……うん。ちょっと距離あるけど、濃い緑の集合地帯がある。がっつりした森やな。

 ……位置的にも、≪ヒヒの森≫ではない、よな?



「……うん。あれ、聖域の樹海……マイは、スキルで見えるかな。中心にある、白っぽく光ってる所。……あそこに多分、世界樹ある」


「ほうほう」



 ディルの言葉に視力の良くなる≪鷹の目≫スキルを発動させると、確かに目視出来る程の白い光がある。白い光が目隠しになって、世界樹の姿は見えない。


 白い光は、空気中の魔力(マナ)


 ……サーリーじゃない私達にも見えるのは、それだけあの部分の魔力濃度が濃いらしいよ。


 外の景色を確認し、休憩を挟みながら私達は歩き続けた。


 ……もしかせんでもこの道、山頂まで続いてんのとちゃう?

 急な坂道じゃないから、あんまり山頂に近付いてる感ないけど。

 ……これは長期戦、覚悟やな!


 そして、道を進む間に外は暗くなり。

 サーリーと私の体力考えて、本日はこの通路で野宿する事になった。



 疲れた体にはまずはご飯や、と私が2人にメニューを確認しようとしたら。



「……ちょっとだけ、離れててね?」



 そう言って、ディルは私とサーリーを下がらせた。


 そして、普段使っているのより大きな……は、刃の部分が私の背丈くらいある大剣を取り出した!


 持つ所入れたらディルの背丈超える、刃の部分も分厚い大剣や!


 そしてディルはその大剣で、外が見えるのとは反対側の右手側の岩壁を、攻撃し始めた。



 ……そして、ものの数分で私達が余裕で立っても寝転んでも過ごせる角ばった横穴が出来上がった。切り出された石材は、私の≪アイテムボックス≫に収納されました。



 ……魔力含んだ岩って、あんな簡単に切れるんや。

 ……私、知らんかった。



「……サーリー」


「うんっ。……お願い、ノーム!」



 現実逃避始めた私を置いて、サーリーはディルからダンジョン攻略に必須と言われる魔石の1つ、土石(どいし)を受け取り土の精霊ノームを呼んだ。


 すると、サーリーの手のひらの土石が淡く光り、ディルの作った横穴の中がボコボコと隆起し始めたと思えば……なんとテーブルっぽい出っ張りと椅子っぽい出っ張りが横穴に現れた!


 なんと!?



「ご飯食べ終わったら、テーブルと椅子なくすね!」


「うん。サーリーとノーム……ありがと。……マイ、中に入ったら……≪結界≫して? ……俺、おにぎり食べたい」


「私もお腹減ったぁ!」



 こんな事何でもないの、という態度を変える事なく。

 くるるるるぅ、と可愛らしい音をお腹で響かせる2人が目の前に居た。



「……は、はい。ただいま準備致します」



 うん。

 きっとこれ、異世界の常識なんや。



 ……きっと、そうや(涙)




 本日の夕食は2人が希望した鳥じゃが、あと私が食べたかったきのこたっぷりの味噌汁と塩むすびを献上。喜ばれた。



 食後はサーリーの言った通りテーブルと椅子を無くしてスペースを確保。

 念の為、横穴だけじゃなくて私達にも個別に≪結界≫と≪聖結界≫かけてから寝る準備を始めた。

 寝込み襲われたらシャレにならんし。ディルの許可はもらったよ。



 寝床に大きな毛布を2枚敷いてから私はサーリーを毛布でくるんで抱っこ。

 そんでサーリー抱っこしたままの私を、ディルが抱っこ。今回は、川の字の真ん中は私や。


 サーリーは野宿に慣れてるのか、早々に就寝。

 でも私は異世界初日以来初のダンジョン内野宿のせいか、緊張しっぱなしで眠気がこない。


 ……でもそんな私に気付いたディルに、頬擦りされたり優しく頭を撫でられたりしてる内にうつらうつらしてきた。現金すぎる、私。



「にゃ……2人とも、おやすみ」




 3日目の戦利品。



 巨大蜘蛛の赤玉×3、巨大蜘蛛の脚×4、巨大蜘蛛の大鎌、巨大蜘蛛の岩糸×4、巨大蜘蛛の卵×2。


 火蝙蝠の翼、火蝙蝠の牙多数。


 爆弾岩のカケラ、爆弾岩の核多数。


 毒蛇の牙、毒蛇の毒袋、毒蛇の尻尾多数。





「……明日か、も少し先か。……竜の巣、きっと近い。……いっぱい、寝てね?」




 ディルの囁く声を聞きながら、私は眠った。




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