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しばらく説明話になります。
それでも宜しかったらどうぞ。
真っ白い部屋の中。
数度の瞬きをした私の前のソファに、美しい白髪、輝く銀色の瞳の愛らしい幼女が座っていた。
「……ここは、天国ですか?」
「ふふ。似てる場所ではあるのぅ」
口から出ていた私の心の声に、これまた愛らしい声の幼女は笑顔で答えてくれた。
「な、何なんだよお前!」
「やめなよ翔太!」
殴りかかろうとしたのか立ち上がる男子高校生に、それを押し止める女子高校生。
あれ、よく見たらこの2人組……ふざけてベビーカーを押し出した張本人やん!?
怒りに顔を強張らせた私とは反対に、白い幼女は慈愛溢れる優しい顔で微笑んでいた。
「そう怯えてくれるな。ワシはただ、お主らにある世界を救って欲しいのじゃ。勇者に賢者、それに……聖女の手によってな?」
「「「はぁ!!?」」」
愛らしい幼女とは仮の姿。
何とこの方、神様らしい。
少し話を聞けば、この神様の作った世界は一定周期にモンスターが凶暴化し悪さをするので、勇者一行にその世界の住人達と共に今回の原因を突き止めて正常に戻して欲しいらしい。
……原因は、毎回変わるらしく。
ある時はある国の王がトチ狂ってヘンテコな魔法実験で国周辺のモンスターを凶暴化させていたり。
またある時はとても強い特殊個体のモンスターが産まれて、周囲のモンスターに悪影響を与え凶暴化させていたり。
まあ。神様は何となぁく原因を分かっているけど、神様にもルールがあって干渉しすぎると愛する世界に悪影響を与える事になるから出来ないらしい。
神様に出来る事といえば、愛する世界の住人達を鍛えてあげたり戦力提供したり……って。おい。
戦力提供が異世界人召喚って何処の小説の話!!?
「……それって自分勝手過ぎません?」
そんな理由で思い出の詰まった故郷から誘拐されるって。何それ酷い。人権侵害甚だしい!
高校生組は話を聞いて明らかに喜んでるけど、私は全然喜べない!
私の言葉に、幼女姿の神様は苦笑気味だ。
「お主が怒るのも無理はない。確かに、今回はあの子供2人だけの予定だったのだが……己の命と赤子の命、天秤にもかけず迷わなかったお主だからこそ、ワシは連れて来たのじゃ」
怒らないでおくれ、と瞳をうるうるにしながら見つめてくる白い幼女(神様)
う……どうしよう。可愛い。許したくなる(ちょろい)
「ま、まあ。神様に命を助けられたのは、感謝しています。……私の両親に頂いた、大事な命を拾って頂き、有難うございます」
そう。
私の両親は、交通事故で亡くなった。
もう、10年になるかな。
私の受け取った初任給で両親に焼肉をご馳走した帰り道に、ながら運転(携帯で通話してたらしい)で突っ込んで来た車から……2人は、私を咄嗟に押しのけ庇ってくれた。
車との直撃を免れた私は、それでも1週間程身動き取れず……病院で意識がはっきりした時には、親戚が諸々の手続きを終えてくれた後だった。
「……まあ。世界の異常はヤル気になった子供らに任せ、お主はのんびり過ごしたら良いよ」
「え?」
「なあなあおばさん!俺攻撃のにするからな!勇者なんだからこればっかりは譲れねぇ!決定だから!」
神様の囁きの終わりと男子高校生の失礼極まりない発言はほぼ同時でした。
「…………私には、谷山麻依って名前があるんやこのクソガキがぁ!」
親戚のチビちゃんたち(5歳児)ならいざ知らず!
あんたなんかにおばちゃん呼びされたくないわこんボケが!!!
ちょっと好みに偏った、好き嫌いの激しい主人公設定になっとります。
……可愛い神様は許されますが、可愛げない男子高校生の扱いはこんなもんという事で(笑)