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そんな表現あんまり無いですが念の為、虫の苦手な方は注意です。

私も虫は、苦手です(涙)






[デビルズ・スパイダー]



 知能の高いモンスターで、魔力で編んだ糸で岩壁そっくりの壁を作り隠れながら獲物を捕らえる。


 基本単独行動だが、本来黒い体に赤い斑点模様が現れていたら腹の中に卵を抱えている雌の証。

 近くには必ず雄がいて、雌の腹で卵がかえる……つまり出産時、もしくは危機に駆けつけ雌の()()となって朽ちる。




 脳内知恵袋で答えを見た私の目の前には、巨大な蜘蛛が居た。


 ……赤い、斑点模様のある大型バイク並みの巨大蜘蛛。

 ……脚はそこまで長くない。脚伸ばしきっても小型車くらいの大きさ。……それでも、私の知ってる蜘蛛と比べたらものごっつ大きい。


 そんで、その足元にあるのは……干からびて小さくなった蜘蛛の死骸。体液吸い取られて、まるでミイラや。


 あれが雄なら……子供が、見当たらない……?



「……栄養が足りてない。……あのままだと雌は子供産んだら死んで、餌取ってくる親のいない子供もすぐに死ぬ。……だから自分用の餌、集めてる。……あいつらの餌、高魔力が含まれる生物」



 巨大蜘蛛から視線をそらす事なく口にしたディルの言葉に、私は嫌な予想を立ててしまった。



「……つ、つまり?」


「俺とマイより、サーリーがご馳走」


「「ひぃいいいいい〜!!?」」



 私はサーリーをひっしと抱き締め、ディルの背中に隠れた。


 何という事や。あのグロテスクな巨大蜘蛛は、サーリー目当てに出てきたんや!

 サーリーは、食べ物ではありませんっ!!!


 生理的に蜘蛛が苦手だったらしい私とサーリーを確認して、ディルは安心させるように優しく微笑みながら大きく頷いた。



「……マイとサーリーは、俺の前に出ないでねっ!」



 そう言いながら、ディルは初めて見る……サーリーがすっぽり隠れてしまえる位大きな白銀の盾を右手に持ち、前面に構えた。

 そしてクレイモアらしき大剣を左手に構えて……巨大蜘蛛に突進してしまった!


 巨大蜘蛛の方もディルの動きに反応して、歯のような突起をガチガチ鳴らしながら迎え撃つ体制になった!



 ……私はディルが戦いの中で≪結界≫が切れていないのを確認しながらサーリーを抱き締め、巨大蜘蛛に銃を向けた。

 勿論、周囲を見回す事も忘れずに。


 ディルが負けるなんて思ってないけど、ここはダンジョンの中やもんね。


 ……突然、ドラゴンや飛龍がこんにちわってしてくるかもしれん!



 だから、どんなに気持ち悪くても、強そうでも。

 ……ずっと「怖い」って怯えてるだけじゃ、あかんやんな!


 私は、腕の中に居るサーリーの背を撫でながらディルの背中を見た。



「……サーリー。……目を瞑ったら、駄目」


「ぅう……」


「怖いモンスター、他にもいっぱい居る。……見てなかったら、逃げる事も出来ひんから。……まだ頼りないけど、私も居る。そんでめっちゃ頼りがいあるディルも居るから。……一緒に頑張って、前向こう!」


「ぐす…………ぅ、うんっ」



 まだ怯えは消えないけど、それでも私の腕からサーリーは抜け出た。



 実はサーリーの護衛、私はもっともっと安全な場所で探そうって言っててんけど。


 ディルが、それは駄目って言ったんや。



『サーリー……ダークエルフ(種族)抜きにしても……能力、高過ぎるから……≪テイム≫するなら、絶対、初めから強い方が良い』



 それに竜種は、他のモンスターより抜きん出て情が深い。


 一度気に入られ愛されたなら、全力で守ってくれるはずやねんて。

 だから、今の時期。竜種を確実に見つけられるここに来たんや。



「うん、良い子!」



 私の言葉に、サーリーは杖を両手で握りしめて……私達を庇う様に戦うディルの背中を見た。



 サーリーよりも大きな盾は防ぐだけでなく、攻撃の手段にもなってる。

 ディルはあえて懐……巨大蜘蛛の顔、真ん前に潜り込んで盾で殴りつけ。

 そして一瞬怯んだその隙に、ディルは大剣で脚を斬り飛ばした!



 よく見れば、ディルは巨大蜘蛛の脚を合計3本、切り落とし戦力を削いでた。



 ……何度見ても、ディルの戦う姿は美しい。



 あれ……でもあの巨大蜘蛛、糸だけやなくて消化液も吐き出す筈や。


 ……ディルの周り、溶けてる岩とか壁あるのに……私の≪結界≫を破壊された感覚、まだ無い。もしかせんでもあの盾で防いでる?



 ばつん、とまた1本。

 ディルが巨大蜘蛛の脚を刈り取った。



 巨大蜘蛛も負けを悟ったのか、おそらく逃げようとしたのだろうけど。


 サーリーを餌と認識したモンスターを……ディルが、逃がす理由は無い。





「…………背中、向けたな」





 逃げようと後退した巨大蜘蛛を見たディルは、即座に≪アイテムボックス≫へ大剣と盾を収納。

 今度は薄緑色の木製の弓を取り出し、矢を3本つがえると……矢は、吸い込まれるように巨大蜘蛛の頭と胴体の間を射抜いた。



 声無き断末魔を岩壁に響かせながら、巨大蜘蛛はひっくり返って動かなくなり……ドロップアイテム3つに変化した。


 所要時間、10分程のスピード退治でした。




「「………………」」



 私とサーリーに、言葉はなかった。



「……マイ? ……サーリー? ……はっ、ど、どっか怪我したっ!?」



 ドロップアイテムそのままにして駆け寄ってくる、おろおろあわあわしてる私の旦那様。

 うん、いつも通り可愛い。



 ……うん。大丈夫。

 戦ってる姿が凄くカッコよくて……所作っていうか、立ち振る舞いが美し過ぎて素敵過ぎて心臓ばっくんばっくんしてるだけやから。


 毎日毎日、今この瞬間も惚れ直してるだけやから!



 小さな胸を高鳴らせながら、私はディルを安心させる為に笑った。



「け、怪我とかないしっ、そんな心配せんでも」


「うんっ、マイがディルに見惚れてただけ!」


「にゃ?」


「サーリー!!?」



 サーリーも尊敬の眼差しでディル見てたのに、何で私だけ恥ずかしい事告げ口されてんの!!?


 私の顔、真っ赤になってるの鏡見んでも分かるわ!!!



「マイ……」


「あ、いやそのちゃんと周りの警戒もしてっけ、けして怠けてなんてっ」



 戦闘中にぼやっとして、ごめんなさい!!!



「……俺、カッコいいの?」


「ディルはカッコよくて優しくて素敵で可愛い旦那様です!!!」



 そして突然来る、ディルの甘えんボイスとうるんだ瞳! 可愛いのと色っぽいの同時に来た!

 お願いやめてそれ凶器!



「カッコいい……可愛いだけじゃ、にゃい……俺、嬉しい!」



 そしてサーリーごと私を抱き締めて、ごろごろ喉を鳴らす旦那様。

 ……うん。抱き締められるのは私も嬉しいねんけど、ここはダンジョン内ですよ〜。それ、分かってます〜?



「男に可愛いは駄目って、精霊達(みんな)が言ってた!」



 サーリーのドヤ顔での発言により、私は告げ口の真相を理解した。


 確かに可愛い可愛い言ってたけど……そ、そうですか。はい今後気を付けます。だからダンジョン内でちゅっちゅしてくるの、ヤメテ!




 そんな感じで、この場はグダグタの内に終わり。


 ディルの斬り飛ばした巨大蜘蛛の脚も立派な素材なので、しっかり回収。

 ……ドロップアイテムは巨大蜘蛛の目玉と糸、それから……薬の素材になるらしい、卵。

 もうアイテム化されたので、この卵から蜘蛛は生まれない。



「……頂いていきます」



 モンスターとはいえ、生まれる筈だった命。

 卵は、慎重に回収した。



 そして私達は先に進み。



 上への階段を見つけた時には、戦っていないのに私とサーリーはくたくた。

 初日なので今日はこのくらいにして、洞窟前の小屋まで戻ろうという事になった。




 1日目の戦利品。


 鉄鉱石、銀鉱石、ルルの蒼鉱石多数。


 闇龍の鱗。


 巨大蜘蛛の脚4本、巨大蜘蛛の赤玉(目玉)、巨大蜘蛛の岩糸、巨大蜘蛛の卵。




 そして外に出るまでの道中。

 私はサーリーと2人、誓いました。


 あの強くてカッコいいディルと、肩を並べて……背中任せられるくらいになろう、って。




 だからモンスター探す傍ら、レベル上げもしようね、って。




 明日、頑張ろう!






この日の晩御飯は、頑張った虎にゃんこが希望した鳥と野菜の天ぷらシリーズでしたよ(笑)



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